[S09P-13] DONETデータを用いた南海トラフ浅部微動の検知能力
南海トラフ沈み込み帯のプレート境界では,巨大地震発生領域をはさんで深部側および浅部側の双方でスロー地震が発生している.浅部においては,室戸岬沖から三重県南東沖の広い領域にかけてスロースリップおよび超低周波地震を伴う微動が発生している.浅部の微動の性質は海底地震観測網の発展によって飛躍的に解明が進んだが,一方で空間に不均質な震源およびエネルギーの分布は陸域ほどのカバレッジを持たない海域の観測網の影響を受けていると考えられる.そこで本研究では,DONETデータを用いて南海トラフ浅部域の微動を検出する際の微動エネルギーの下限値の推定を試みた.
防災科学技術研究所の運用する地震・津波観測監視システムDONET1およびDONET2の各観測点において,観測可能な微動の振幅と継続時間の下限値を設定した.各観測点の連続速度波形記録に対して,微動の周波数帯域(2–8 Hz)のバンドパスフィルタを施した3成分合成エンベロープ波形波形を作成し,2015年10月–2022年12月のデータを元に振幅中央値+3σを検出下限振幅とした.下限振幅は観測点によって異なるが,概ね30–60 nm/sであった.継続時間の下限値は20秒とした.微動がプレート境界で発生すると仮定し,仮定した震源において観測下限値に相当する微動の地震波輻射エネルギーをフォワード計算した.エネルギー計算手法はYabe et al. (2019, 2021)に基づき,プレート境界モデル(Nakanishi et al., 2018)を使用した.震源は微動の発生域を含む領域において0.01°刻みのグリッド上に仮定し,震源から100 km以内の観測点を計算に使用した.
推定された微動エネルギー下限値は観測点分布の影響を受けて不均質に分布し,観測点が密なDONET1およびDONET2直下の三重県南東沖と紀伊水道沖では~104-4.5 Jの値を取り,潮岬沖や室戸沖では~105–5.5 Jの値となった.検出される微動の個数密度が高い領域は検出エネルギー下限値が低い傾向にあり,検出下限値の影響を受けていると考えられる.この理論的なエネルギー下限値の分布を実際に観測された微動エネルギーの下限値の分布 (太田ほか, 2022)と比較したところ,概ね整合的であった.ただし,これらのエネルギーは微動がぎりぎり検出可能なエネルギーの下限値であり,コンプリートネスを満たしているとは考え難い.振幅下限値を100 nm/sに仮定すると,期待されるエネルギーは105–6.5 Jとなる.これらは微動のエネルギー頻度分布から見積もられるコンプリートネスエネルギーとも概ね整合的であるため,コンプリートネスエネルギーの分布と考えて良さそうである.
防災科学技術研究所の運用する地震・津波観測監視システムDONET1およびDONET2の各観測点において,観測可能な微動の振幅と継続時間の下限値を設定した.各観測点の連続速度波形記録に対して,微動の周波数帯域(2–8 Hz)のバンドパスフィルタを施した3成分合成エンベロープ波形波形を作成し,2015年10月–2022年12月のデータを元に振幅中央値+3σを検出下限振幅とした.下限振幅は観測点によって異なるが,概ね30–60 nm/sであった.継続時間の下限値は20秒とした.微動がプレート境界で発生すると仮定し,仮定した震源において観測下限値に相当する微動の地震波輻射エネルギーをフォワード計算した.エネルギー計算手法はYabe et al. (2019, 2021)に基づき,プレート境界モデル(Nakanishi et al., 2018)を使用した.震源は微動の発生域を含む領域において0.01°刻みのグリッド上に仮定し,震源から100 km以内の観測点を計算に使用した.
推定された微動エネルギー下限値は観測点分布の影響を受けて不均質に分布し,観測点が密なDONET1およびDONET2直下の三重県南東沖と紀伊水道沖では~104-4.5 Jの値を取り,潮岬沖や室戸沖では~105–5.5 Jの値となった.検出される微動の個数密度が高い領域は検出エネルギー下限値が低い傾向にあり,検出下限値の影響を受けていると考えられる.この理論的なエネルギー下限値の分布を実際に観測された微動エネルギーの下限値の分布 (太田ほか, 2022)と比較したところ,概ね整合的であった.ただし,これらのエネルギーは微動がぎりぎり検出可能なエネルギーの下限値であり,コンプリートネスを満たしているとは考え難い.振幅下限値を100 nm/sに仮定すると,期待されるエネルギーは105–6.5 Jとなる.これらは微動のエネルギー頻度分布から見積もられるコンプリートネスエネルギーとも概ね整合的であるため,コンプリートネスエネルギーの分布と考えて良さそうである.