[S09P-14] 東京湾北部から千葉県中部にかけての浅発地震活動の特徴
はじめに:東京湾北部から千葉県中部にかけて、震源の浅い地震が2011年の東北地方太平洋沖地震後に活発化した。気象庁カタログによると、これらは深さ15㎞程度から地表付近まで震源が帯状に分布し、その中には比較的規模の大きい2012年2月18日13時56分に発生したM3.8(深さ2㎞)、同日14時13分M4.2(深さ1.5㎞)の地震が含まれている。この地域は人口密集地域であり、このような地表付近にまで達する地震の分布が実際の地震活動を表しているのかは防災上、重要である。またこの地域の先新第三系基盤深度は2.5~3.5 kmであり(鈴木, 2002;林ほか, 2006)、深さ2km以浅でM4クラスの地震が発生したのが事実であれば、第三系や第四系の堆積層内で地震が発生したことになり、地震発生機構の点からも注目すべきである。
そこで本研究ではこれらの地震に関して、首都圏地震観測網(MeSO-net)・高感度地震観測網(Hi-net)のデータを用いて震源を再決定することにより、東京湾北部から千葉県中部にかけて発生する浅発地震の特徴を調査した。
首都圏は堆積層が厚く、観測点の走時もその影響を受ける。また、使用する観測点の違いにより震源決定の結果が影響され、特に深さへの影響が大きいことが考えられる。そのため、観測点を限定し、適切な速度構造を推定して震源を求めた。
時系列の特徴:対象地域の30㎞以浅の地震活動は2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震以降から微小~小規模程度の地震が増加したが、2017年以降は発生数が少ない。気象庁カタログのM1以上の月別地震数を見ると深さ17~30㎞の地震活動は東北地方太平洋沖地震後に地震数が増加したのち、数か月で地震数が急激に(5分の1程度に)減少したが、深さ17㎞以浅の地震では地震数が増加した後、2年以上かけて緩やかに減少し、地震活動の時間変化には深さによる違いが見られることが分かった。
震源再決定:震源再決定にあたってはHi-netのイベント波形データに収録されている観測点に加えて気象庁による震源から震央距離20㎞以内のMeSO-netの観測点の波形データも用い、P波とS波の到着時刻を再検測した。震源決定の標準走時計算には水平成層の地震波速度構造を用いた。今回はMeSO-net観測点の数が多いことから、まずは深層観測井のデータ(鈴木, 2002)から推定された関東平野の浅部地震波速度構造を参考に、深さ3㎞以浅でP波速度が2km/s程度、S波速度が1km/s程度の構造をいくつか仮定し、震源決定への影響を検討した。
[2012年2月18日の地震]木村(2012)よれば13時56分に発生した地震は深さ7.3 km、14時13分に発生した地震は深さ6.6 kmとしている。今回の震源再決定の結果、13時56分の地震について、深さ7.8-10.5 km、14時13分の地震については深さ7.0-9.4 kmとなり、木村(2012)よりやや深くなり、また気象庁カタログより数㎞深い震源が得られた。
[その他の地震]2020年6月2日15時41分 M3.4 深さ7.8 km(気象庁)の地震に関して同様の解析を行った結果、深さは11.6 – 14.9 kmとなった。また、東京湾中部で発生した2015年12月26日 23時20分 M3.5 深さ22.9 kmの地震に関しては 深さ20.7 –25.6 kmとなった。
いずれも暫定的な結果でさらに解析数を増やす予定であるが、現時点では、気象庁カタログにおいて15kmより浅部で発生したとされている震源はより深く決定された。よって、気象庁による震源に見られる深さ15㎞から地表付近に伸びる帯状の震源分布は震源決定の誤差に起因するものである可能性が高い。また深さ3㎞以浅の先新第三系基盤の上面より浅い場所で発生した地震ではないことも分かった。
本研究では、気象庁一元化震源カタログ、防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)・首都圏地震観測網(MeSO-net) ・気象庁・東京大学の地震観測データを利用させていただきました。記して感謝いたします。
そこで本研究ではこれらの地震に関して、首都圏地震観測網(MeSO-net)・高感度地震観測網(Hi-net)のデータを用いて震源を再決定することにより、東京湾北部から千葉県中部にかけて発生する浅発地震の特徴を調査した。
首都圏は堆積層が厚く、観測点の走時もその影響を受ける。また、使用する観測点の違いにより震源決定の結果が影響され、特に深さへの影響が大きいことが考えられる。そのため、観測点を限定し、適切な速度構造を推定して震源を求めた。
時系列の特徴:対象地域の30㎞以浅の地震活動は2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震以降から微小~小規模程度の地震が増加したが、2017年以降は発生数が少ない。気象庁カタログのM1以上の月別地震数を見ると深さ17~30㎞の地震活動は東北地方太平洋沖地震後に地震数が増加したのち、数か月で地震数が急激に(5分の1程度に)減少したが、深さ17㎞以浅の地震では地震数が増加した後、2年以上かけて緩やかに減少し、地震活動の時間変化には深さによる違いが見られることが分かった。
震源再決定:震源再決定にあたってはHi-netのイベント波形データに収録されている観測点に加えて気象庁による震源から震央距離20㎞以内のMeSO-netの観測点の波形データも用い、P波とS波の到着時刻を再検測した。震源決定の標準走時計算には水平成層の地震波速度構造を用いた。今回はMeSO-net観測点の数が多いことから、まずは深層観測井のデータ(鈴木, 2002)から推定された関東平野の浅部地震波速度構造を参考に、深さ3㎞以浅でP波速度が2km/s程度、S波速度が1km/s程度の構造をいくつか仮定し、震源決定への影響を検討した。
[2012年2月18日の地震]木村(2012)よれば13時56分に発生した地震は深さ7.3 km、14時13分に発生した地震は深さ6.6 kmとしている。今回の震源再決定の結果、13時56分の地震について、深さ7.8-10.5 km、14時13分の地震については深さ7.0-9.4 kmとなり、木村(2012)よりやや深くなり、また気象庁カタログより数㎞深い震源が得られた。
[その他の地震]2020年6月2日15時41分 M3.4 深さ7.8 km(気象庁)の地震に関して同様の解析を行った結果、深さは11.6 – 14.9 kmとなった。また、東京湾中部で発生した2015年12月26日 23時20分 M3.5 深さ22.9 kmの地震に関しては 深さ20.7 –25.6 kmとなった。
いずれも暫定的な結果でさらに解析数を増やす予定であるが、現時点では、気象庁カタログにおいて15kmより浅部で発生したとされている震源はより深く決定された。よって、気象庁による震源に見られる深さ15㎞から地表付近に伸びる帯状の震源分布は震源決定の誤差に起因するものである可能性が高い。また深さ3㎞以浅の先新第三系基盤の上面より浅い場所で発生した地震ではないことも分かった。
本研究では、気象庁一元化震源カタログ、防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)・首都圏地震観測網(MeSO-net) ・気象庁・東京大学の地震観測データを利用させていただきました。記して感謝いたします。