[S10P-02] S and P-wave seismic reflection survey in the Ama area, Minami-Awaji City, Hyogo Prefecture, Japan
産業技術総合研究所の沿岸域の地質・活断層プロジェクトでは日本全国の大都市圏沿岸地域を対象に,地質情報の整備を行っており,令和2年度からは紀伊水道沿岸域を対象に調査を実施している.本発表では,令和4年度に兵庫県南あわじ市で実施した複数の浅部地下構造調査のうち,阿万西町から東町にかけて実施したP波反射法地震探査,S波反射法地震探査の概要,初期解析結果に関して報告する.
淡路島南西部に位置する西淡山地は主に和泉層群より構成され,山地東に分布する三原平野の境界付近に湊-本庄断層が推定されている(兵庫県,1982).水野・吉岡(1996)は,湊-本庄断層周辺地域で反射法地震探査等を実施し,断層の中央部において地下の大阪層群の変形構造を認めたが,断層南部の阿万地区においては,断層推定位置の西側のみ調査が実施されたため,断層の位置や変位構造は不明である.本調査は,阿万地区において,地下浅部構造,湊-本庄断層の位置等を明らかにするために,S波,P波反射法地震探査を実施した.
本調査は2023年2月16日から23日に実施した.調査測線(以下,南阿万測線とする)は阿万海岸海水浴場付近の市道沿いに,阿万東町から阿万西町にかけて設定した.南阿万測線の方向は概ね東-西で,総延長は807 mである.震源には小型油圧インパクタ(JMS-mini65-2,地球科学総合研究所製)を使用した.JMS-mini65-2は,P/S両用でシリンダ軸を進行方向右側に最大60度傾けることでS波を発震することができる.P波反射法地震探査の発震回数は各点5回を基本とした.S波反射法地震探査の発震回数は測線の進行方向に対して右側に傾けた方向から各点5回を基本とし,10測点ごとにインパクタを反対方向に向けて,逆方向に5回発震した.受振機は,S波反射法地震探査は固有周波数10Hzの水平動ジオフォン(Geospace社製,GS-32CT内蔵)を使用し,水平動成分が測線の方向に直交になるように設置した.P波反射法地震探査には固有周波数2Hzの上下動ジオフォン(SUNFULL社製, PS-2B内蔵)を使用した.受振機間隔はS波反射法地震探査に関しては1 m,P波反射法地震探査に関しては2 mに設定した. 総受振点はS波反射法地震探査が808点,P波反射法地震探査が404点となった.探鉱機はテレメトリ型地震探査システムDSS-12(サンコーコンサルタント製)を使用し,サンプリングは0.5 ms,収録時間は2 sに設定した.
取得データのうち不良トレースを削除し,ウィンドウ長1000 msのダイバーシティスタックを用いて垂直重合した.S/N比は良好で初動は最大オフセットまで確認できた.その後,ジオメトリを定義し,バンドパスフィルタ,予測デコンボリューション等の処理を実施した.定速度でNMO補正,CMP重合を実施し,予備的な時間断面図を作成したところ,S波反射法地震探査では往復走時約500 msまで,P波反射法地震探査では約 200 msまで反射面をイメージングすることができた.全体的に反射面の連続性は良く,強振幅のイベントが複数認められた.測線上で実施されたボーリング調査(中谷ほか,2022)と比較すると,時間断面図で認められた強振幅イベントは主に大阪層群内の反射面,または和泉層群上面と表すと考えられる. 今後,屈折波静補正,速度解析,CMP重合等の処理を進め,マイグレーション深度断面図を作成する予定である.ボーリング調査の結果と比較して,湊-本庄断層の南部における断層位置や変形構造等を議論したい.
参考文献
兵庫県(1982):土地分類基本調査「由良・鳴門海峡」,表層地質図(5万分の1)ならびに同説明書.兵庫県,75p.
水野清秀・吉岡敏和(1996):淡路島南西部,湊-本庄 断層のボーリング,浅層反射法弾性波探査等による活動調査(平成 7 年度活断層調査報告 no. 10),地質調査所研究資料集,no.234.
中谷是崇・羽田裕貴・水野清秀・中島 礼(2022):兵庫県淡路島南部における湊-本庄断層付近の第四系ボーリング調査,地質調査総合センター速報 No.83,令和3年度沿岸域の地質・活断層調査研究報告,p.61 – 76.
淡路島南西部に位置する西淡山地は主に和泉層群より構成され,山地東に分布する三原平野の境界付近に湊-本庄断層が推定されている(兵庫県,1982).水野・吉岡(1996)は,湊-本庄断層周辺地域で反射法地震探査等を実施し,断層の中央部において地下の大阪層群の変形構造を認めたが,断層南部の阿万地区においては,断層推定位置の西側のみ調査が実施されたため,断層の位置や変位構造は不明である.本調査は,阿万地区において,地下浅部構造,湊-本庄断層の位置等を明らかにするために,S波,P波反射法地震探査を実施した.
本調査は2023年2月16日から23日に実施した.調査測線(以下,南阿万測線とする)は阿万海岸海水浴場付近の市道沿いに,阿万東町から阿万西町にかけて設定した.南阿万測線の方向は概ね東-西で,総延長は807 mである.震源には小型油圧インパクタ(JMS-mini65-2,地球科学総合研究所製)を使用した.JMS-mini65-2は,P/S両用でシリンダ軸を進行方向右側に最大60度傾けることでS波を発震することができる.P波反射法地震探査の発震回数は各点5回を基本とした.S波反射法地震探査の発震回数は測線の進行方向に対して右側に傾けた方向から各点5回を基本とし,10測点ごとにインパクタを反対方向に向けて,逆方向に5回発震した.受振機は,S波反射法地震探査は固有周波数10Hzの水平動ジオフォン(Geospace社製,GS-32CT内蔵)を使用し,水平動成分が測線の方向に直交になるように設置した.P波反射法地震探査には固有周波数2Hzの上下動ジオフォン(SUNFULL社製, PS-2B内蔵)を使用した.受振機間隔はS波反射法地震探査に関しては1 m,P波反射法地震探査に関しては2 mに設定した. 総受振点はS波反射法地震探査が808点,P波反射法地震探査が404点となった.探鉱機はテレメトリ型地震探査システムDSS-12(サンコーコンサルタント製)を使用し,サンプリングは0.5 ms,収録時間は2 sに設定した.
取得データのうち不良トレースを削除し,ウィンドウ長1000 msのダイバーシティスタックを用いて垂直重合した.S/N比は良好で初動は最大オフセットまで確認できた.その後,ジオメトリを定義し,バンドパスフィルタ,予測デコンボリューション等の処理を実施した.定速度でNMO補正,CMP重合を実施し,予備的な時間断面図を作成したところ,S波反射法地震探査では往復走時約500 msまで,P波反射法地震探査では約 200 msまで反射面をイメージングすることができた.全体的に反射面の連続性は良く,強振幅のイベントが複数認められた.測線上で実施されたボーリング調査(中谷ほか,2022)と比較すると,時間断面図で認められた強振幅イベントは主に大阪層群内の反射面,または和泉層群上面と表すと考えられる. 今後,屈折波静補正,速度解析,CMP重合等の処理を進め,マイグレーション深度断面図を作成する予定である.ボーリング調査の結果と比較して,湊-本庄断層の南部における断層位置や変形構造等を議論したい.
参考文献
兵庫県(1982):土地分類基本調査「由良・鳴門海峡」,表層地質図(5万分の1)ならびに同説明書.兵庫県,75p.
水野清秀・吉岡敏和(1996):淡路島南西部,湊-本庄 断層のボーリング,浅層反射法弾性波探査等による活動調査(平成 7 年度活断層調査報告 no. 10),地質調査所研究資料集,no.234.
中谷是崇・羽田裕貴・水野清秀・中島 礼(2022):兵庫県淡路島南部における湊-本庄断層付近の第四系ボーリング調査,地質調査総合センター速報 No.83,令和3年度沿岸域の地質・活断層調査研究報告,p.61 – 76.