16:01 〜 16:16
[S12-01] 石英ガウジの摩擦の素過程に対する水蒸気の影響
はじめに: 石英ガウジの摩擦特性は,真実接触点の変形過程を反映しており,試料表面の吸着水や実験雰囲気中の水蒸気の有無に影響を受けることが知られている(例えば,Dieterich and Conrad, 1984; Frye and Marone, 2002).しかし,変形過程の詳細は不明な点が多い.本研究では,湿度を制御した雰囲気中で,石英ガウジの摩擦すべり実験を行い,その摩擦特性とAE活動の湿度依存性を明らかにする.また,その結果に基づいて,真実接触点の変形過程について考察する.
実験方法:実験は,東北大学地震・噴火予知研究観測センター所有のロータリー式せん断試験機を用いて,乾燥状態(相対湿度7 %),室内状態,湿潤状態(相対湿度100 %),加水状態(間隙水圧は制御しない)の4通りの雰囲気中で行った.法線応力は5 MPaで一定に保った.石英ガウジは,セメント強さ試験用の標準砂(石英が98 %)を乳鉢ですりつぶし,目開き106 μmのふるいを通したものを使用した.ガウジはあらかじめ1 gごとに取り分けて,相対湿度5 %の容器で保管する.実験の際には,このガウジを,内径20 mm,外形30 mmの接触面を持つステンレス製の載荷ブロック間に素早く挟む.加水状態の実験では,この時に,0.25 mlの精製水を加えた.載荷ブロックに挟まれたガウジは,ステンレス製の容器で覆われ,容器内には湿度を調整した空気を送入して雰囲気を制御する.この状態で,一晩(約17時間)放置してから,法線応力を印加し,さらに1時間の圧密の後に実験を行う.すべり速度は,3-100 μm/sの間で,すべり量1-2 mmごとに0.5桁刻みで変化させた.最大すべり量は約140 mmである.2つの状態変数を持つ速度・状態依存摩擦則を用いて,すべり速度変化に伴う摩擦係数の変化の観測値と理論値を,目視によりフィッティングして,摩擦構成則のパラメータを推定した.ガウジ層で発生するAEは,載荷ブロック内に設置したAEセンサーで観測する.AE活動は,単位すべり量当たりの発生数と振幅分布を特徴づける石本-飯田のm値により評価する.
結果:実験開始直後は,ガウジの圧密等に伴うと思われる摩擦係数やAE活動の変動が大きいので,累積すべり量が50-120 mmのデータの平均値を水蒸気分圧に対してプロットする.水蒸気分圧は,実験中の室温と相対湿度の平均値から計算した.乾燥状態,室内状態,湿潤状態のそれぞれの水蒸気分圧は約1 hPa,6-7 hPa,15-17 hPaであった.加水状態の水蒸気分圧は1013 hPaとした.水蒸気分圧が増加の増加に伴い,(1) 摩擦構成則のaはわずかに減少し,(2) bは増加した結果,(3) a-bは,~0から~-0.08へ減少した.一方,水蒸気分圧によらず,(4) 摩擦係数は~0.7で一定であり,(5) 状態変数の遷移距離(Dc)も一定であった.AE活動については,水蒸気分圧の増加に伴い,(6) AEの発生レートは減少するが,(7) m値は2.0-2.2で一定であった.
議論と結論:結果の(6)と(7)から,水蒸気分圧の増加に伴い,ガウジ層内部の変形過程が,脆性的なものから塑性的なものに変化していくことが示唆される.その結果,真実接触面積の接触時間依存性が強まり,結果の(3)と(5)が示すように,ガウジ層全体としては不安定性が増加すると考えられる.
実験方法:実験は,東北大学地震・噴火予知研究観測センター所有のロータリー式せん断試験機を用いて,乾燥状態(相対湿度7 %),室内状態,湿潤状態(相対湿度100 %),加水状態(間隙水圧は制御しない)の4通りの雰囲気中で行った.法線応力は5 MPaで一定に保った.石英ガウジは,セメント強さ試験用の標準砂(石英が98 %)を乳鉢ですりつぶし,目開き106 μmのふるいを通したものを使用した.ガウジはあらかじめ1 gごとに取り分けて,相対湿度5 %の容器で保管する.実験の際には,このガウジを,内径20 mm,外形30 mmの接触面を持つステンレス製の載荷ブロック間に素早く挟む.加水状態の実験では,この時に,0.25 mlの精製水を加えた.載荷ブロックに挟まれたガウジは,ステンレス製の容器で覆われ,容器内には湿度を調整した空気を送入して雰囲気を制御する.この状態で,一晩(約17時間)放置してから,法線応力を印加し,さらに1時間の圧密の後に実験を行う.すべり速度は,3-100 μm/sの間で,すべり量1-2 mmごとに0.5桁刻みで変化させた.最大すべり量は約140 mmである.2つの状態変数を持つ速度・状態依存摩擦則を用いて,すべり速度変化に伴う摩擦係数の変化の観測値と理論値を,目視によりフィッティングして,摩擦構成則のパラメータを推定した.ガウジ層で発生するAEは,載荷ブロック内に設置したAEセンサーで観測する.AE活動は,単位すべり量当たりの発生数と振幅分布を特徴づける石本-飯田のm値により評価する.
結果:実験開始直後は,ガウジの圧密等に伴うと思われる摩擦係数やAE活動の変動が大きいので,累積すべり量が50-120 mmのデータの平均値を水蒸気分圧に対してプロットする.水蒸気分圧は,実験中の室温と相対湿度の平均値から計算した.乾燥状態,室内状態,湿潤状態のそれぞれの水蒸気分圧は約1 hPa,6-7 hPa,15-17 hPaであった.加水状態の水蒸気分圧は1013 hPaとした.水蒸気分圧が増加の増加に伴い,(1) 摩擦構成則のaはわずかに減少し,(2) bは増加した結果,(3) a-bは,~0から~-0.08へ減少した.一方,水蒸気分圧によらず,(4) 摩擦係数は~0.7で一定であり,(5) 状態変数の遷移距離(Dc)も一定であった.AE活動については,水蒸気分圧の増加に伴い,(6) AEの発生レートは減少するが,(7) m値は2.0-2.2で一定であった.
議論と結論:結果の(6)と(7)から,水蒸気分圧の増加に伴い,ガウジ層内部の変形過程が,脆性的なものから塑性的なものに変化していくことが示唆される.その結果,真実接触面積の接触時間依存性が強まり,結果の(3)と(5)が示すように,ガウジ層全体としては不安定性が増加すると考えられる.