[S12P-02] Effect of internal fracture distribution on frequency dependence of elastic constants of granite
1. 背景・目的
岩石の弾性特性を知ることは、地下の構造形態を推定する地震波探査など様々な分野において重要である。そのような岩石の弾性特性は、室内実験の静的試験または音波測定(100 kHz – 1 MHz)や地震波探査(0.1–10 Hz)から推定される。しかし、内部の空隙状態や弾性波の周波数に依存することが知られている岩石の弾性特性を、何桁もかけ離れた周波数帯で比較し物質を推定することは容易ではない。とくに現時点では、地震波探査や自然地震の低周波帯(0.1-10 Hz)で行われた室内実験はあまり多くなく、大陸地殻の大部分を占めている花崗岩で行われた研究は少ない。そこで本研究では、動的応力-ひずみ法を用いて亀裂分布が異なる花崗岩の弾性定数とその周波数依存性を調べることを目的とした。高周波帯(1 MHz)では、AEセンサーを用いた透過法測定により、Vp/Vs比からポアソン比の導出を行った。
2. 実験手法
実験には庵治花崗岩(香川県産)を、直径40 mm、長さ80 mmの円柱形に整形した試料を用いた。はじめに、異なる亀裂分布状態にすることを目的として、未加熱試料(間隙率 0.30%)、550℃に加熱し、加熱炉内に静置することで緩やかに冷却した試料(間隙率 1.45%)の2種類を用意した。それぞれの試料について、軸方向に低周波(0.1, 1, 10 Hz)の弾性振動を与え、応力および軸・周ひずみを測定した。この測定は、試料の乾燥・飽和状態でそれぞれ行った。試料に弾性振動を与えるために、ピエゾアクチュエーター(ピーアイジャパン社製 P-045.20P)を使用した。測定の際には、試料の上にピエゾアクチュエーターを載せ、20 MPaの軸応力をかけ固定した。その後、ファンクションジェネレーターの電気信号をアンプで増幅させ、ピエゾアクチュエーターに電気信号(電圧600 V, 伸長範囲18 µm)を送り、試料の軸方向に低周波の弾性振動を与えた。測定したデータにはノイズが含まれているため、5波を1セットとした測定データを15回スタッキングすることによりS/N比の向上を試みた。スタッキングした測定データの応力および軸・周ひずみの振幅値や周波数スペクトルから、弾性定数の導出を行い、周波数との相関を確認した。
AEセンサーを用いた透過法により、高周波(1 MHz)における弾性波速度測定を行った。試料の軸方面の弾性波透過特性を調べるために、試料の両底面にAEセンサーの端子を接着させ、周波数1 MHz、電圧10 Vp-p、矩形波の電気信号をAEセンサーに入力し、オシロスコープで岩石を透過した矩形波の波形を確認した。
3. 結果・今後の展望
乾燥試料では弾性定数の周波数依存性は見られなかった。一方で、飽和試料では周波数とポアソン比には正の相関が見られた。飽和未加熱試料(間隙率 0.30%)のポアソン比は、周波数が0.1 Hzから10 Hzに増加するにつれて、0.327から0.341と増加し、飽和した550℃加熱試料(間隙率 1.45%)のポアソン比は、0.328から0.449と増加するという変化が確認できた。この増加量の違いは、低周波帯(0.1 – 100 Hz)で有効に働く間隙水と岩石の相互作用に起因したメカニズム(Mavko & Jizba, 1991)が関係している可能性がある。また、乾燥試料には周波数依存性が見られず、飽和試料で周波数依存性が見られたという結果は、Tisato & Madonna (2012)の結果と矛盾しない。しかし、他文献に比べ花崗岩のポアソン比の値が高いため、その原因を解明することが課題である。今後は、三軸圧縮試験機を用いた封圧下での測定と、透過法の結果を加味した弾性定数の周波数依存性を調べる。また、除去できなかったAC電源由来と思われる50 Hzのノイズをローパスフィルターによって除去することを考えている。
岩石の弾性特性を知ることは、地下の構造形態を推定する地震波探査など様々な分野において重要である。そのような岩石の弾性特性は、室内実験の静的試験または音波測定(100 kHz – 1 MHz)や地震波探査(0.1–10 Hz)から推定される。しかし、内部の空隙状態や弾性波の周波数に依存することが知られている岩石の弾性特性を、何桁もかけ離れた周波数帯で比較し物質を推定することは容易ではない。とくに現時点では、地震波探査や自然地震の低周波帯(0.1-10 Hz)で行われた室内実験はあまり多くなく、大陸地殻の大部分を占めている花崗岩で行われた研究は少ない。そこで本研究では、動的応力-ひずみ法を用いて亀裂分布が異なる花崗岩の弾性定数とその周波数依存性を調べることを目的とした。高周波帯(1 MHz)では、AEセンサーを用いた透過法測定により、Vp/Vs比からポアソン比の導出を行った。
2. 実験手法
実験には庵治花崗岩(香川県産)を、直径40 mm、長さ80 mmの円柱形に整形した試料を用いた。はじめに、異なる亀裂分布状態にすることを目的として、未加熱試料(間隙率 0.30%)、550℃に加熱し、加熱炉内に静置することで緩やかに冷却した試料(間隙率 1.45%)の2種類を用意した。それぞれの試料について、軸方向に低周波(0.1, 1, 10 Hz)の弾性振動を与え、応力および軸・周ひずみを測定した。この測定は、試料の乾燥・飽和状態でそれぞれ行った。試料に弾性振動を与えるために、ピエゾアクチュエーター(ピーアイジャパン社製 P-045.20P)を使用した。測定の際には、試料の上にピエゾアクチュエーターを載せ、20 MPaの軸応力をかけ固定した。その後、ファンクションジェネレーターの電気信号をアンプで増幅させ、ピエゾアクチュエーターに電気信号(電圧600 V, 伸長範囲18 µm)を送り、試料の軸方向に低周波の弾性振動を与えた。測定したデータにはノイズが含まれているため、5波を1セットとした測定データを15回スタッキングすることによりS/N比の向上を試みた。スタッキングした測定データの応力および軸・周ひずみの振幅値や周波数スペクトルから、弾性定数の導出を行い、周波数との相関を確認した。
AEセンサーを用いた透過法により、高周波(1 MHz)における弾性波速度測定を行った。試料の軸方面の弾性波透過特性を調べるために、試料の両底面にAEセンサーの端子を接着させ、周波数1 MHz、電圧10 Vp-p、矩形波の電気信号をAEセンサーに入力し、オシロスコープで岩石を透過した矩形波の波形を確認した。
3. 結果・今後の展望
乾燥試料では弾性定数の周波数依存性は見られなかった。一方で、飽和試料では周波数とポアソン比には正の相関が見られた。飽和未加熱試料(間隙率 0.30%)のポアソン比は、周波数が0.1 Hzから10 Hzに増加するにつれて、0.327から0.341と増加し、飽和した550℃加熱試料(間隙率 1.45%)のポアソン比は、0.328から0.449と増加するという変化が確認できた。この増加量の違いは、低周波帯(0.1 – 100 Hz)で有効に働く間隙水と岩石の相互作用に起因したメカニズム(Mavko & Jizba, 1991)が関係している可能性がある。また、乾燥試料には周波数依存性が見られず、飽和試料で周波数依存性が見られたという結果は、Tisato & Madonna (2012)の結果と矛盾しない。しかし、他文献に比べ花崗岩のポアソン比の値が高いため、その原因を解明することが課題である。今後は、三軸圧縮試験機を用いた封圧下での測定と、透過法の結果を加味した弾性定数の周波数依存性を調べる。また、除去できなかったAC電源由来と思われる50 Hzのノイズをローパスフィルターによって除去することを考えている。