The 2023 SSJ Fall Meeting

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Room C

Regular session » S13. Crustal fluids and earthquake

[S13] AM-1

Tue. Oct 31, 2023 9:30 AM - 10:00 AM Room C (F202)

chairperson:Daisuke INAZU

9:30 AM - 9:45 AM

[S13-01] Abrupt water temperature increases near seafloor after the 2011 Tohoku earthquake

*Daisuke INAZU1, Yoshihiro ITO2, Ryota HINO3, Wataru TANIKAWA4 (1. Tokyo University of Marine Science and Technology, 2. Kyoto University, 3. Tohoku University, 4. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)

2011年東北地震の震源直上海底における圧力観測の圧力データは、その地震で発生した地殻変動や津波の評価に多く用いられてきた。その際、圧力値の算出のために、海底圧力計内部の温度データも取得されているが、こうした(温度)補償のための補足的なデータはほとんど利用されてこなかった。

Inazu et al. 2023 PEPSでは、まず、これらの温度データが機器周辺の水温のプロキシーとして利用できることを確認し、次いで、2011年東北地震を経験した宮城県沖合の8点の海底圧力観測(水深1-6 km)の温度データを精査した。水深約3 km(GJT3)と6 km(TJT1)の2点(Hino et al. 2014 MGR参照)では、地震(本震)発生から数時間後に約0.1℃の温度上昇が見られ、その異常は2週間以上継続していた。考察の結果、その異常は本震時の大すべり域の深海(水深3-6 km)の海底下から温かな流体が湧出し、それが海底近傍の海水中で拡散したことよると述べた。

この温湧水が海水に与えた熱量を概算したところ、4 × 10^16 Jであった。観測された水温上昇の時間スケールも考慮しその起源を考察した結果、大すべり域の上盤内のいくつかの主要な断層(分岐正断層、および、より海溝軸近傍の逆断層群)の、海底下数kmに及ぶ破砕帯に閉じ込められていた流体が、本震発生から数時間の時間内で、ほぼ全て放出されたと推察される。このときの海底下から海底までの流体の移流速度は、数十cm/sに達していたと見積もられる。

GJT3とTJT1で見られた水温異常の約2週間の推移(上昇から減衰)は大局的には似ていたが、GJT3での異常がなだらかな減衰を見せた一方、TJT1での異常は、何回かの間欠的な上昇と下降を見せながら減衰していた。TJT1での間欠的な温度上昇は、周辺海域の海洋潮汐荷重の低下と同期していたため、本震発生後の数時間で海底近傍まで上昇してきたより深部の流体の一部が、潮汐荷重の低下に伴い間欠的に湧出したことが示唆される。

講演では、本震時からその後にかけての、海底下の流体・熱の移流・拡散の過程について、詳しく紹介する。

引用文献
Inazu, Ito, Hino, Tanikawa (2023) Abrupt water temperature increases near seafloor during the 2011 Tohoku earthquake. Prog Earth Planet Sci, 10, 24. https://doi.org/10.1186/s40645-023-00556-0
Hino, Inazu, Ohta, Ito, Suzuki, Iinuma, Osada, Kido, Fujimoto, Kaneda (2014) Was the 2011 Tohoku-Oki earthquake preceded by aseismic preslip? Examination of seafloor vertical deformation data near the epicenter. Mar Geophys Res, 35, 181–190. https://doi.org/10.1007/s11001-013-9208-2