日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S14. 地震予知・予測

[S14P] PM-P

2023年10月31日(火) 17:00 〜 18:30 P6会場 (F201・3側フォワイエ) (アネックスホール)

[S14P-01] 有感地震の長い発生間隔は大地震の前兆ではない

*加藤 護1 (1. 京大人間・環境学)

国内で起きる有感地震の間隔が長くなるのは大地震の前ぶれである,という噂がソーシャルメディアで流れることがある.この噂は動画配信チャンネルやキュレーションサイトでも頻繁に扱われている.例えば「有感地震 止まる」で検索するといくつもの動画が見つかる.多くの人にとって地震とは有感地震を指す.大きな有感地震は地震災害の誘因であり,次の地震や地震災害への関心は常に高い.  
このような噂が流れる背景には防災アプリなどを経由したプッシュ型の情報配信があるかもしれない.プッシュ型配信を利用するとすべての有感地震情報がリアルタイムで手元に届く.同様に緊急地震速報(予報)を手元で受け取ることもできる.この状態にいることで地震の回数を意識する機会が増え,また情報を受け取る間隔を意識する機会も増える.つまり地震の発生間隔が気になる人が増える.
たとえば,プレートの沈み込みによって貯まったエネルギーが地震時に解放される,と理解しているならば地震の発生間隔が次の地震の規模を決めると誤解することはあるかもしれない.弾性反発説の概念はなんとなく知っているがエネルギーの蓄積量や解放量の定量的な理解があいまいであるならば,とても短い地震サイクルを想起して地震の発生間隔が次の地震の大きさを決めると考えることもあるだろう.実際には余震など限られた例外を除けば,国内の有感地震が短い時間スケールで相互に影響を及ぼす可能性は無視できるだろう.
本報告では気象庁の地震カタログを用いて有感地震の発生間隔がその次の地震の大きさに関係していないことを確認する.地震の大きさの指標は観測最大震度とマグニチュードを用いる.過去の地震活動の公開されている地震カタログを用いて,地震に関する噂の真偽を確認する手法を提示することであるも本報告の目的のひとつである.