[S14P-02] Investigation of estimation scheme for inland earthquake long-term evaluation using machine learning
内陸で発生する地震の長期評価として、地震本部が行っている主要活断層の地質調査等に基づくもの、GNSS観測による地殻ひずみ速度を用いたもの(Nishimura, 2002)、ETASモデルを用いたもの(Ogata, 2022)、地殻ひずみ速度と地震活動を用いたもの(Mazotti et al., 2011)などがある。主要活断層の評価では現在進行中の地殻活動のデータが反映されておらず、また、活断層が存在しない地域の評価は困難である。地殻ひずみ速度データでは、ひずみ速度の大部分を占める海溝固着による成分の評価や、ひずみ速度と応力速度の関係が未決課題である。地震活動データでは、地震活動が低調な領域の評価や、長期間継続する余震活動の影響の検討が必要となる。観測事実として、2008年岩手宮城内陸地震のように主要活断層がない場所や、山陰地方などのひずみ速度が大きくない場所、定常的な地震活動度が低い場所でも被害地震が発生している。 地震は、応力や断層強度などの力学的条件や、地殻構造や過去の履歴などの複数の要因が相互に関係した結果として発生に至ると考えられる。そのため、時空間的に得られる複数の地学的情報を同時に利用して地震発生を評価する手法を開発する必要がある。マルチパラメータを利用する先駆的な研究として、前田(1988)は決定木解析で多種類の前兆現象を帰納的に学習させて最大マグニチュード(M)を推定するスキームを提案した。近年の計算機の処理能力の向上により、複数の特徴量が生成する膨大な分岐パターンを学習し、目的変数を予測する機械学習の手法が進展しており、地震学の分野では地震動予測で成果を上げている(Kubo et al., 2020)。本研究では、機械学習を用いて内陸地震発生予測に関係するパラメータを推定するスキームを検討する。 内陸地震が複数のパラメータの分岐条件のもとに発生しているとの仮定に立ち、本研究では決定木を用いたアンサンブル学習であるランダムフォレストと勾配ブースティングの利用を検討する。日本列島を適当な大きさのグリッドに分割してグリッド内の各種パラメータ(特徴量)をリスト化した後、目的変数の推定を試みる。はじめは、特徴量(説明変数)のうち、最大Mのような適当なパラメータを目的変数とした教師あり学習を行って予測モデルの性能評価と改善を試行する。次に、ポアソン過程での地震確率評価に向けて、ある閾値M以上の単位時間の地震発生数を推定するが、実際の観測データを用いた性能評価を行うため、M4-5程度の中規模地震から予測を試みる。M7以上の大地震は発生頻度が低いため直接的な検証は困難と考えられるが、機械学習による直接的な発生頻度推定に加え、実データでの検証が行われた中規模地震の予測モデルによる発生間隔とGR則を組み合わせるなどの手法を検討する。 地震活動に関係すると考えられる特徴量として全国的なデータが整備されている以下のパラメータをピックアップした:1)歴史地震を含む既往地震(M6程度以上)の有無とM;2)活断層の有無;3)主要活断層の地震後経過率・最大M・平均活動間隔・平均変位速度;4)地殻ひずみ速度テンソル;5)GRのab値;6)ETASのμ値;7)応力場と断層方位やひずみ場との偏差;8)D95;9)地殻熱流量;10)地震波速度構造の空間勾配;10)Vp絶対値;11)既往地震の余震継続期間。 1)5)7)について、1919年以降は気象庁地震カタログを、それ以前は宇津カタログや宇佐美カタログを利用する。地震活動には、前回の地震の余震活動が含まれている可能性があり、また群発的な活動を示す指標が必要となる。日本列島の地殻ひずみ速度は、海溝での固着による弾性変形が卓越しているため4)では短波長成分の利用を検討する。8)9)は地殻の強度に関するパラメータ、10)は大すべり域が地震波高速度帯に対応する事例を反映させている。地殻比抵抗構造は全国的なデータベースがなく将来的な課題としている。グリッドごとの特徴量の算出では、空間平均を取ることで、古い地震の震源精度や各特徴量の位置の不確かさを反映させる予定である。