The 2023 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

[S15] AM-1

Wed. Nov 1, 2023 9:30 AM - 10:45 AM Room D (F204)

chairperson:Keishi NOGUCHI, Masumi Yamada

9:30 AM - 9:45 AM

[S15-01] Integration of multiple hypocenter determination methods for Earthquake Early Warning into the IPF method

*Keishi NOGUCHI1, Koji TAMARIBUCHI2, Naoki HAYASHIMOTO1, Yuki KODERA2 (1. Japan Meteorological Agency, 2. Meteorological Research Institute)

1.はじめに
緊急地震速報の震源推定では観測網に応じた複数の震源推定手法を併用しており、最初に精度良く推定できた震源を使って第1報を発表し、より精度の良い震源が推定できた場合には震源を更新して続報を発表するという方法を用いてきた。そのため、複数の手法が推定した震源について、緊急地震速報として発表する際にそれらが同じ地震かどうかを判定する必要があった(同一地震判定)。しかし、この同一地震判定の際に、同時多発地震やノイズを誤って1つの地震と判定した結果、過大な警報を発表する事例があった。この問題を解決するため、震源推定手法の1つであるIPF法 [溜渕・他(2014)]に、複数の観測網を統合して解析できるように改良を加えた上で、緊急地震速報の震源推定手法のIPF法への一本化を行った。本発表では、その改良内容と検証結果について紹介する。

2.IPF法の改良
IPF法への一本化を行う前の緊急地震速報では、それぞれ異なる入力データを用いた複数の震源推定手法を併用していた(左図)。震源推定手法をIPF法へ一本化するためには、すべての入力データをIPF法で処理する必要があり(右図)、Hi-net の高感度速度波形を加速度波形へ変換すること、処理観測点数の増加に対応するため観測点選別による負荷軽減を行うこと、及び同一判定ロジックの見直しなどを検討してきた[野口・他(2020)]。一方で、すべてのデータをIPF法に入力しただけでは、過去に発表した緊急地震速報と比較して深発地震など一部の地震で震源推定精度が悪くなることがあり、これに対応するためIPF法の尤度関数の改良を行った。
IPF法は以下の4つの残差について、残差が0のとき最大となるような尤度関数を設定している。
・主成分分析[横田 (1985)]と震央方位の残差(以下、震央方位残差)
・B-Δ法[Odaka et al.(2003)、束田・他(2004)]と震央距離の残差(以下、震央距離残差)
・振幅から計算したMと震源Mの残差(以下、M残差)
・検測時刻とP波理論走時の残差(以下、走時残差)
これらそれぞれの残差について、実データを用いてその傾向を分析したところ以下の特徴が得られた。
・震央距離残差は対数正規分布でバイアスがある
・震央方位残差、震央距離残差、及びM残差の標準偏差は震源距離によらずほぼ一定
・走時残差の標準偏差は震源距離依存がある
これらの特徴をもとに尤度関数の再設計を行った。

3・検証結果
2011年3月11日から4月30日、および2016年1月1日から2022年12月31日における、観測震度3以上の地震または当時緊急地震速報を発表した事例について検証を行った。その結果、改良したIPF法は、当時の緊急地震速報が誤った同一地震判定により過大な警報を発表した事例に対して、同時多発地震やノイズを適切に分離し正しく処理できることを確認した。また、当時の緊急地震速報と比較して同等以上の震源推定精度と迅速性を担保できることを確認した。課題となっていた深発地震の震源推定精度についても、走時残差の尤度関数に震源距離による観測点の重みを導入したことにより改善することを確認した。

[謝辞]  本発表では気象庁観測点のデータのほかに、MOWLAS(Hi-net、S-net、DONET、KiK-net)のデータを利用しました。記して感謝いたします。