10:15 〜 10:30
[S15-04] 複数地震はどこまで分離可能か
2022年3月16日に発生した福島県沖地震では、2つの大きな地震(M6.1とM7.4)が約2分間隔で発生した。この2つの地震はほぼ同じ場所で発生し、最初の地震に対しては緊急地震速報が適切に発表された。2つ目の地震では緊急地震速報そのものは発表されたが、震源決定が適切に行われなかった。このため、震源推定(IPF法)に基づく警報は発表されず、波動伝播に基づくPLUM法のみが緊急地震速報に用いられた。もし震源が適切に推定されていれば、もっと広い範囲でより早く緊急地震速報を出すことができたはずである。この地震では、福島県内で運行中の新幹線が脱線する事故が発生した。事故の被害を防ぐためにも、緊急地震速報システムの改善が必要である。
本発表では、IPF法のようにP波検知情報(トリガー)に基づいて地震を検知する手法について検討する。複数の地震が時間的・空間的に近い場所で発生した場合、地震の検出分解能は低下する。特に、最初の地震の揺れが続いている間(3分程度)は、新たなトリガー情報が最初の地震に起因するものなのか、別の新たな地震に起因するものなのかを判断する必要がある。また、最初の地震の揺れが続いている時に、新たなトリガを検出する閾値も重要である。ここでは、(1)最初の地震の揺れが続いているときにP波を検出する閾値、(2)新しいトリガを最初の地震と新しい地震のどちらに分類するか、について議論する。
我々は、P波検出をよりロバストに行うためにTpd法(Hildyard et al., 2008)を用いた(Yamada and Mori, 2021)。Tpd法はSTA/LTAと同様に異なる周波数成分の比を使用する。図1に速度とTpd波形の例を示す。本アプローチのポイントは、Tpdの絶対値ではなく、3秒間のTpdの最大変化量を閾値とすることである。一般に、P波到達時はTpdの変化が最も大きく現れるため、P波到達の判定が容易となる。また、P波検出直後は、閾値を大きく設定し、より大きくTpdが変化したときのみトリガとする。このようにすることで、S波によるトリガを回避しつつ、後続する地震のP波を見逃さないようにする。ただし、2つ目の地震が1つ目の地震より小さい場合、すなわち1つ目の地震のコーダ波によって信号が埋もれてしまう場合は、2つ目の地震のP波を見逃す可能性がある。
P波のトリガが検出されると、既存の地震と別の新しい地震に分類される。溜渕ら (2013) で示されたように、IPF法のトリガのグルーピングは(1)P波の到達時間と(2)P波到達後5秒間の振幅 によって行われる。これらの値が既存の地震から推定される理論値から3σ以内であれば、トリガは既存の地震として扱われる。これらの値が3σ以上の場合、すなわちP波到達時刻の誤差が3σ以上の場合は、別の地震として扱われる。したがって、2つ目の地震のトリガが、ちょうど1つ目の地震のP波の走時と重なってしまうと、1つ目の地震に吸収されてしまう危険性がある。このリスクを回避するため、溜渕ら (2013) の判別条件に加えて、1つ目の地震から十分遠方で、予測される振幅がノイズレベルの1/10以下である場合は、別の地震とする条件を追加した。
福島県沖地震の1時間連続波形を拡張IPF法で検証した。拡張IPF法では,現在気象庁が採用している従来のSTA/LTA法の代わりに,Tpd法を利用してP波検出を行っている。図1に示すように、1つ目と2つ目の地震のP波が適切に検出された。IPF法で開発されたトリガのグルーピング法は、この2つの地震のトリガーを適切に分離することができる。時間的・空間的に近い複数の地震を分離するためには、P波検出の閾値を適切に設定すること、適切なグルーピングを行うことが重要である。
本発表では、IPF法のようにP波検知情報(トリガー)に基づいて地震を検知する手法について検討する。複数の地震が時間的・空間的に近い場所で発生した場合、地震の検出分解能は低下する。特に、最初の地震の揺れが続いている間(3分程度)は、新たなトリガー情報が最初の地震に起因するものなのか、別の新たな地震に起因するものなのかを判断する必要がある。また、最初の地震の揺れが続いている時に、新たなトリガを検出する閾値も重要である。ここでは、(1)最初の地震の揺れが続いているときにP波を検出する閾値、(2)新しいトリガを最初の地震と新しい地震のどちらに分類するか、について議論する。
我々は、P波検出をよりロバストに行うためにTpd法(Hildyard et al., 2008)を用いた(Yamada and Mori, 2021)。Tpd法はSTA/LTAと同様に異なる周波数成分の比を使用する。図1に速度とTpd波形の例を示す。本アプローチのポイントは、Tpdの絶対値ではなく、3秒間のTpdの最大変化量を閾値とすることである。一般に、P波到達時はTpdの変化が最も大きく現れるため、P波到達の判定が容易となる。また、P波検出直後は、閾値を大きく設定し、より大きくTpdが変化したときのみトリガとする。このようにすることで、S波によるトリガを回避しつつ、後続する地震のP波を見逃さないようにする。ただし、2つ目の地震が1つ目の地震より小さい場合、すなわち1つ目の地震のコーダ波によって信号が埋もれてしまう場合は、2つ目の地震のP波を見逃す可能性がある。
P波のトリガが検出されると、既存の地震と別の新しい地震に分類される。溜渕ら (2013) で示されたように、IPF法のトリガのグルーピングは(1)P波の到達時間と(2)P波到達後5秒間の振幅 によって行われる。これらの値が既存の地震から推定される理論値から3σ以内であれば、トリガは既存の地震として扱われる。これらの値が3σ以上の場合、すなわちP波到達時刻の誤差が3σ以上の場合は、別の地震として扱われる。したがって、2つ目の地震のトリガが、ちょうど1つ目の地震のP波の走時と重なってしまうと、1つ目の地震に吸収されてしまう危険性がある。このリスクを回避するため、溜渕ら (2013) の判別条件に加えて、1つ目の地震から十分遠方で、予測される振幅がノイズレベルの1/10以下である場合は、別の地震とする条件を追加した。
福島県沖地震の1時間連続波形を拡張IPF法で検証した。拡張IPF法では,現在気象庁が採用している従来のSTA/LTA法の代わりに,Tpd法を利用してP波検出を行っている。図1に示すように、1つ目と2つ目の地震のP波が適切に検出された。IPF法で開発されたトリガのグルーピング法は、この2つの地震のトリガーを適切に分離することができる。時間的・空間的に近い複数の地震を分離するためには、P波検出の閾値を適切に設定すること、適切なグルーピングを行うことが重要である。