11:00 〜 11:15
[S15-06] 予測のためのEGTDの推定
1.初めに
前回の発表では、観測記録の再現を目的とするEGTDの推定について主に述べた。再現のEGTDは、伝播経路の性質を求めるために用いる。一方、地震動予測や力学的震源インバージョンでは、予測に用いるEGTDが必要となる。この発表では予測のEGTDの推定について述べる。予測のEGTDの推定の前に、余震群中の一余震を仮想未来地震に指定し、残りの余震からサブ余震群を作り、この余震群から予測のEGTDを抽出する。抽出したEGTDを検証は、それを用いて合成した波形が仮想未来地震の観測記録を精度よく予測ですることで行う。この研究の一つの目的は、予測の高周波数EGTDが推定可能性調べることにある。 もう一つの目的は、最も精度よく予測できる震源時間間を、現在提案されている震源時間関数の中から選択できるかを調べることである。EGTDの推定は因果律を満たす任意の震源時間関数に対して可能である。これは、推定したEGTDの震源時間関数依存性を意味し、伝播経路の性質のみを反映すること矛盾する。このようなEGTDは、受け入れられない。震源時間関数として、断層破壊の物理に基づくものを採用すべきであるが、残念ながらそのようなものは存在していないように思われる。ここでは現実的な方法として、地震動観測記録と仮定した震源時間関数を用いて推定したEGTDにより合成した地震動間の誤差が最も小さくなる震源時間関数を既存の時間関数から選択する。この研究では、予測の高周波数EGTD推定と予測誤差が最小となる震源時間関数の選択の2課題を検討する。用いる余震群は、直径1 km内に8余震と7余震が分布するグループA1とA2である。EGTDの周波数帯は、遮断周波数を4Hz, 8Hz, 16Hzとする3つとした。
2.予測のための高周波数EGTDの推定
震源時間関数を平滑化ステップ関数(SSF)とした場合のグループA1の結果について述べる。8余震のうち一つを仮想未来地震に指定して、サブ余震群から予測のEGTDを抽出した。次に、抽出したEGTDを検証するため、仮想未来地震の「観測記録」をEGTDを用いて合成した波形により予測した。予測の精度は観測記録と予測波形の相互相関係数(CCC)により評価した。このEGTD推定のプロセスを仮想未来地震として8余震各々を指定して8回繰り返した。 遮断周波数が4Hzの場合のみほとんどすべての余震とすべての観測点でCCCは0.7以上となった。これは、遮断周波数が4Hz或いはそれ以下の場合のみ余震域と各観測点間の予測のEGTDが精度よく得られたことを示している。前回の学会では再現のEGTDは、遮断周波数が16HzでもEGTD精度よく推定できることを述べたが、予測のEGTDは再現のEGTDに比較して、遮断周波数がかなり低い。これは、予測のEGTDでは予測する余震(仮想未来地震)はEGTDを推定するサブ余震群に含まれていないためである。 グループA2の結果について述べる。グループA2では、CCCはグループA1よりさらに悪い。但し、それを見ると二つの理由があることがわかる。一つは、特定の1余震がどの観測点でもCCCが低い。これは、この低CCCの原因がこの余震の震源にあることを示している。もう一つは、特定の1観測点のすべての余震に関する相関係数が低い。これは、この観測点の観測システムまたは観測点近傍の観測条件が変化したことを意味する。これら2つの原因が除去されれば、CCCはグループA1と同程度になることが期待できる。従って、低CCCの余震のグループからの除去や他の余震で置き換えることはEGTDの精度向上に重要である。また、低CCCの観測点の除去も重要である。
3.震源時間関数の選択 高周波数EGTDの推定における最も重要な課題は、震源時間関数の採用である。震源時間関数としては断層破壊の物理に基づいたものを採用すべきであるがそのようなものはないと思われる。ここでは次善の策として、現在利用されている震源時間関数のうち最も精度よく仮想未来地震の地震動を予測するものを震源時間関数として選択する。ここでは、予備的研究として二つの震源時間関数を用いて、予測精度の比較を行う。具体的には、平滑化ステップ関数(SSF)と三角形関数(TAF)である。震源時間関数SSFの予測精度はすでにCCCを用いて評価済みなので、以下では震源時間関数TAFの予測精度の評価をCCCを用いて行う。震源時間関数TAFとした場合の二つの余震グループのCCCは、震源時間関数SSFと同じ特徴を示した。目視による二つの震源時間関数のCCCの差異を確認するのはむつかしい。そこで、対応する二つのCCCの比を求め、定量的に予測精度の差を調べた。比は3つのどの遮断周波数でも1付近に集中していた。各観測点において余震に関する平均値はほぼ1であった。この結果は、二つの震源時間関数の予測精度は同じであること示しており、予測精度の違いにより震源時間関数を選択することはむつかしいことを意味する。 4.まとめ この研究では以下の二つの結論が得られた
1.予測のための高周波EGTDは推定可能である。但し、予測精度の悪い余震の置き換えや削除により精度向上が可能である。
2.予測精度の比較により既存震源時間関数から予測精度の高い震源関数を選択することはむつかしい。
前回の発表では、観測記録の再現を目的とするEGTDの推定について主に述べた。再現のEGTDは、伝播経路の性質を求めるために用いる。一方、地震動予測や力学的震源インバージョンでは、予測に用いるEGTDが必要となる。この発表では予測のEGTDの推定について述べる。予測のEGTDの推定の前に、余震群中の一余震を仮想未来地震に指定し、残りの余震からサブ余震群を作り、この余震群から予測のEGTDを抽出する。抽出したEGTDを検証は、それを用いて合成した波形が仮想未来地震の観測記録を精度よく予測ですることで行う。この研究の一つの目的は、予測の高周波数EGTDが推定可能性調べることにある。 もう一つの目的は、最も精度よく予測できる震源時間間を、現在提案されている震源時間関数の中から選択できるかを調べることである。EGTDの推定は因果律を満たす任意の震源時間関数に対して可能である。これは、推定したEGTDの震源時間関数依存性を意味し、伝播経路の性質のみを反映すること矛盾する。このようなEGTDは、受け入れられない。震源時間関数として、断層破壊の物理に基づくものを採用すべきであるが、残念ながらそのようなものは存在していないように思われる。ここでは現実的な方法として、地震動観測記録と仮定した震源時間関数を用いて推定したEGTDにより合成した地震動間の誤差が最も小さくなる震源時間関数を既存の時間関数から選択する。この研究では、予測の高周波数EGTD推定と予測誤差が最小となる震源時間関数の選択の2課題を検討する。用いる余震群は、直径1 km内に8余震と7余震が分布するグループA1とA2である。EGTDの周波数帯は、遮断周波数を4Hz, 8Hz, 16Hzとする3つとした。
2.予測のための高周波数EGTDの推定
震源時間関数を平滑化ステップ関数(SSF)とした場合のグループA1の結果について述べる。8余震のうち一つを仮想未来地震に指定して、サブ余震群から予測のEGTDを抽出した。次に、抽出したEGTDを検証するため、仮想未来地震の「観測記録」をEGTDを用いて合成した波形により予測した。予測の精度は観測記録と予測波形の相互相関係数(CCC)により評価した。このEGTD推定のプロセスを仮想未来地震として8余震各々を指定して8回繰り返した。 遮断周波数が4Hzの場合のみほとんどすべての余震とすべての観測点でCCCは0.7以上となった。これは、遮断周波数が4Hz或いはそれ以下の場合のみ余震域と各観測点間の予測のEGTDが精度よく得られたことを示している。前回の学会では再現のEGTDは、遮断周波数が16HzでもEGTD精度よく推定できることを述べたが、予測のEGTDは再現のEGTDに比較して、遮断周波数がかなり低い。これは、予測のEGTDでは予測する余震(仮想未来地震)はEGTDを推定するサブ余震群に含まれていないためである。 グループA2の結果について述べる。グループA2では、CCCはグループA1よりさらに悪い。但し、それを見ると二つの理由があることがわかる。一つは、特定の1余震がどの観測点でもCCCが低い。これは、この低CCCの原因がこの余震の震源にあることを示している。もう一つは、特定の1観測点のすべての余震に関する相関係数が低い。これは、この観測点の観測システムまたは観測点近傍の観測条件が変化したことを意味する。これら2つの原因が除去されれば、CCCはグループA1と同程度になることが期待できる。従って、低CCCの余震のグループからの除去や他の余震で置き換えることはEGTDの精度向上に重要である。また、低CCCの観測点の除去も重要である。
3.震源時間関数の選択 高周波数EGTDの推定における最も重要な課題は、震源時間関数の採用である。震源時間関数としては断層破壊の物理に基づいたものを採用すべきであるがそのようなものはないと思われる。ここでは次善の策として、現在利用されている震源時間関数のうち最も精度よく仮想未来地震の地震動を予測するものを震源時間関数として選択する。ここでは、予備的研究として二つの震源時間関数を用いて、予測精度の比較を行う。具体的には、平滑化ステップ関数(SSF)と三角形関数(TAF)である。震源時間関数SSFの予測精度はすでにCCCを用いて評価済みなので、以下では震源時間関数TAFの予測精度の評価をCCCを用いて行う。震源時間関数TAFとした場合の二つの余震グループのCCCは、震源時間関数SSFと同じ特徴を示した。目視による二つの震源時間関数のCCCの差異を確認するのはむつかしい。そこで、対応する二つのCCCの比を求め、定量的に予測精度の差を調べた。比は3つのどの遮断周波数でも1付近に集中していた。各観測点において余震に関する平均値はほぼ1であった。この結果は、二つの震源時間関数の予測精度は同じであること示しており、予測精度の違いにより震源時間関数を選択することはむつかしいことを意味する。 4.まとめ この研究では以下の二つの結論が得られた
1.予測のための高周波EGTDは推定可能である。但し、予測精度の悪い余震の置き換えや削除により精度向上が可能である。
2.予測精度の比較により既存震源時間関数から予測精度の高い震源関数を選択することはむつかしい。