[S15] AM-2

[S15-07] 階層パッチモデルが生成する断層破壊プロセスのスケーリング特性

*後藤 浩之¹ (1. 京都大学)

地震ハザード評価や耐震設計において，破壊開始点やすべり分布等の地震シナリオを具体的に設定した断層破壊プロセスのモデル化が行われている．近年，断層破壊プロセスのモデル化に動力学モデルを採用する研究も進められているが，本研究ではIde and Aochi(2005)による滑り弱化距離の階層構造を持つパッチが断層にランダムに配置されるモデルによる方法に着目する．階層パッチモデルはGR則を自然に表現できることから，自然地震の物理と矛盾しないシンプルなモデルとして興味深い．一方で，階層パッチモデルがどのような断層破壊プロセスを生成するかは，十分に調べられていなかった．本研究では，滑り弱化距離の階層パッチモデルを用いた動力学モデルにおいて生成される破壊プロセスについて，特にスケーリングの観点から議論した．

地震発生層を考慮した半無限媒質中の垂直横ずれ断層を対象として数値解析シミュレーションを行い，多数の断層破壊プロセスを生成する．生成された断層破壊プロセスの震源スペクトルは概ねω-2モデルに従う．しかし，自由表面と地震発生層を考慮すると，震源スペクトルはコーナー周波数付近で過小評価される傾向にある．この形状は，二重コーナー周波数の震源スペクトルモデル（JA19_2モデル）によく一致する．また，生成された破壊プロセスの断層長さとマグニチュードの関係は，Leonard(2010)のモデルに整合する．このモデルは，M5程度を超える地震において断層幅が断層長さの2/3乗に比例することを主張するものであるが，本研究で生成された断層破壊プロセスも同様の傾向を示した．等方ランダムに円形のパッチを配置した異方性のないモデルであるため，地震発生層内部に破壊が留まるような規模の地震では断層幅は断層長さにほぼ比例する．このため，本研究で示される断層長さとマグニチュードの関係は，地震発生層の存在により実現したものと解釈できる．