13:30 〜 13:45
[S15-11] 2023年トルコ南東部で発生した地表断層を伴う地震による強震動特性
1.はじめに
2023年2月6日にトルコ共和国南東部を震源とするM7.8およびM7.5の地震が続けて発生し,それぞれ東アナトリア断層南西部およびチャルダク断層に沿った地表地震断層が報告されている。トルコ北東部では1999年にKocaeli地震(M7.6)が発生して地表地震断層が確認されたが,その現地調査において断層変位による建物被害のごく近傍で大きな地震動が想定されない建物も観察された。また,Somerville (2003)は既往のスペクトル距離減衰式と周辺の観測記録を比較し,平均よりも地震動が小さかったことを指摘している。今回の地震でも同様の現象が見られるのか,トルコ共和国内務省災害緊急事態対策庁(AFAD)が公開している強震観測データを用いて解析を試みたので報告する。
2.解析の概要
公開地震記録から震源距離で150km以内のものを用い,アメリカ地質調査所(USGS)のFinite Faultモデルから断層最短距離を求め,Abrahamson and Silva (2008)のスペクトル距離減衰式と比較する。その際,地盤条件としてAVS30が得られていない,あるいは350m/sよりも小さいサイトは用いないこととした。さらに,地震の全体を捉えていない記録や異常が見られる記録は割愛した。その結果,断層最短距離100km以内において,M7.8の最初の地震について41点,M7.5の地震については18点の記録が抽出された。Abrahamson and Silva (2008)の適用にあたっては,横ずれの本震,また上盤効果を考慮しない,などとしてパラメータを設定した。
3.解析結果
結果を図に示す。左がM7.8,右がM7.5の場合である。細線が各点におけるAbrahamson and Silva (2008)に対するスペクトル比,太線が平均を示す。M7.8は平均が全周期で1を上回っているが,M7.5は周期0.3から2秒の帯域で平均を下回る結果となった。M7.8では断層に沿って多くの記録が得られており,特に破壊進行によって揺れが大きくなった領域での記録が多い。一方で,地表地震断層ごく近傍で建物被害が生じていないと見られる破壊開始点近傍での記録が得られていない影響が懸念される。M7.5は逆に断層線に沿った記録が少ないことが影響していることも考えられる。
4.おわりに
現時点では暫定結果であるが,建物被害(断層変位によるものと強震動によるもの)との関連,AVS30が得られていない地点の地盤状況など,現地調査の成果を参照することにより,強震動と被害の実態について検討を進めたい。
参考文献
Somerville, P. G., Phys. Earth Planet. Int., 137, 201–212, 2003.
Abrahamson, N. A. and Silva, W. J., Earthquake Spectra, 241, 67-97, 2008.
2023年2月6日にトルコ共和国南東部を震源とするM7.8およびM7.5の地震が続けて発生し,それぞれ東アナトリア断層南西部およびチャルダク断層に沿った地表地震断層が報告されている。トルコ北東部では1999年にKocaeli地震(M7.6)が発生して地表地震断層が確認されたが,その現地調査において断層変位による建物被害のごく近傍で大きな地震動が想定されない建物も観察された。また,Somerville (2003)は既往のスペクトル距離減衰式と周辺の観測記録を比較し,平均よりも地震動が小さかったことを指摘している。今回の地震でも同様の現象が見られるのか,トルコ共和国内務省災害緊急事態対策庁(AFAD)が公開している強震観測データを用いて解析を試みたので報告する。
2.解析の概要
公開地震記録から震源距離で150km以内のものを用い,アメリカ地質調査所(USGS)のFinite Faultモデルから断層最短距離を求め,Abrahamson and Silva (2008)のスペクトル距離減衰式と比較する。その際,地盤条件としてAVS30が得られていない,あるいは350m/sよりも小さいサイトは用いないこととした。さらに,地震の全体を捉えていない記録や異常が見られる記録は割愛した。その結果,断層最短距離100km以内において,M7.8の最初の地震について41点,M7.5の地震については18点の記録が抽出された。Abrahamson and Silva (2008)の適用にあたっては,横ずれの本震,また上盤効果を考慮しない,などとしてパラメータを設定した。
3.解析結果
結果を図に示す。左がM7.8,右がM7.5の場合である。細線が各点におけるAbrahamson and Silva (2008)に対するスペクトル比,太線が平均を示す。M7.8は平均が全周期で1を上回っているが,M7.5は周期0.3から2秒の帯域で平均を下回る結果となった。M7.8では断層に沿って多くの記録が得られており,特に破壊進行によって揺れが大きくなった領域での記録が多い。一方で,地表地震断層ごく近傍で建物被害が生じていないと見られる破壊開始点近傍での記録が得られていない影響が懸念される。M7.5は逆に断層線に沿った記録が少ないことが影響していることも考えられる。
4.おわりに
現時点では暫定結果であるが,建物被害(断層変位によるものと強震動によるもの)との関連,AVS30が得られていない地点の地盤状況など,現地調査の成果を参照することにより,強震動と被害の実態について検討を進めたい。
参考文献
Somerville, P. G., Phys. Earth Planet. Int., 137, 201–212, 2003.
Abrahamson, N. A. and Silva, W. J., Earthquake Spectra, 241, 67-97, 2008.