2:00 PM - 2:15 PM
[S15-13] SIMULATION OF THE NEAR-FAULT RECORDS OF THE 2023 KAHRAMANMARAS, TURKEY EARTHQUAKE (MW7.7) BASED ON A CHARACTERISZED FAULT MODEL
2023年2月6日4時17分(現地時間)にトルコのナルリ-パザルジュク断層(以下,NPF)を発震断層とし,東アナトリア断層帯(以下,EAF)に破壊が乗り移りMW7.7(トルコ首相府災害緊急事態対策庁,以下,AFAD)の地震(以下,MW7.7地震)が発生し,地表地震断層近傍で貴重な多数の強震観測記録が得られた。さらに引き続いて,同日13時24分(現地時間)にチャルダック断層でMW7.6(AFAD)の地震(以下,MW7.6地震)が発生した。両地震では大規模な地表地震断層が確認されており,相対変位でMW7.7地震では最大約6.6m,MW7.6地震では最大約7.5mの地表変位であった(CEDA[2023])。
MW7.7地震やMW7.6地震については既に強震波形,遠地地震波形やハイレートGPS記録による永久変位をターゲットとした震源インバージョン解析が多数行われており,種々の不均質すべり分布を有する断層モデルが多数提案されている(例えば, USGS[2023], Melgar et al.[SEISMICA, 2023], Mai et al.[TSR, 2023], Jia et al.[SCIENCE, 2023]等)。一方で,地震本部(2020)の強震動予測では,大きなすべり量や応力降下量を持つSMGA(Strong Motion Generation Area, 強震動生成域)とそれ以外の背景領域からなる特性化震源モデルを用いるが,MW7.7地震やMW7.6地震について特性化震源モデルに基づく地震動評価は未検討である。
2016年熊本地震(MW7.0)では地表地震断層が確認されるとともに,地表地震断層近傍で強震観測記録が得られたことから,地震発生層内だけではなく地震発生層以浅をモデル化した特性化震源モデルの検討が行われている(例えば, 貴堂・永野[AIJ, 2019],田中・他[AIJ, 2018], Irikura et al.[PAG, 2019]等)。MW7.7地震でも主に断層南西部(クルクハン~ターコル)において,地表地震断層に沿って約5km以内の近傍で多数の強震記録が得られている。このような断層近傍の強震記録を再現可能な特性化震源のモデル化は,M7~M8クラスの強震動予測を目的とした地震発生層以浅を含む震源の特性化を検討する上で重要と考える。 今回EAFで発生したMW7.7の地震では、断層南西部において,地表断層に沿って多数の強震記録が世界で初めて得られたことから,ここでは、MW7.7地震に対して貴堂・永野[AIJ, 2019]の考え方を適用し、SMGA及び背景領域に中村・宮武のすべり速度時間関数[地震2, 2000],LMGA (Long-period Motion Generation Area, 長周期地震動生成域)(Irikura et al.[PAG, 2019])には二等辺三角形のすべり速度時間関数を与えた特性化震源モデルによる地表地震断層近傍の強震観測記録の再現解析を行い,地震発生層以浅を含めたモデル化の適用性を検討する。
地震動計算は速度波形だけでなく,永久変位の再現も目的とするため理論的手法を選択する。水平成層地盤構造を対象として断層近傍の永久変位も評価可能な薄層法(貴堂・他[JAEE,2020])により地震動を計算する。理論地震動計算の有効振動数の上限は1.0Hzまでとした。再現解析の対象とする観測点は発震断層のNPFとEAFの南西側の地表地震断層近傍に位置する計18観測点とした。各観測点における水平成層地盤構造はGuvercin et al.[GJI,2023]のS波,P波速度構造を使用した。
既往の震源インバージョン解析[例えば,USGS(2023)]ではNPFとEAFの交点付近を中心に北東側と南西側に大きなすべり量が求まっており,その最大すべり量は10m前後となっている。地表地震断層分布や震源インバージョン解析のすべり分布を参考に地震発生層内のSMGAと地震発生層以浅のLMGAを設定する。SMGAやLMGAのすべり量,すべり速度時間関数の形状等は観測記録の再現性をみながら,フォワードモデリングにより推定する。
MW7.7地震の特性化震源モデルの巨視的断層面は断層モデルの上端が地表に到達するように設定した。特に断層近傍の観測点が,断層モデルの地表トレースに対して上盤側か下盤側かが重要であるため,複数のセグメントを設定する際,可能な限りUSGSの地表地震断層分布に沿うように留意した。傾斜角はUSGSの震源インバージョン解析に基づく不均質震源モデルを参考に設定した。対象観測点及び特性化震源モデルの地表投影図を図1に,特性化震源モデルを図2に示す。SMGAとLMGAのすべり量は3~7mとなっている。強震観測記録を良好に再現するために断層モデルはNPFの初期破壊開始点を含めて計8個の破壊開始点から同心円状に破壊が伝播すると仮定するMulti hypocenter型モデルを採用し,それぞれ破壊遅延時間と破壊伝播速度(3.1km/s~3.2km/s)を試行錯誤的に設定した。
断層モデルのすべり速度時間関数の設定も試行錯誤的ではあるが,断層近傍の強震観測記録を良好に再現することができた。代表例を図3に示す。また,断層モデルに基づいて永久変位の面的分布を試算したが,大局的な傾向はAn et al.[remote sensing, 2023]と整合的な結果となることを確認した。今後は解析結果の理論地震動の分析を通じ,長大断層近傍の強震動についての解釈を進める。
謝辞:AFADの強震記録及びUSGSの地表地震断層分布のデータを利用させていただきました。本研究を進めるにあたり,大崎総合研究所の山崎文雄先生,小川幸雄博士,津田健一博士,ドルジャパラム・サロル博士,吉田昌平博士には多くのご助言をいただきました。理論地震動計算は東京理科大学永野研究室のWSを利用させていただきました。図の作成には一部GMTを利用させていただきました。記して謝意を表します。
MW7.7地震やMW7.6地震については既に強震波形,遠地地震波形やハイレートGPS記録による永久変位をターゲットとした震源インバージョン解析が多数行われており,種々の不均質すべり分布を有する断層モデルが多数提案されている(例えば, USGS[2023], Melgar et al.[SEISMICA, 2023], Mai et al.[TSR, 2023], Jia et al.[SCIENCE, 2023]等)。一方で,地震本部(2020)の強震動予測では,大きなすべり量や応力降下量を持つSMGA(Strong Motion Generation Area, 強震動生成域)とそれ以外の背景領域からなる特性化震源モデルを用いるが,MW7.7地震やMW7.6地震について特性化震源モデルに基づく地震動評価は未検討である。
2016年熊本地震(MW7.0)では地表地震断層が確認されるとともに,地表地震断層近傍で強震観測記録が得られたことから,地震発生層内だけではなく地震発生層以浅をモデル化した特性化震源モデルの検討が行われている(例えば, 貴堂・永野[AIJ, 2019],田中・他[AIJ, 2018], Irikura et al.[PAG, 2019]等)。MW7.7地震でも主に断層南西部(クルクハン~ターコル)において,地表地震断層に沿って約5km以内の近傍で多数の強震記録が得られている。このような断層近傍の強震記録を再現可能な特性化震源のモデル化は,M7~M8クラスの強震動予測を目的とした地震発生層以浅を含む震源の特性化を検討する上で重要と考える。 今回EAFで発生したMW7.7の地震では、断層南西部において,地表断層に沿って多数の強震記録が世界で初めて得られたことから,ここでは、MW7.7地震に対して貴堂・永野[AIJ, 2019]の考え方を適用し、SMGA及び背景領域に中村・宮武のすべり速度時間関数[地震2, 2000],LMGA (Long-period Motion Generation Area, 長周期地震動生成域)(Irikura et al.[PAG, 2019])には二等辺三角形のすべり速度時間関数を与えた特性化震源モデルによる地表地震断層近傍の強震観測記録の再現解析を行い,地震発生層以浅を含めたモデル化の適用性を検討する。
地震動計算は速度波形だけでなく,永久変位の再現も目的とするため理論的手法を選択する。水平成層地盤構造を対象として断層近傍の永久変位も評価可能な薄層法(貴堂・他[JAEE,2020])により地震動を計算する。理論地震動計算の有効振動数の上限は1.0Hzまでとした。再現解析の対象とする観測点は発震断層のNPFとEAFの南西側の地表地震断層近傍に位置する計18観測点とした。各観測点における水平成層地盤構造はGuvercin et al.[GJI,2023]のS波,P波速度構造を使用した。
既往の震源インバージョン解析[例えば,USGS(2023)]ではNPFとEAFの交点付近を中心に北東側と南西側に大きなすべり量が求まっており,その最大すべり量は10m前後となっている。地表地震断層分布や震源インバージョン解析のすべり分布を参考に地震発生層内のSMGAと地震発生層以浅のLMGAを設定する。SMGAやLMGAのすべり量,すべり速度時間関数の形状等は観測記録の再現性をみながら,フォワードモデリングにより推定する。
MW7.7地震の特性化震源モデルの巨視的断層面は断層モデルの上端が地表に到達するように設定した。特に断層近傍の観測点が,断層モデルの地表トレースに対して上盤側か下盤側かが重要であるため,複数のセグメントを設定する際,可能な限りUSGSの地表地震断層分布に沿うように留意した。傾斜角はUSGSの震源インバージョン解析に基づく不均質震源モデルを参考に設定した。対象観測点及び特性化震源モデルの地表投影図を図1に,特性化震源モデルを図2に示す。SMGAとLMGAのすべり量は3~7mとなっている。強震観測記録を良好に再現するために断層モデルはNPFの初期破壊開始点を含めて計8個の破壊開始点から同心円状に破壊が伝播すると仮定するMulti hypocenter型モデルを採用し,それぞれ破壊遅延時間と破壊伝播速度(3.1km/s~3.2km/s)を試行錯誤的に設定した。
断層モデルのすべり速度時間関数の設定も試行錯誤的ではあるが,断層近傍の強震観測記録を良好に再現することができた。代表例を図3に示す。また,断層モデルに基づいて永久変位の面的分布を試算したが,大局的な傾向はAn et al.[remote sensing, 2023]と整合的な結果となることを確認した。今後は解析結果の理論地震動の分析を通じ,長大断層近傍の強震動についての解釈を進める。
謝辞:AFADの強震記録及びUSGSの地表地震断層分布のデータを利用させていただきました。本研究を進めるにあたり,大崎総合研究所の山崎文雄先生,小川幸雄博士,津田健一博士,ドルジャパラム・サロル博士,吉田昌平博士には多くのご助言をいただきました。理論地震動計算は東京理科大学永野研究室のWSを利用させていただきました。図の作成には一部GMTを利用させていただきました。記して謝意を表します。