2:15 PM - 2:30 PM
[S15-14] Strong Motion Simulation Focused on Rupture Velocity of the 2023 Turkey Subsequent Earthquake (Mw7.6) Based on Characterized Fault Model
2023年2月6日10時24分(UTC)頃にトルコ南東部を震源としてMw7.6の地震(エルビスタン地震)が発生した。この地震は2023年2月6日1時17分(UTC)頃に発生した本震(Mw7.7)の後発地震とされている地震であり,本震・後発地震ともに広域で地表地震断層が確認された。本震では東アナトリア断層沿いの南西部で多数の強震記録が得られたものの,後発地震においては断層極近傍での記録は殆ど得られていない。また,Melger et al. (2023)によれば本震では破壊伝播速度が3.2 km/s程度であるが,後発地震においてはチャルダック断層西側で破壊伝播速度がS波速度を大きく上回るスーパーシアとなっていた可能性があるとしている。過去の地震においてもスーパーシアが確認された地震は少なく,そのときの断層近傍等における地震動特性や建物被害との関係を議論することは重要である。本研究では,エルビスタン地震時に得られた断層近傍を含む強震記録を整理するとともに,チャルダック断層の特性化震源断層モデルを構築し,理論地震動計算により断層近傍の観測記録の再現を試みた。この際,震源位置を境にチャルダック断層西側の破壊伝播速度を変化させ,強震記録との対応からチャルダック断層西側で解釈されているスーパーシアと断層近傍地震動との関係について基礎的な検討を行う。
エルビスタン地震の断層活動の特徴としては,震源付近での大きなすべり量や,幅20km,長さ80kmに及ぶ断層のすべりが挙げられる。USGSの震源インバージョン解析によれば,震源付近の最大すべり量は11.5mであり,長大断層のすべりは平均して5, 6m程にもなる。エルビスタン地震で得られた断層極近傍の強震記録は4612のみであるが,比較的断層近傍に位置する0129, 3802, 4406, 4611を加えて速度軌跡の卓越方向について確認した。解析でサブシアとなっている断層東側では断層直交方向に速度パルスが卓越する傾向が見られたが,スーパーシアである断層西側では速度パルスの卓越方向は不明瞭であった。震央からスーパーシア側への走行に沿った速度ペーストアップからは,パルス波が伝播する様子が明瞭に確認できた。また, 4612の近傍では地表地震断層が確認されている。該当点については加速度の基線変化補正を行って残留変形を評価し,その値がGNSSの地表変位記録より大きく外れていないことを確認している。
次に特性化震源モデルを用いて,チャルダック断層による理論地震動を評価した。巨視的断層面は,断層モデル上端が極力USGSの地表地震断層に沿うようにして設定した。震源以西の破壊伝播速度の違いによる比較を行うため,チャルダック断層東側に該当するセグメントについては震源を境に2枚のセグメントで構成した。破壊伝播速度Vrについては,Melger et al. (2023)では断層西側ではVr=4.8 km/s,東側ではVr=2.8 km/sとなっている。今回は,震源より断層西側をスーパーシアとなるVr=4.8 km/s の場合とサブシアとなるVr=2.8 km/sの場合について検討を行い,断層東側は両ケースともVr=2.8 km/s で統一した。地表地震断層が確認されている地域の浅部はLMGAとして設定し,地表地震断層が確認されていない浅部において断層すべりは発生しないものとした。SMGAについては既往の震源インバージョン解析のすべり分布を参考に設定した。理論地震動計算には断層近傍の地震動評価が可能な三次元薄層要素法を用い,最大振動数は1.0 Hzとした。水平成層地盤構造はGuvercin et al.(2023)を参照し,各断層のすべり速度時間関数は波形の再現性を見ながら設定した。試行錯誤的な特性化震源モデル,すべり速度時間関数の与え方ではあるものの,理論地震動計算に基づく地震動シミュレーション解析によりエルビスタン地震時の強震記録の再現を試みると同時に,破壊伝播速度が断層近傍の地震動特性に与える影響を検討した。
謝 辞
AFAD,ESMによる強震記録,USGSの地表地震断層分布のデータを利用させていただきました。一部図の作成にはGMT4を利用させて頂きました。ここに記して謝意を表します。
エルビスタン地震の断層活動の特徴としては,震源付近での大きなすべり量や,幅20km,長さ80kmに及ぶ断層のすべりが挙げられる。USGSの震源インバージョン解析によれば,震源付近の最大すべり量は11.5mであり,長大断層のすべりは平均して5, 6m程にもなる。エルビスタン地震で得られた断層極近傍の強震記録は4612のみであるが,比較的断層近傍に位置する0129, 3802, 4406, 4611を加えて速度軌跡の卓越方向について確認した。解析でサブシアとなっている断層東側では断層直交方向に速度パルスが卓越する傾向が見られたが,スーパーシアである断層西側では速度パルスの卓越方向は不明瞭であった。震央からスーパーシア側への走行に沿った速度ペーストアップからは,パルス波が伝播する様子が明瞭に確認できた。また, 4612の近傍では地表地震断層が確認されている。該当点については加速度の基線変化補正を行って残留変形を評価し,その値がGNSSの地表変位記録より大きく外れていないことを確認している。
次に特性化震源モデルを用いて,チャルダック断層による理論地震動を評価した。巨視的断層面は,断層モデル上端が極力USGSの地表地震断層に沿うようにして設定した。震源以西の破壊伝播速度の違いによる比較を行うため,チャルダック断層東側に該当するセグメントについては震源を境に2枚のセグメントで構成した。破壊伝播速度Vrについては,Melger et al. (2023)では断層西側ではVr=4.8 km/s,東側ではVr=2.8 km/sとなっている。今回は,震源より断層西側をスーパーシアとなるVr=4.8 km/s の場合とサブシアとなるVr=2.8 km/sの場合について検討を行い,断層東側は両ケースともVr=2.8 km/s で統一した。地表地震断層が確認されている地域の浅部はLMGAとして設定し,地表地震断層が確認されていない浅部において断層すべりは発生しないものとした。SMGAについては既往の震源インバージョン解析のすべり分布を参考に設定した。理論地震動計算には断層近傍の地震動評価が可能な三次元薄層要素法を用い,最大振動数は1.0 Hzとした。水平成層地盤構造はGuvercin et al.(2023)を参照し,各断層のすべり速度時間関数は波形の再現性を見ながら設定した。試行錯誤的な特性化震源モデル,すべり速度時間関数の与え方ではあるものの,理論地震動計算に基づく地震動シミュレーション解析によりエルビスタン地震時の強震記録の再現を試みると同時に,破壊伝播速度が断層近傍の地震動特性に与える影響を検討した。
謝 辞
AFAD,ESMによる強震記録,USGSの地表地震断層分布のデータを利用させていただきました。一部図の作成にはGMT4を利用させて頂きました。ここに記して謝意を表します。