[S15P-08] Long-period ground motion simulations in the western part of Shizuoka prefecture for large earthquakes in the Nankai trough (Part 2)
本研究では、南海トラフで繰り返し発生している大地震について、海域の3次元地下構造や海水層、海底地形を含む構造モデルを用いて、静岡県西部地方をターゲットにした長周期地震動のシミュレーションを実施した。静岡県西部は、牧之原台地から西方の遠州灘沿岸部で低地が続き、浜名湖から天竜川河口付近にかけて広がる浜松平野においては高さ100 m超の高層建築物が複数立地する。1944年東南海地震では、紀伊半島南部の破壊開始点から断層面上で破壊フロントが伝播する方向にあたり、また、それと平行して海洋堆積層がトラフ軸に沿って広がる方向に位置し、伝播経路上の堆積層で生成、増幅した表面波の伝播が予想される場所である。断層面上のすべり分布の不均質性が大きく破壊様式が多様な大地震の断層震源に対し、本研究では基準とする震源モデルから多数の派生的なモデルを構築、シミュレーションを実施し、モデルの不確実性による振幅のばらつきを含めた評価を行った。
観測点は、防災科学技術研究所KiK-net SZOH28(浜松市)を対象とし、波形合成で必要となるグリーン関数の計算では、Nakamura et al. (2012)による3次元差分法を用いた。地下構造については、J-SHIS(藤原・他, 2012)および仲西・他(2021)等のモデル、陸上および海底地形についてはGEBCOによる15秒メッシュデータを用いた。震源モデルについては、Murphy et al. (2016)による手法に倣い、基準とする断層震源モデルのすべり量分布を確率密度関数として、マルチスケールの円形クラックを確率密度関数に従って配置した派生的なすべり分布モデルを50個準備した。多数の震源モデルに対して波形合成を効率的に実施するため、本研究では相反定理を用いて総計算量を節減した。基準とするモデルとしては、前回発表(2022年度日本地震学会秋季大会)で用いたIchinose et al. (2003)およびKikuchi et al. (2003)に加え、本発表では内閣府(2012)によるモデルも用いた。各すべり分布モデルに対し、破壊伝播速度や破壊開始点などのパラメータを変えながら長周期帯(5秒以上)の波形振幅値を求め、速度波形の最大振幅値について数倍の違いが生じることを確認した。また、振幅値のばらつきは、断層直交成分で大きいことを確認した。複数の構造モデルを用いたシミュレーションも実施し、海水層の有無による振幅の明瞭な違いは見られず、震源に関わるパラメータと比べて注目周期帯においては海水層の影響は小さいと考えられる。なお、本研究は、科研費19H01982の助成を受けたものである。
観測点は、防災科学技術研究所KiK-net SZOH28(浜松市)を対象とし、波形合成で必要となるグリーン関数の計算では、Nakamura et al. (2012)による3次元差分法を用いた。地下構造については、J-SHIS(藤原・他, 2012)および仲西・他(2021)等のモデル、陸上および海底地形についてはGEBCOによる15秒メッシュデータを用いた。震源モデルについては、Murphy et al. (2016)による手法に倣い、基準とする断層震源モデルのすべり量分布を確率密度関数として、マルチスケールの円形クラックを確率密度関数に従って配置した派生的なすべり分布モデルを50個準備した。多数の震源モデルに対して波形合成を効率的に実施するため、本研究では相反定理を用いて総計算量を節減した。基準とするモデルとしては、前回発表(2022年度日本地震学会秋季大会)で用いたIchinose et al. (2003)およびKikuchi et al. (2003)に加え、本発表では内閣府(2012)によるモデルも用いた。各すべり分布モデルに対し、破壊伝播速度や破壊開始点などのパラメータを変えながら長周期帯(5秒以上)の波形振幅値を求め、速度波形の最大振幅値について数倍の違いが生じることを確認した。また、振幅値のばらつきは、断層直交成分で大きいことを確認した。複数の構造モデルを用いたシミュレーションも実施し、海水層の有無による振幅の明瞭な違いは見られず、震源に関わるパラメータと比べて注目周期帯においては海水層の影響は小さいと考えられる。なお、本研究は、科研費19H01982の助成を受けたものである。