[S15P-09] 南海トラフ沿いのプレート間地震を対象とした近地震源過程解析手法
南海トラフ沿いでプレート間大規模地震が発生した場合に破壊領域(地震すべり領域)を速やかに推定できるよう、近地震源過程解析の手法開発を進めている。
気象庁では、南海トラフ沿いのプレート境界でMW7.0以上の地震が発生した場合に速やかに南海トラフ臨時情報を発表することとしており(下山・他,2021)、このためリアルタイムで伝送される気象庁の地震観測網のデータから震源過程を得る手法を目指している。
南海トラフについては、海域の厚い堆積層が観測される地震波に大きな影響を与え(例えば Nakamura et al.,2015)、その影響を考慮した解析が必要である(例えば Takemura et al.,2018)。
そこで震源過程解析で用いるグリーン関数を3次元構造をもとに計算することとし、今般そのプロトタイプを作成した。概要は以下のとおり。
1.手法
(1) モデル設定
南海トラフから駿河トラフにかけての沈み込むフィリピン海プレート(PHS)の上面(プレート境界面)上に約1,300のグリッドを配置し、そのグリッドでの地震すべりの時系列(またはそれに対応したモーメントレート)を解析する。グリッドは水平面投影で緯度方向に0.1度、経度方向に0.125度ごとの配置となっている。
対象となるグリッドとその隣接グリッドとの間にできる三角形の面(多い場合4面)の法線ベクトルを求めてそれらの平均をとり、そのベクトルから対象グリッドの走向・傾斜角を設定している。すべり角については後述。
(2) 震源過程インバージョン
すべりの方向が各グリッドに与えたすべり角から±45度の範囲内に拘束される手法とし、観測波形と合成波形の差が最小となるよう非負最小二乗法で解く。すべりのグリッドが矩形平面断層上に配置した各小断層の中心であれば、例えば Ide et al.(1996)と同様の手法となる。
与えるすべり角は、南海トラフ付近でのPHSの移動方向を参考に、水平面投影で120度となるようにグリッドごとに設定している。
各グリッドと観測点間のグリーン関数は3次元構造を用いてあらかじめ計算している。構造にJIVSM(Koketsu et al.,2012)、計算にOpenSWPC(Maeda et al.,2017)を用いた。
グリッドごとの各すべり方向の総すべり量が空間的に滑らか、-45度と+45度の方向のすべりが同程度、という制約を課す。結果的に水平面投影で120度の方向のすべり量が空間的に滑らかという制約になる。
なお、制約の条件との間のハイパーパラメータについては試行錯誤して設定した。
2.検証
現在検証を進めているところであるが、予稿投稿時点で以下のような結果が得られている。
<昭和東南海タイプの地震の観測波形の合成>
南海トラフ沿いでの地震発生シミュレーション(Hirose et al.,2022)の中から昭和東南海タイプのすべりのシーケンスをもとに各グリッドでのすべりの過程を設定し、前述のグリーン関数を用いて、各観測点での観測波形を合成した。
<インバージョン解析>
上記を観測波形として、作成したプロトタイプでインバージョンを行った。ただし、インバージョンで使用するグリッドについては、南海トラフから駿河トラフにかけての広範囲だがグリッドの総数が概ね100となるように間引いた。結果、水平面投影でグリッド間隔が3倍程度と粗くなっている。
また、各グリッドで使用できるすべりの基底関数の個数がプログラムの制約上最大で25となっているため、観測波形を合成するのに用いた基底関数よりも継続時間が長いものをインバージョンでは使っている。
<結果>
九州から関東にかけての観測点を用いた解析で、すべり領域が潮岬の東側に限定され(昭和東南海タイプ地震のすべり領域の広がりに対応)、西側ではすべっていないという結果が得られた。
気象庁では、南海トラフ沿いのプレート境界でMW7.0以上の地震が発生した場合に速やかに南海トラフ臨時情報を発表することとしており(下山・他,2021)、このためリアルタイムで伝送される気象庁の地震観測網のデータから震源過程を得る手法を目指している。
南海トラフについては、海域の厚い堆積層が観測される地震波に大きな影響を与え(例えば Nakamura et al.,2015)、その影響を考慮した解析が必要である(例えば Takemura et al.,2018)。
そこで震源過程解析で用いるグリーン関数を3次元構造をもとに計算することとし、今般そのプロトタイプを作成した。概要は以下のとおり。
1.手法
(1) モデル設定
南海トラフから駿河トラフにかけての沈み込むフィリピン海プレート(PHS)の上面(プレート境界面)上に約1,300のグリッドを配置し、そのグリッドでの地震すべりの時系列(またはそれに対応したモーメントレート)を解析する。グリッドは水平面投影で緯度方向に0.1度、経度方向に0.125度ごとの配置となっている。
対象となるグリッドとその隣接グリッドとの間にできる三角形の面(多い場合4面)の法線ベクトルを求めてそれらの平均をとり、そのベクトルから対象グリッドの走向・傾斜角を設定している。すべり角については後述。
(2) 震源過程インバージョン
すべりの方向が各グリッドに与えたすべり角から±45度の範囲内に拘束される手法とし、観測波形と合成波形の差が最小となるよう非負最小二乗法で解く。すべりのグリッドが矩形平面断層上に配置した各小断層の中心であれば、例えば Ide et al.(1996)と同様の手法となる。
与えるすべり角は、南海トラフ付近でのPHSの移動方向を参考に、水平面投影で120度となるようにグリッドごとに設定している。
各グリッドと観測点間のグリーン関数は3次元構造を用いてあらかじめ計算している。構造にJIVSM(Koketsu et al.,2012)、計算にOpenSWPC(Maeda et al.,2017)を用いた。
グリッドごとの各すべり方向の総すべり量が空間的に滑らか、-45度と+45度の方向のすべりが同程度、という制約を課す。結果的に水平面投影で120度の方向のすべり量が空間的に滑らかという制約になる。
なお、制約の条件との間のハイパーパラメータについては試行錯誤して設定した。
2.検証
現在検証を進めているところであるが、予稿投稿時点で以下のような結果が得られている。
<昭和東南海タイプの地震の観測波形の合成>
南海トラフ沿いでの地震発生シミュレーション(Hirose et al.,2022)の中から昭和東南海タイプのすべりのシーケンスをもとに各グリッドでのすべりの過程を設定し、前述のグリーン関数を用いて、各観測点での観測波形を合成した。
<インバージョン解析>
上記を観測波形として、作成したプロトタイプでインバージョンを行った。ただし、インバージョンで使用するグリッドについては、南海トラフから駿河トラフにかけての広範囲だがグリッドの総数が概ね100となるように間引いた。結果、水平面投影でグリッド間隔が3倍程度と粗くなっている。
また、各グリッドで使用できるすべりの基底関数の個数がプログラムの制約上最大で25となっているため、観測波形を合成するのに用いた基底関数よりも継続時間が長いものをインバージョンでは使っている。
<結果>
九州から関東にかけての観測点を用いた解析で、すべり領域が潮岬の東側に限定され(昭和東南海タイプ地震のすべり領域の広がりに対応)、西側ではすべっていないという結果が得られた。