[S15P-11] 機械学習から推定した伝播方向を用いた地震動即時予測:距離減衰を導入したPLUM法の改善
巨大地震や連発地震が発生した場合においても安定して地震動即時予測を行うため,近年では震源推定をせずに観測された揺れから将来の揺れを直接予測する手法が提案されてきた(例えば,Hoshiba and Aoki, 2015; Kodera et al., 2018).これらの手法では,各地点で観測された波の振幅(リアルタイム震度;功刀・他,2013)を入力として波動伝播の実況把握・将来予測を行っているが,振幅のみならず,伝播方向といった他の物理量も合わせて観測値として用いることができれば,より予測パフォーマンスが向上すると期待される.本研究では,観測リアルタイム震度および機械学習から推定した伝播方向を入力として,ALPHA法(距離減衰を導入したPLUM法;Kodera, 2019)の改善を検討した.
ALPHA法は,短距離の地点しか予測できないというPLUM法の技術的課題に対処するために開発された手法である.PLUM法は観測リアルタイム震度が半径30km以内であれば減衰せずに伝わると仮定して予測するのに対し,ALPHA法では各観測点において付近(~45km以内)の観測リアルタイム震度の分布から距離減衰を推定し,その距離減衰を用いて遠く(~300km以内)の地点の震度を予測する(距離減衰は,各観測点直下に置いた点震源の重ね合わせで表現).現在ALPHA法が距離減衰を推定する際には,基準観測点から見て最も観測震度が小さい方向を伝播方向と見なしたうえで点震源モデルの距離減衰を当てはめて計算しているが,これを機械学習から推定した伝播方向に置き換える.伝播方向にある観測点のうち,観測震度が大きい観測点(但し基準観測点よりも観測震度が大きい観測点は除外)を用いて距離減衰の当てはめを行う.これにより,従来のALPHA法に比べてより早く正確な距離減衰が推定できると期待される.各観測点における伝播方向の推定は,3成分の加速度波形を入力とした深層学習モデルを用いる(小寺,地震学会2022).
KiK-netひたちなか(IBRH18)を基準観測点として2018年2月~2022年7月の地震に対して手法の検証を行ったところ,推定された伝播方向に観測点が十分にある場合においては,正確な距離減衰が従来のALPHA法よりも早く求められるケースがあった.一方で,伝播方向の推定精度が悪いために距離減衰が正しく求められず予測震度を過大評価してしまう等の事例も見られた.今後は伝播方向の推定精度を高めるとともに,伝播方向の推定精度が悪い場合の予測計算を改善する予定である.
ALPHA法は,短距離の地点しか予測できないというPLUM法の技術的課題に対処するために開発された手法である.PLUM法は観測リアルタイム震度が半径30km以内であれば減衰せずに伝わると仮定して予測するのに対し,ALPHA法では各観測点において付近(~45km以内)の観測リアルタイム震度の分布から距離減衰を推定し,その距離減衰を用いて遠く(~300km以内)の地点の震度を予測する(距離減衰は,各観測点直下に置いた点震源の重ね合わせで表現).現在ALPHA法が距離減衰を推定する際には,基準観測点から見て最も観測震度が小さい方向を伝播方向と見なしたうえで点震源モデルの距離減衰を当てはめて計算しているが,これを機械学習から推定した伝播方向に置き換える.伝播方向にある観測点のうち,観測震度が大きい観測点(但し基準観測点よりも観測震度が大きい観測点は除外)を用いて距離減衰の当てはめを行う.これにより,従来のALPHA法に比べてより早く正確な距離減衰が推定できると期待される.各観測点における伝播方向の推定は,3成分の加速度波形を入力とした深層学習モデルを用いる(小寺,地震学会2022).
KiK-netひたちなか(IBRH18)を基準観測点として2018年2月~2022年7月の地震に対して手法の検証を行ったところ,推定された伝播方向に観測点が十分にある場合においては,正確な距離減衰が従来のALPHA法よりも早く求められるケースがあった.一方で,伝播方向の推定精度が悪いために距離減衰が正しく求められず予測震度を過大評価してしまう等の事例も見られた.今後は伝播方向の推定精度を高めるとともに,伝播方向の推定精度が悪い場合の予測計算を改善する予定である.