[S15P-15] ベイジアンニューラルネットワークによる地震動予測式の構築
強震記録の回帰分析により、少数の説明変数から強震動指標を推定する地震動予測式が作成され、確率論的地震ハザード評価に活用されている。予測モデルの不確実性は、モデル設計や使用するデータに起因するepistemic uncertainty(認識論的不確実性)と地震現象の多様性に起因するaleatory uncertainty(偶然的不確実性)に分類され、これらを適切に定量化することが重要である。地震動予測式においては、ガウス過程を用いた不確実性評価が標準的方法として確立しつつある(Abrahamson et al., 2019)。 2000年代よりニューラルネットワーク(neural network, NN)を用いたデータ駆動型の地震動予測式が複数提案されているが(e.g. Derras et al., 2012; Okazaki et al., 2021)、不確実性評価は充分に研究されていない。そこで本研究では、ハミルトニアンモンテカルロ法(Hamiltonian Monte Carlo, HMC)を用いたベイジアンニューラルネットワーク(Bayesian neural network, BNN)による地震動予測式の構築を検討した。
解析にはK-NET・KiK-net強震動フラットファイルデータ(森川ほか2023)を元に日本周辺の233地殻内地震、1209観測点の35,031記録を使用した。地震のマグニチュード・震源深さ・断層最短距離・VS30を入力変数とし、最大加速度・加速度応答スペクトル(周期0.05, 0.5, 5秒)を出力変数とするエルゴード的予測式を構成した。まず確定的NNを交差検証により訓練し、HMCの事前分布(観測誤差・モデルパラメタの事前分散)とサンプリング初期値を得た。これを元にHMCを実行し100,000サンプルを生成した。
HMCにより得られた予測分布の中央値は既往研究と整合的であった。予測値の不確実性は全体的に小さいが、大地震・近距離において増加する傾向が見られた。観測記録に含まれない巨大地震(M8)の予測は不確実性が極めて大きく、データ駆動型モデルのため外挿能力が無いことが確認された。目的変数どうしの相関を調べると、スペクトル周期が近い変数ほど相関が高い傾向が見られた。さらにBNNにおけるepistemic/aleatory uncertainty の取扱いや、HMCの超パラメタ(leapfrog積分のステップ幅・回数)調整についても議論する。
解析にはK-NET・KiK-net強震動フラットファイルデータ(森川ほか2023)を元に日本周辺の233地殻内地震、1209観測点の35,031記録を使用した。地震のマグニチュード・震源深さ・断層最短距離・VS30を入力変数とし、最大加速度・加速度応答スペクトル(周期0.05, 0.5, 5秒)を出力変数とするエルゴード的予測式を構成した。まず確定的NNを交差検証により訓練し、HMCの事前分布(観測誤差・モデルパラメタの事前分散)とサンプリング初期値を得た。これを元にHMCを実行し100,000サンプルを生成した。
HMCにより得られた予測分布の中央値は既往研究と整合的であった。予測値の不確実性は全体的に小さいが、大地震・近距離において増加する傾向が見られた。観測記録に含まれない巨大地震(M8)の予測は不確実性が極めて大きく、データ駆動型モデルのため外挿能力が無いことが確認された。目的変数どうしの相関を調べると、スペクトル周期が近い変数ほど相関が高い傾向が見られた。さらにBNNにおけるepistemic/aleatory uncertainty の取扱いや、HMCの超パラメタ(leapfrog積分のステップ幅・回数)調整についても議論する。