[S15P] PM-P

[S15P-16] 統計的グリーン関数法と地震動予測式の融合による遠距離補正

*前田 宜浩¹、中村 洋光¹、藤原 広行¹、赤木 翔²、関 航佑² (1. 防災科学技術研究所、2. 三菱電機ソフトウエア株式会社)

広帯域地震動の評価では，統計的グリーン関数法による短周期成分と，差分法等により算出された長周期成分を組み合わせるハイブリッド合成法が用いられている．地震調査研究推進本部の「震源断層を特定した地震の強震動予測手法 (「レシピ」) 」に準じたハイブリッド合成法による広帯域地震動評価を震源距離70㎞以上の遠方まで適用すると，地震動予測式と比較して周期1秒以下の振幅が過小となることが指摘されている（Iwaki et al.,2016）．これは，震源距離が「レシピ」の適用範囲を超えていることが要因であるが，遠距離における計算波形に対して地震動予測式と整合するような補正を施すことができれば，遠距離での計算波形を活用できる可能性がある．遠距離まで適用範囲を拡張する手法として，統計的グリーン関数法の距離減衰特性を修正するという抜本的な対応も考えられるが，本研究ではハイブリッド合成法（あるいは，統計的グリーン関数法）による計算波形に対して短周期成分を地震動予測式による予測値に適合させる補正手法を検討する．
　本研究では地点毎に地震動計算波形と地震動予測式を個別に整合させるのではなく，面的に計算された多数の時刻歴波形を対象として，特定の距離範囲に含まれる計算記録の平均値を地震動予測式による予測値と整合させる方法を採用する．これにより，計算記録の方位特性や地域性等の面的な特徴が保持されること目指す．また，地震動予測式との整合性は，フーリエスペクトルや応答スペクトルなど地震動の周期特性を表す指標に拠ることとし，本研究ではMorikawa & Fujiwara (2013) の地震動予測式による加速度応答スペクトルとの適合を図ることとした．具体的な手順としては，①特定の距離範囲に含まれる計算波形の応答スペクトルの平均と，地震動予測式による応答スペクトルの平均との比を求める．②①で得られたスペクトル比を個々の計算波形のフーリエスペクトルに乗じ，それらをフーリエ逆変換することで補正波形を求める．③②で得られた補正波形の応答スペクトルの平均が地震動予測式による応答スペクトルに適合しているかを判断する．④適合しない場合は①から③を繰り返す．この際，適合条件は告示スペクトルへの適合波の作成手法を参考に設定した，発表では，計算記録への本手法の適用例や課題について述べる．
謝辞：本研究は，文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」の一環として行われたものです．記して御礼申し上げます．