11:30 AM - 11:45 AM
[S17-07] Examination of the Predictability of Tsunami Warning Cancellation based on Data Assimilation Approach
津波警報解除とは,特定の基準に基づいて,津波の脅威が特定の地域で収束または低下したことが確認された際,発令された警報を取り消す行為を指す.これは,津波に関わるリスクを軽減し,不要な経済的制約と持続的な緊急対応の負担を回避する上で重要な役割を果たす.過去の研究によれば,津波の減衰特性を定量的に記述する要素(移動平均二乗振幅など)が津波警報解除の科学的根拠として寄与する可能性が指摘されている(林, 2010).しかしながら,津波警報解除は,明確で合理的な科学的基準がないため,主観的かつ経験的な判断に依存しているのが現状である.本研究では,警報発令と対となる警報解除に向けた津波データ同化を活用した新たなアプローチによる津波警報解除の予測可能性について検討を行う.
これまでに,データ同化による津波予測は警報発令への利用を主として想定して検討されてきており(例えば,Maeda et al., 2015),海底圧力計などの沖合津波観測データを活用することで震源情報に依存しない形で津波予測を実現できる(例えば,Wang et al., 2023).本研究では,津波来襲後の沿岸津波の挙動推移を予測することに焦点を絞り,データ同化による津波警報解除の予測可能性について検討を行った.津波警報において,最大津波高の時間推移に関する情報は極めて重要な判断基準となる.本研究では「今後XX時間における最大の高さ」(Maximum Height in the Following XX hours)という概念を提唱する.例えば,「MHF12 = 1 m」という表記は,今後12時間以内において該当の観測地点での最大の高さが1メートルと予測されることを示し,この数値は,津波警報の解除において重要な判断材料となり得る.
試行実験として,2011年東北地方太平洋沖地震津波を事例とし,DONET 1の周辺海域である紀伊半島沿岸において検討を行った.このイベント時にはDONET 1は運用段階にあり,海底圧力計10箇所で津波が記録された.これらの海底圧力計の観測値を用いてデータ同化を行い,沿岸における最大津波高推移の計算値と観測値の比較を行った.この手法により予測されるMHF12は,観測されたMHF12の値と顕著な一致性が示された.このことは,データ同化が津波警報解除の指針として重要な洞察をもたらす可能性を示唆している.さらに,東北地方太平洋沖地震津波に類似する数値実験を実施し,DONET 1およびDONET 2における計算波形に基づいたデータ同化では,紀伊半島沿岸と四国沿岸に対して正確なMHF12の予測性能を持つことが確認できた.
本研究では,津波警報解除予測に初めて津波データ同化手法を導入し,その利用可能性について検討を行った.これまでの研究と異なり,本手法は予め計算されたシナリオベースや観測に基づく減衰特性を使用せずに津波警報解除に向けた明確で合理的な科学的基準を提供することが可能となる.今後の更なる展開として,データ同化プロセスに非線形波動モデルを組み込み,津波警報解除の予測精度向上に向けた検討を行う.
これまでに,データ同化による津波予測は警報発令への利用を主として想定して検討されてきており(例えば,Maeda et al., 2015),海底圧力計などの沖合津波観測データを活用することで震源情報に依存しない形で津波予測を実現できる(例えば,Wang et al., 2023).本研究では,津波来襲後の沿岸津波の挙動推移を予測することに焦点を絞り,データ同化による津波警報解除の予測可能性について検討を行った.津波警報において,最大津波高の時間推移に関する情報は極めて重要な判断基準となる.本研究では「今後XX時間における最大の高さ」(Maximum Height in the Following XX hours)という概念を提唱する.例えば,「MHF12 = 1 m」という表記は,今後12時間以内において該当の観測地点での最大の高さが1メートルと予測されることを示し,この数値は,津波警報の解除において重要な判断材料となり得る.
試行実験として,2011年東北地方太平洋沖地震津波を事例とし,DONET 1の周辺海域である紀伊半島沿岸において検討を行った.このイベント時にはDONET 1は運用段階にあり,海底圧力計10箇所で津波が記録された.これらの海底圧力計の観測値を用いてデータ同化を行い,沿岸における最大津波高推移の計算値と観測値の比較を行った.この手法により予測されるMHF12は,観測されたMHF12の値と顕著な一致性が示された.このことは,データ同化が津波警報解除の指針として重要な洞察をもたらす可能性を示唆している.さらに,東北地方太平洋沖地震津波に類似する数値実験を実施し,DONET 1およびDONET 2における計算波形に基づいたデータ同化では,紀伊半島沿岸と四国沿岸に対して正確なMHF12の予測性能を持つことが確認できた.
本研究では,津波警報解除予測に初めて津波データ同化手法を導入し,その利用可能性について検討を行った.これまでの研究と異なり,本手法は予め計算されたシナリオベースや観測に基づく減衰特性を使用せずに津波警報解除に向けた明確で合理的な科学的基準を提供することが可能となる.今後の更なる展開として,データ同化プロセスに非線形波動モデルを組み込み,津波警報解除の予測精度向上に向けた検討を行う.