日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

D会場

一般セッション » S18. 地震教育・地震学史

[S18] AM-2

2023年11月2日(木) 10:45 〜 11:45 D会場 (F204)

座長:加納 靖之(東京大学地震研究所)、林 能成(関西大学社会安全学部)

10:45 〜 11:00

[S18-06] 教員サマースクール2023 in 丹那&神奈川県西部地域 開催の意義

*根本 泰雄1、荒井 賢一2、伊東 明彦3、加納 靖之4、桑野 修5、佐藤 明子6、朱里 泰治7、山野 誠8、南島 正重9、吾妻 崇10、道家 涼介11 (1. 立命館大理工、2. 栄東高、3. 放送大、4. 東大震研、5. 海洋研究開発機構、6. 平塚市立金目中五領ヶ台分校、7. 洛星中高、8. 東大大気海洋研、9. 都立両国中高、10. 産総研、11. 温地研)

1.はじめに
 学校教育委員会は1996年度から教員サマースクール(以降,教員SSと記す)を毎年度開催してきている.COVID-19の影響により2020~2021年度と2年間は中断したものの,2022年度は第25回教員SSを対面で開催し[根本・他(2022)],2023年度も対面で開催した.

2.2023教員SSの概要
 第26回教員SSの概要は以下の通りである.
開催地:静岡県函南町,神奈川県小田原市・松田町・秦野市ほか
日程:2023年8月20日(日)~ 21日(月)
タイトル:伊豆衝突帯 -丹那断層や地震観測点を巡る-
目的:1930年(昭和5年)11月26日に発生した北伊豆地震による地表地震断層の観察,国府津-松田断層による活断層地形の観察,足柄平野での強震観測網の地震観測点の見学などを通して1633年寛永小田原地震,1782年天明小田原地震,1853年嘉永小田原地震,1923年関東地震を考え,近い将来の発生の切迫性がいわれている神奈川県西部地域での強震動による影響に思いを馳せ,あわせて足柄平野での水害対策地点の見学と自噴井戸の見学とから,水害の他,震災の影響も火山噴火の影響も受ける地での暮らしと自然の恵みとを考え,防災・減災に対する意識を高める.
講師(敬称略):吾妻 崇,道家涼介

3.2023教員SSの内容
 2023教員SSでの観察ポイントを以下に示す.
初日:
 丹那断層公園(1930年北伊豆地震による地表地震断層を観察)
 火雷神社(1930年北伊豆地震による地面のずれを観察)
 十国峠(伊豆衝突帯の全体像の俯瞰)
 (当日は視界不良のため箱根関所へとポイントを変更)
 神奈川県立温泉地学研究所(地震観測ほかの現業の様子を見学)
二日目:
 小田原市立豊川小学校(強震観測網成田観測点の見学)
 富水駅付近(自噴井戸の観察)
 曽比の霞堤(酒匂川の水害対策の観察)
 チェックメイトカントリークラブ南側横(松田山山頂付近)(国府津-松田断層による活断層地形を観察)
  震生湖(1923年関東地震による地形への影響を観察)
  ネイチャーパークくずは(富士山・箱根火山の活動による火山灰層の観察と秦野断層の考察)
 なお,雨天時等でのコース一部変更は,十国峠の代わりに箱根関所(箱根火山の地形観察と(北伊豆地震時に動いたと言われる)箱根町断層の考察)を訪問し,チェックメイトカントリークラブ南側横(松田山山頂付近)の代わりに秦野戸川公園パークセンター(丹沢山地の成り立ちを展示から学ぶ)か,小田原城(1923年関東地震による石垣のずれ等の観察)を訪ねる計画であった.

4.参加者の内訳
 交通の便がある程度良い地での開催だったためか,定員20名に対して参加申込者数は18名と昨年度より8名多くなった.内訳は次の通りであった.
 小学校教員3名(元職1名を含む)
 中学校教員1名
 高等学校教員11名(中高3名,元職1名を含む)
 大学教員1名
 教育委員会1名
 学部学生1名
 地元(神奈川県・静岡県)の教員6名を含め各地からの参加者となったが,首都圏からの参加者が11名と過半数を占めた.勤務校(在籍校)がある都道府県名を北から順に並べると,埼玉,東京,神奈川,静岡,石川,滋賀,大阪,香川であった.

5.教員SS開催の意義と今回の反省点
 学校教員である参加者からは,今後の授業づくりに向けて役立つ内容が多く,参加して良かったとの声をいただけた.こうした声からも,教員SSを開催する意義はあると今回も捉えた.
 準備段階では,昨年度の反省から中型バスの利用を想定したが,中型バスが入れないルートもあり,一部は徒歩移動を余儀なくされた(富水駅周辺).猛暑日が増加している状況もあわせて考えると,開催時期を見直すことが必要かもしれない.
 また,下見後に枝葉が相当に成長し,当日になって枝葉がバスの天井を擦る可能性が生じたルートもあり,一部予定の移動経路を迂回することとなった.今年度もコース設定後にバス会社との交渉を開始したが,下見の段階からバス会社とのやり取りを開始しておく方が良いようである.
 さらに,今回もCOVID-19の影響は残り,5類化以降に準備を本格化せざるを得なかった.そのため十分な準備期間を設けることができず,準備に無理が生じたことが第一の反省点である.その他の反省点や改善案等は発表にて報告する.

謝辞
 講義の会場を提供してくださった神奈川県立温泉地学研究所,下見時に自噴井戸の見学を許してくださった共著者佐藤の親戚である配島家の皆様,地震観測点での観察に向けご尽力いただいた東京大学地震研究所の宮川幸治氏,以上の皆様からご助力をいただきました.ここに記して深謝します.

参考文献
根本泰雄・他,2022,教員サマースクール2022 in 境港&大根島 開催の意義,(公社)日本地震学会2022年大会予稿,S18-03.