日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S19. 地震一般・その他

[S19P] PM-P

2023年11月1日(水) 17:00 〜 18:30 P10会場 (F201・3側フォワイエ) (アネックスホール)

[S19P-01] コミュニティ断層モデルの構築に向けて

*安藤 亮輔1、吾妻 崇2、コミュニティ断層モデル 有志グループ3 (1. 東京大学、2. 産業技術総合研究所、3. 所属機関なし)

活断層の3次元形状モデルは,地震発生や地震災害を含む地震・活断層現象に関する大凡の研究の基本を成すものである.国内においては,地形学・地質学的研究により地表トレースのモデル化,活断層図の作成は大きく進展してきた.それに対して,地下の断層形状については,観測や解釈の難しさから全国一律モデルの作成は道半ばである.現状,全国一律の3次元断層形状モデルとしては,地震調査研究推進本部により地震動予測地図作成のため震源断層モデル(J-SHISモデル)が公開されているが,概ねM7規模(長さ30km程度)の空間解像度を単位とした矩形表現であり,複雑な形状を持つ地表トレースと大きくずれている断層も多い.一方,米国(https://www.scec.org/article/1017)やニュージーランド(NZ)では,地表トレースとも整合的な高解像度の3次元断層非平面形状モデル構築の取り組みが進んでいる.近年の観測・理論研究の進展により,地下の断層形状が震源破壊過程や強震動放射,地表変位にあたえる影響の大きさが明らかとなっており,3次元断層形状のモデル化への要求が高まっている.
今年度より,地震・活断層コミュニティで一定のコンセンサスのある国内の3次元断層形状モデルの作成を目的として,「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の拠点間連携課題として取り組みを開始した.モデル構築の手順やコンパイル基準は,NZの先行事例(Seebeck et al., 2023)で実績のあるものをした.NZは日本とも島弧のテクトニックな条件や観測条件が似通っているところも多く参考になる.現在,全国の主要活断層帯の約半数について,地表トレースと断層傾斜角などについての既往データ,モデルに基づいて,3次元形状モデルの試作を行っている.これは,米国での例(15年以上更新を続け最新はVer. 6.0 (2023))のように,今後の観測や解釈の発展によりモデル更新していくものの端緒として位置付けられる.今回の発表では,諸外国での取り組みのレビューと国内モデル作成の進捗状況を報告する.
来年には,ワークショップ形式などで,試作モデルの評価と修正を広くコミュニティに公開して行うことを検討している.コミュニティ各位には,個別断層の評価者としてご協力いただくとともに,基礎研究から応用研究まで多様な観点からコメント頂き,さらにコアメンバーとして参画して頂ければ幸いである.本モデルが,今後10-20年の日本の地震・活断層研究の基盤となるものにできることを期待している.
Seebeck et al., 2023, The New Zealand Community Fault Model – version 1.0: an improved geological foundation for seismic hazard modelling, New Zealand Journal of Geology and Geophysics.