3:38 PM - 3:58 PM
[S20-02] [Invited]Flexible source-process imaging to illuminate a relationship between rupture growth complexity and fault geometry
断層形状が破壊や滑りの時空間分布に与える影響は、これまで理論・シミュレーション研究によって検討されてきた。一方、実地震においては、そもそも非平面断層上の震源過程のイメージング自体が困難であった。発表者は、断層形状の複雑性が地震破壊伝播に及ぼす影響を解明するため、破壊伝播や滑りの急な加減速により放射される1 Hz前後の高周波地震波の強度を推定するBack-projection法および、より低周波帯域における有限断層インバージョンの改良に取り組み、断層の滑り方向と断層形状を同時推定可能にする高自由度な震源過程イメージング手法の開発とその適用を行ってきた。断層形状や破壊進行方向など、解析者が予め規定したシナリオに縛られること無く、地震波形データ自身がその情報を素直に描き出す震源過程イメージを構築することで、破壊成長過程の隠された複雑性を明らかにし、また断層形状との因果関係を実地震データ解析により検証可能になった。
例えば2008年四川地震 (Mw 7.9) においては、高周波地震波強度の時空間分布から、断層面が不連続な箇所において破壊進展が妨げられた後、強い応力集中により破壊伝播速度が急加速したことがわかった。断層形状が複雑な内陸巨大地震において、幾何バリアが破壊進展の不規則性をコントロールする主要原因となりうることを突き止めた。さらに、2018年インドネシア地震 (Mw 7.6) においては、S波速度を越えて進展する破壊前線が、断層の屈曲に従いまるで尺取り虫が進むように停滞と進展を伴いながら伝播したことが分かった。破壊前線は、断層の屈曲が背景応力にとって最適な方向に向く場合に進展し、そうでない場合に停滞することが数値シミュレーションにより予測されているが、これを実地震の解析により立証し、断層形状の複雑性が破壊成長を決定する重要な因子であることがわかった。
高自由度な震源過程解析は、地震破壊を規定するプレート境界面形状やスラブ内部の応力状態についても新たな拘束を与える。例えば2021年ハイチ地震 (Mw 7.2) において、一つの地震において逆断層破壊と横ずれ破壊を擁する極めて複雑な地震発生機構をもつことを見出した。2つの破壊エピソードはいずれも既知の横ずれ断層帯から予想される断層の向きや断層の動きとは相容れない機構であり、衝突とすれ違いを伴う複雑なプレート運動が複雑な断層セグメントを形成し得ることがわかってきた。また、2021年ニュージーランド地震 (Mw 7.3) において、スラブ内深部から浅部に至る領域で逆断層・横ずれ断層・正断層破壊が混在すること、特に逆断層破壊で特徴づけられるスラブ深部は海溝軸に並行する圧縮応力軸をもつことが分かった。スラブの浮力や海山の沈み込みに起因するスラブ内応力場の複雑な変化はスラブ形状の特異な折れ曲がりを示唆しており、柔軟な震源過程解析がニュージーランド北端をはじめとする複雑なテクトニクス場の理解に貢献する可能性を見出した。
本講演では、これらを含む解析事例に基づいて、破壊と滑りの加減速が断層形状と相関することを示し、先行するシミュレーション結果を踏まえた解釈が可能になったことを紹介する。断層面の屈曲や不連続が破壊を停滞させるだけでなく、時としてその進展を促し、階層的に地震を巨大化させ得る場合について議論する。さらにこれらの実地震データ解析が、テクトニクス分野の研究に対してどのような貢献をし得るかについても議論する。
例えば2008年四川地震 (Mw 7.9) においては、高周波地震波強度の時空間分布から、断層面が不連続な箇所において破壊進展が妨げられた後、強い応力集中により破壊伝播速度が急加速したことがわかった。断層形状が複雑な内陸巨大地震において、幾何バリアが破壊進展の不規則性をコントロールする主要原因となりうることを突き止めた。さらに、2018年インドネシア地震 (Mw 7.6) においては、S波速度を越えて進展する破壊前線が、断層の屈曲に従いまるで尺取り虫が進むように停滞と進展を伴いながら伝播したことが分かった。破壊前線は、断層の屈曲が背景応力にとって最適な方向に向く場合に進展し、そうでない場合に停滞することが数値シミュレーションにより予測されているが、これを実地震の解析により立証し、断層形状の複雑性が破壊成長を決定する重要な因子であることがわかった。
高自由度な震源過程解析は、地震破壊を規定するプレート境界面形状やスラブ内部の応力状態についても新たな拘束を与える。例えば2021年ハイチ地震 (Mw 7.2) において、一つの地震において逆断層破壊と横ずれ破壊を擁する極めて複雑な地震発生機構をもつことを見出した。2つの破壊エピソードはいずれも既知の横ずれ断層帯から予想される断層の向きや断層の動きとは相容れない機構であり、衝突とすれ違いを伴う複雑なプレート運動が複雑な断層セグメントを形成し得ることがわかってきた。また、2021年ニュージーランド地震 (Mw 7.3) において、スラブ内深部から浅部に至る領域で逆断層・横ずれ断層・正断層破壊が混在すること、特に逆断層破壊で特徴づけられるスラブ深部は海溝軸に並行する圧縮応力軸をもつことが分かった。スラブの浮力や海山の沈み込みに起因するスラブ内応力場の複雑な変化はスラブ形状の特異な折れ曲がりを示唆しており、柔軟な震源過程解析がニュージーランド北端をはじめとする複雑なテクトニクス場の理解に貢献する可能性を見出した。
本講演では、これらを含む解析事例に基づいて、破壊と滑りの加減速が断層形状と相関することを示し、先行するシミュレーション結果を踏まえた解釈が可能になったことを紹介する。断層面の屈曲や不連続が破壊を停滞させるだけでなく、時としてその進展を促し、階層的に地震を巨大化させ得る場合について議論する。さらにこれらの実地震データ解析が、テクトニクス分野の研究に対してどのような貢献をし得るかについても議論する。