9:45 AM - 10:00 AM
[S21-01] Machine learning-based hypocenter determination using seismic intensity data
歴史地震に対しては、主に史料に記述された被害や揺れの強さから震度分布を推定し、震源位置や規模が見積もられている。それらの震源情報は歴史地震カタログとして(例えば、宇佐美・他,2013)、地震の長期評価(例えば、地震調査研究推進本部地震調査委員会,2022)や防災啓発などに活用されている。歴史地震の震源・規模推定には、様々な過去地震に対する震度分布の特徴に精通した熟練した技術が必要である。一方で近年、機械学習の進歩により様々な画像認識技術が確立されており、地震学分野においても画像化したアナログ波形記録の読み取り(Furumura et al., 2023)や微動検出(Kaneko et al., 2021)、地震動予測の高度化(Kubo et al., 2020)など広く活用されつつある。震度分布に基づく震源推定においても、画像認識技術を用いて、画像化した震度分布データ(震度分布画像)から震源情報を推定できる可能性がある。そこで本研究では、中国・四国地域を対象として、震度分布画像からの震源位置ならびに規模の推定を試みた。
実地震については、中国・四国地域で1996年4月~2021年12月に発生した最大震度4以上を記録した35地震を対象とし、うち30地震を学習に、5地震を検証に用いた。表層地盤による観測点間の震度増幅の違いが機械学習に悪影響を及ぼす恐れがあるため、VS30(表層30 mの平均S波速度:地震ハザードステーションの値を使用)で決まるMatsu'ura et al. (2020) (M2020)による震度の距離減衰式の表層地盤の項を用いて観測震度をVS30=300m/s相当値に変換し、Simple Kriging法による空間補間から震度分布データを作成し画像化した。なお地震間の観測点密度の偏りを低減するために、1997年当時と同程度の密度になるよう観測点をサンプリングして補間を行った。観測点数の多いものは複数回サンプリングを行い、複数の震度分布画像を作成した。また、限られた期間に発生した実地震のみを学習に用いた場合、学習データの不足が予想されるため、仮想の震源と観測点を生成し、学習データの拡張を行った。仮想震源としては、震源位置ならびに規模を乱数により発生させた400地震(モーメントマグニチュード(Mw)4.0~7.5)とした。また仮想観測点は、1997年当時の観測点密度と同程度(180(±30))になるよう無作為に配置し、VS30=300m/s相当における予測震度をM2020のVery Shallowタイプの式を用いて算出した。そこに一定のばらつきを付与し、実地震と同様に補間することで震度分布画像を作成した。また、学習データとなる震源情報は、面震源を想定し震源位置を中心とした固定サイズの円形範囲内にMw値を埋め込んだ画像(震源画像)とした。非ゼロ領域が震源位置、画素値が規模となるため、震源の位置と規模を同時に推定することが可能となる。
学習モデルには、画像から画像を推定するため全層畳込み層で構成されるCNNモデルを用いた。各画素の出力値をMw値として、真値との平均二乗誤差関数を損失関数とした。また、強制的に震度0としている海域の影響を懸念し、位置情報を考慮した推定を可能とするため、入力画像に画像座標情報を追加する位置エンコーディング(PE)を施した。実験では、仮想震源データの有無による相違、ならびに画像のPEの有無による相違についても調査した。
学習用の実地震30件分と全仮想震源データで学習したモデルを用いて検証用の実地震5地震分を対象に震源の推定を行ったところ、Mw5.0未満の地震に対しては震源推定が困難であったが、Mw5.0以上の地震に対しては、概ね正しい位置に震源が推定された。また、1件の地震を除いて、比較的精度良くMwが推定された。実地震のみで学習したモデルでは、Mwの大きな地震に対して震源を複数箇所検出する傾向が見られ、Mwの推定値も不安定で、極端に大きな値となる場合があり、学習データに仮想震源データを加えることで誤検出の低減効果とMw推定値の安定効果があることが分かった。さらに、PEを行わない場合には震源の検出自体が困難となったため、PEが必須であることが分かった。今回作成した震度分布画像は生成時点で震源情報を要しており、歴史地震の震度分布画像を生成する際にも仮の震源情報を与える必要がある。そのため、仮の震源情報が含みうる誤差を震源画像にも与えておく必要がある。
謝辞:気象庁による震度データならびに防災科学技術研究所による地震ハザードステーションにおけるVS30を使用させていただいた。ここに記して感謝申し上げます。本研究は、文部科学省による「地震調査研究推進本部の評価等支援事業」の一環として実施された。
実地震については、中国・四国地域で1996年4月~2021年12月に発生した最大震度4以上を記録した35地震を対象とし、うち30地震を学習に、5地震を検証に用いた。表層地盤による観測点間の震度増幅の違いが機械学習に悪影響を及ぼす恐れがあるため、VS30(表層30 mの平均S波速度:地震ハザードステーションの値を使用)で決まるMatsu'ura et al. (2020) (M2020)による震度の距離減衰式の表層地盤の項を用いて観測震度をVS30=300m/s相当値に変換し、Simple Kriging法による空間補間から震度分布データを作成し画像化した。なお地震間の観測点密度の偏りを低減するために、1997年当時と同程度の密度になるよう観測点をサンプリングして補間を行った。観測点数の多いものは複数回サンプリングを行い、複数の震度分布画像を作成した。また、限られた期間に発生した実地震のみを学習に用いた場合、学習データの不足が予想されるため、仮想の震源と観測点を生成し、学習データの拡張を行った。仮想震源としては、震源位置ならびに規模を乱数により発生させた400地震(モーメントマグニチュード(Mw)4.0~7.5)とした。また仮想観測点は、1997年当時の観測点密度と同程度(180(±30))になるよう無作為に配置し、VS30=300m/s相当における予測震度をM2020のVery Shallowタイプの式を用いて算出した。そこに一定のばらつきを付与し、実地震と同様に補間することで震度分布画像を作成した。また、学習データとなる震源情報は、面震源を想定し震源位置を中心とした固定サイズの円形範囲内にMw値を埋め込んだ画像(震源画像)とした。非ゼロ領域が震源位置、画素値が規模となるため、震源の位置と規模を同時に推定することが可能となる。
学習モデルには、画像から画像を推定するため全層畳込み層で構成されるCNNモデルを用いた。各画素の出力値をMw値として、真値との平均二乗誤差関数を損失関数とした。また、強制的に震度0としている海域の影響を懸念し、位置情報を考慮した推定を可能とするため、入力画像に画像座標情報を追加する位置エンコーディング(PE)を施した。実験では、仮想震源データの有無による相違、ならびに画像のPEの有無による相違についても調査した。
学習用の実地震30件分と全仮想震源データで学習したモデルを用いて検証用の実地震5地震分を対象に震源の推定を行ったところ、Mw5.0未満の地震に対しては震源推定が困難であったが、Mw5.0以上の地震に対しては、概ね正しい位置に震源が推定された。また、1件の地震を除いて、比較的精度良くMwが推定された。実地震のみで学習したモデルでは、Mwの大きな地震に対して震源を複数箇所検出する傾向が見られ、Mwの推定値も不安定で、極端に大きな値となる場合があり、学習データに仮想震源データを加えることで誤検出の低減効果とMw推定値の安定効果があることが分かった。さらに、PEを行わない場合には震源の検出自体が困難となったため、PEが必須であることが分かった。今回作成した震度分布画像は生成時点で震源情報を要しており、歴史地震の震度分布画像を生成する際にも仮の震源情報を与える必要がある。そのため、仮の震源情報が含みうる誤差を震源画像にも与えておく必要がある。
謝辞:気象庁による震度データならびに防災科学技術研究所による地震ハザードステーションにおけるVS30を使用させていただいた。ここに記して感謝申し上げます。本研究は、文部科学省による「地震調査研究推進本部の評価等支援事業」の一環として実施された。