3:30 PM - 3:45 PM
[S21-16] Development of a method for determining the hypocenter of tectonic tremors using Score-CAM
・はじめに
繰り返し発生するスロースリップイベント(SSE)は、世界各地のプレート境界で観測されている。数値シミュレーションなどの結果から、巨大地震発生前にSSEの発生間隔が変化することが指摘されている(Matsuzawa et al., 2010)。そのため、SSEのモニタリングは巨大地震のメカニズム解明に欠かせない。SSEはテクトニック微動(以下、微動)と時空間的に同期して発生することが知られている。微動は地震計で容易に観測可能であり、SSEのモニタリングに適している。しかし、多観測点の波形相関を用いた微動の検出手法では、微動だけでなくノイズや地震も誤検出する可能性がある。さらに、微動活動が活発な時間帯の震源決定は難しい。この問題に対する解決策として、深層学習手法の一つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が有望とされており、その有効性は複数の研究で報告されている(e.g. Nakano et al., 2019)。CNNの出力結果と入力画像の関係性の解釈は難しいが、入力画像内での出力結果に寄与する部分の可視化手法が存在する。この手法を利用することで、微動の特徴的周波数成分を抽出することが可能である(e.g. Rouet-Leduc et al., 2019)。本研究では、CNNを用いてノイズ、微動、地震の分類モデルを開発し、モデルが予測時に注目する部分の可視化を通じて微動の抽出を試み、震源決定の精度向上を目指す。
・データと方法
使用データは産業技術総合研究所が紀伊半島に設置したアレイ観測網の3成分速度波形である。アレイ観測網は39個の観測点から構成され、各観測点は東西南北を網羅する形で十時に配置されている。使用した期間は2011年4月から2015年12月までである。作成したCNNモデルは、この3成分速度波形の時間窓1分間のスペクトログラム(周波数軸2-12Hz)を入力とし、ノイズ、微動、地震を確率的に識別する。本モデルの予測に寄与する入力画像部分の可視化には、Score-CAM(Wang et al., 2019)を採用した。39の観測点の中から微動と判定された観測点のスペクトログラムを基に、Score-CAMを計算し、これを平均化及び二値化して周波数フィルターを作成した。NS成分波形に対してこのフィルターを適用し、微動の抽出を行った。その後、抽出した波形を2-4Hzまたは2-10Hzのバンドパスフィルタを適用し、波形群の周波数帯を揃えてセンブランス解析を実施した。
・結果と考察
目視で選定した74,100個のデータ(ノイズ・微動・地震それぞれ24,700個)で学習したCNNモデルは、目視選定の7,275個のテストデータ(各2,425個)に対して、精度、適合率、再現率の全てで95%以上を達成し、地震の再現率は最大となる98%であった。Score-CAMの処理後に2–10Hzのバンドパスフィルターを適用し、微動と判定された観測点が25個以上の場合にセンブランス値を計算した。微動が活発な時間帯における1日分の波形の解析では、Score-CAMを利用した場合はしない場合と比較して、平均値で0.08のセンブランス値の増加が確認され、最大で0.31大きかった。最大差が生じた波形では、Score-CAMのフィルターを使用することで高振幅な微動が抽出され、微動と考えられる波形が強調されることが確認できた。2–4Hzのバンドパスフィルターを適用して比較したところ、センブランス値の差は平均値で0.03大きくなり、最大で0.11大きかった。2–4Hzのバンドパスフィルターを適用した場合では、Score-CAMのフィルタよりもバンドパスの影響が大きいため差が小さくなったと考えられる。また、予備的解析として中心観測点を基準に、1分の時間窓の中心から0.3秒間のデータを20Hzにダウンサンプリングし、バンドパス2-8Hzを適用した(Nakamoto et al., 2021)。その後、相互相関係数が0.3以上の観測点のみを選択して同様の処理を施した場合、未処理時よりもセンブランス値が高まる結果が得られた。
繰り返し発生するスロースリップイベント(SSE)は、世界各地のプレート境界で観測されている。数値シミュレーションなどの結果から、巨大地震発生前にSSEの発生間隔が変化することが指摘されている(Matsuzawa et al., 2010)。そのため、SSEのモニタリングは巨大地震のメカニズム解明に欠かせない。SSEはテクトニック微動(以下、微動)と時空間的に同期して発生することが知られている。微動は地震計で容易に観測可能であり、SSEのモニタリングに適している。しかし、多観測点の波形相関を用いた微動の検出手法では、微動だけでなくノイズや地震も誤検出する可能性がある。さらに、微動活動が活発な時間帯の震源決定は難しい。この問題に対する解決策として、深層学習手法の一つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が有望とされており、その有効性は複数の研究で報告されている(e.g. Nakano et al., 2019)。CNNの出力結果と入力画像の関係性の解釈は難しいが、入力画像内での出力結果に寄与する部分の可視化手法が存在する。この手法を利用することで、微動の特徴的周波数成分を抽出することが可能である(e.g. Rouet-Leduc et al., 2019)。本研究では、CNNを用いてノイズ、微動、地震の分類モデルを開発し、モデルが予測時に注目する部分の可視化を通じて微動の抽出を試み、震源決定の精度向上を目指す。
・データと方法
使用データは産業技術総合研究所が紀伊半島に設置したアレイ観測網の3成分速度波形である。アレイ観測網は39個の観測点から構成され、各観測点は東西南北を網羅する形で十時に配置されている。使用した期間は2011年4月から2015年12月までである。作成したCNNモデルは、この3成分速度波形の時間窓1分間のスペクトログラム(周波数軸2-12Hz)を入力とし、ノイズ、微動、地震を確率的に識別する。本モデルの予測に寄与する入力画像部分の可視化には、Score-CAM(Wang et al., 2019)を採用した。39の観測点の中から微動と判定された観測点のスペクトログラムを基に、Score-CAMを計算し、これを平均化及び二値化して周波数フィルターを作成した。NS成分波形に対してこのフィルターを適用し、微動の抽出を行った。その後、抽出した波形を2-4Hzまたは2-10Hzのバンドパスフィルタを適用し、波形群の周波数帯を揃えてセンブランス解析を実施した。
・結果と考察
目視で選定した74,100個のデータ(ノイズ・微動・地震それぞれ24,700個)で学習したCNNモデルは、目視選定の7,275個のテストデータ(各2,425個)に対して、精度、適合率、再現率の全てで95%以上を達成し、地震の再現率は最大となる98%であった。Score-CAMの処理後に2–10Hzのバンドパスフィルターを適用し、微動と判定された観測点が25個以上の場合にセンブランス値を計算した。微動が活発な時間帯における1日分の波形の解析では、Score-CAMを利用した場合はしない場合と比較して、平均値で0.08のセンブランス値の増加が確認され、最大で0.31大きかった。最大差が生じた波形では、Score-CAMのフィルターを使用することで高振幅な微動が抽出され、微動と考えられる波形が強調されることが確認できた。2–4Hzのバンドパスフィルターを適用して比較したところ、センブランス値の差は平均値で0.03大きくなり、最大で0.11大きかった。2–4Hzのバンドパスフィルターを適用した場合では、Score-CAMのフィルタよりもバンドパスの影響が大きいため差が小さくなったと考えられる。また、予備的解析として中心観測点を基準に、1分の時間窓の中心から0.3秒間のデータを20Hzにダウンサンプリングし、バンドパス2-8Hzを適用した(Nakamoto et al., 2021)。その後、相互相関係数が0.3以上の観測点のみを選択して同様の処理を施した場合、未処理時よりもセンブランス値が高まる結果が得られた。