[S21P-04] Predicting the probability of seismic motion exceedance based on short-term earthquake probability information after a large earthquake
ひとたび大地震が発生すると、その地震による強い揺れなどで被害が生じていたところに、震源域周辺で活発化する地震活動によって更なる揺れがもたらされる。大地震発生後の初期段階では避難や救助、復旧などの防災行動が取られるが、このフェーズにおいて「今後数日間」といった短期的な揺れの見通しに関する予測情報のニーズは高い。本研究では、大地震発生後の初期段階で得られる短期的な地震発生確率を礎とし、大地震発生から数日間の地震活動による地震動超過確率を予測するためのスキームを提案する。
大地震発生直後は地震カタログの質および量が著しく低下するため、平常時に用いられている統計的な予測手法をそのまま適用することは難しい。この大地震発生直後の地震カタログの不完全性に対応するために、Omi et al. (2013)は地震発生からの経過時間で変化する地震検知率とグーテンベルク・リヒター則のb値をベイズ推定によって同時推定し、さらに大森-宇津法則に基づいて地震発生確率を算出するという手法を提案した。防災科研では、Omi et al. (2013)の解析方法を防災科研Hi-netの自動震源カタログに適用し、近い将来を対象とした余震発生確率を自動的に予測するシステムの試験稼働を行っている(Omi et al., 2018)。同システムでは、防災科研Hi-netの震源決定処理システムでマグニチュード5.0以上の地震が検知されると、その3時間後から1時間ごとに地震発生確率の計算を行っている。本研究では、同システムを通して得られる、マグニチュードMの地震が予測対象期間内に発生する確率を地震発生確率情報として用いる。
次に、地震発生確率情報に基づく地震動予測を考える。予測対象は計測震度とする。大地震の震源域およびその後の地震の発生域は有限な広がりを持ち、またそれらは完全に重なるわけでもない。ここでは簡単のために、全ての地震を点震源として扱い、さらに大地震後に発生する地震は最初の大地震と同じ場所 で発生すると仮定する。この仮定によって、地震と予測対象地点の位置関係は常に固定して地震動予測を行うことができる。地震動予測手法は、現行の緊急地震速報における「震源とMによる震度予測手法」の「予測震度の算出」(気象庁 2020)を参考にした。M・最短距離・震源深さを入力として司・翠川(1999)の地震動予測式によって算出した予測対象地点での基準基盤上における最大速度から、予測対象地点でのVs30情報に基づいた地盤増幅度を用いて地表での最大速度を算出し、さらに翠川ほか(1999)の変換式によって地表での計測震度を求める。これに確率論的地震動予測アプローチ(例えば藤原ほか2005, 儘田ほか2021, 藤原ほか2023)を組み合わせることで、あるMの地震が予測対象期間内に引き起こす揺れが閾値を超える確率を求めることができる。さらに様々なMでの確率情報を足し合わせることで、地震活動全体として予測対象期間内に発生する揺れが閾値を超える確率を得ることができる。
発表では実地震への適用および実際の震度観測情報に基づく揺れの頻度との比較を行う。
【謝辞】本研究は、文部科学省の情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト)JPJ010217の助成を受けたものです。
大地震発生直後は地震カタログの質および量が著しく低下するため、平常時に用いられている統計的な予測手法をそのまま適用することは難しい。この大地震発生直後の地震カタログの不完全性に対応するために、Omi et al. (2013)は地震発生からの経過時間で変化する地震検知率とグーテンベルク・リヒター則のb値をベイズ推定によって同時推定し、さらに大森-宇津法則に基づいて地震発生確率を算出するという手法を提案した。防災科研では、Omi et al. (2013)の解析方法を防災科研Hi-netの自動震源カタログに適用し、近い将来を対象とした余震発生確率を自動的に予測するシステムの試験稼働を行っている(Omi et al., 2018)。同システムでは、防災科研Hi-netの震源決定処理システムでマグニチュード5.0以上の地震が検知されると、その3時間後から1時間ごとに地震発生確率の計算を行っている。本研究では、同システムを通して得られる、マグニチュードMの地震が予測対象期間内に発生する確率を地震発生確率情報として用いる。
次に、地震発生確率情報に基づく地震動予測を考える。予測対象は計測震度とする。大地震の震源域およびその後の地震の発生域は有限な広がりを持ち、またそれらは完全に重なるわけでもない。ここでは簡単のために、全ての地震を点震源として扱い、さらに大地震後に発生する地震は最初の大地震と同じ場所 で発生すると仮定する。この仮定によって、地震と予測対象地点の位置関係は常に固定して地震動予測を行うことができる。地震動予測手法は、現行の緊急地震速報における「震源とMによる震度予測手法」の「予測震度の算出」(気象庁 2020)を参考にした。M・最短距離・震源深さを入力として司・翠川(1999)の地震動予測式によって算出した予測対象地点での基準基盤上における最大速度から、予測対象地点でのVs30情報に基づいた地盤増幅度を用いて地表での最大速度を算出し、さらに翠川ほか(1999)の変換式によって地表での計測震度を求める。これに確率論的地震動予測アプローチ(例えば藤原ほか2005, 儘田ほか2021, 藤原ほか2023)を組み合わせることで、あるMの地震が予測対象期間内に引き起こす揺れが閾値を超える確率を求めることができる。さらに様々なMでの確率情報を足し合わせることで、地震活動全体として予測対象期間内に発生する揺れが閾値を超える確率を得ることができる。
発表では実地震への適用および実際の震度観測情報に基づく揺れの頻度との比較を行う。
【謝辞】本研究は、文部科学省の情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト)JPJ010217の助成を受けたものです。