The 2023 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Sept. 17th)

Special session » S21. Acceleration of seismological research through integration with information science

[S21P] PM-P

Wed. Nov 1, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P3 (F205 and 6 side foyer) (Hall Annex)

[S21P-06] Extraction of deep tectonic tremor waveforms using deep learning: Application to Hi-net stations in the Nankai subduction zone

*Yuya Jinde1, Amane Sugii1, Yoshihiro Hiramatsu1 (1. Kanazawa University)

1.はじめに
テクトニック微動(以下,微動)は卓越周波数が1~10 Hz,継続時間が数分~数時間の微弱な振動現象であり,P波やS波の検出が困難という特徴を持つ.したがって,通常の地震検出法を微動に適用することは難しく,微動の検出には,エンベロープ相関法(Obara, 2002)や,ハイブリッド法(Maeda and Obara, 2009)が用いられることが多い.しかし,これらの方法では通常の地震やノイズも検出する場合があり,目視検査が必要であった.この問題点を解決するため,先行研究では深層学習を用いた地震波形の識別が行われており,高い精度でノイズ・微動・地震波形の識別が可能であることが報告されている(e.g. Nakano et al., 2019).しかし,深層学習を用いた系統的な微動波形の抽出や,抽出された微動を用いた解析はまだ行われていない.そこで,本研究では深層学習ベースの微動解析手法の確立を目指し,深層学習を用いた微動の抽出と,抽出された微動から微動サイズの基本的な指標となる微動継続時間の決定を行った.

2.データと手法
本研究ではHi-netで記録された3成分速度波形を使用した. 先行研究と同様に,深層学習モデルとして畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を採用した.1分間の波形記録に2 – 30 Hzのバンドパスフィルタを適用後,時間窓5秒,オーバーラップ80%,最大・最小正規化の条件で作成したスペクトログラム3成分を入力データとした.CNNモデルは2層の畳み込み層,プーリング層と,3層の全結合層からなり,出力層ではノイズ・微動・地震の確率値をそれぞれ出力する. モデルの学習では,Hi-net観測点21点で記録された波形データを使用し,期間は2004年4月~2019年12月までである.ノイズ・微動・地震イベント各13,800枚,合計41,400のスペクトログラムを使用しモデルの学習を行った.学習後のモデルの性能評価には,各イベント4,600枚,合計13,800枚からなるテストデータを使用した.モデルの学習,テストに使用したイベントは,地震は気象庁一元化震源カタログ,微動はハイブリッドカタログ(Maeda & Obara, 2009)を参照し,目視で選択を行った. 微動の抽出では,Hi-net観測点71点を使用し,期間は2016年1年間とした.南海沈み込み帯を東海,紀伊北部・中部・南部,四国東部・中部・西部の7つの領域に分割し,領域ごとに微動の抽出を行った.本研究では,モデルが3観測点以上で微動と識別し,2分以上継続したイベントを微動と定義した.

3.結果
テストデータへの適用結果では,モデルは正解率98.0 %を記録した. 微動抽出の結果,東海では6,064個,紀伊北部では3,139個,中部では2,202個,南部では953個,四国東部では3,586個,中部では3,757個,西部では5,864個のイベントが得られた.同期間でハイブリッドカタログに記載されたイベント数は東海で6,906個,紀伊北部で7,210個,中部で1,648個,南部で1,885個,四国東部で6,269個,中部で4,432個,西部で8,121個であり,本研究で抽出されたイベントには,東海で2,625個(38.0%),紀伊北部で4,598個(63.8%),中部で771個(46.8%),南部で427個(22.7%),四国東部で2,651個(42.3%),中部で2,222個(50.1%),西部で3,028個(37.8%)のカタログ記載イベントを含んでいる. 最も継続時間が長いイベントの継続時間は521分であった.イベントの累積継続時間からは,ステップ状の増加が見られ,S-SSEの発生と同期していることが明らかになった.S-SSEのMwとS-SSE期間中に発生した微動の累積継続時間の関係を調べた結果,東海では0.42,紀伊では0.57,四国では0.80の相関係数が得られ,全地域共通して正の相関が見られた.また,CNNモデルを用いた微動抽出では,従来の波形相関に基づく手法では未検出となることが多い,微動活動が活発な時期の波形を微動として抽出できることが明らかになった.今後,新たに抽出された微動の震源決定の可否について調査・検討が必要となる.

4.謝辞
本研究では,防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)の地震観測データ,微動カタログとしてハイブリッド法によるカタログ(Maeda and Obara, 2009),ハイブリッド・クラスタリング処理(Obara et al., 2010)によるカタログ,地震カタログ作成には,気象庁の検測値データおよび一元化震源カタログ,S-SSEは,地震予知連絡会会報に記載されたイベントを使用しました.記して感謝いたします.