[S21P-10] 地殻内断層面の客観的検出に向けて:震源分布二段階クラスタリング法の適用
詳細な断層面形状を調べることは,地殻の変形や局所応力場,地殻内流体の挙動といった地震テクトニクスの理解に欠かせない.地震は断層面における高速すべりであるため,地震活動の三次元分布,つまり震源分布は,断層面形状を反映していると期待される.また,地震活動は主断層だけでなく,共役断層や小断層などでも発生することから,震源分布を詳細に調べることで,様々なスケールの断層構造が抽出できる可能性がある.
断層面の三次元形状を客観的に推定する手法として,教師無し機械学習による震源クラスタリングを用いる手法が提案されている.Ouillon et al. (2008) は,k-means法による震源クラスタリングによって,一枚の初期断層面から細分化した断層面の位置とパラメータ,およびその枚数を動的に決定するアルゴリズムを開発した.逆にKamer et al. (2020) は,“ボトムアップ”式の凝集型クラスタリングによって,初期の小規模構造から大きな構造を生成する手法を提案した.Truttmann et al. (2023) は,震源決定誤差を用いた震源のモンテカルロ・サンプルに対して,重心からの近傍点位置を主成分分析にかけて断層面を推定するアルゴリズムを考案した.これらの手法はそれぞれ,大断層面から小さいスケールの断層面まで推定しているものの,震源位置に対してのみクラスタリングを実施しているため,局所構造が存在する場合それらを適切に区分できない可能性があった.
そこでSato et al. (in prep.) は,仮想断層面の法線ベクトルと震源位置による二段階クラスタリング法を提案した.この手法では,予め全てのイベントが何らかの断層面上で発生すると仮定し,その法線ベクトルのクラスタリングを行うことで,複雑な断層面の大局的な面構造を保持したまま断層面を細分化し,断層面の局所構造を把握できる.本研究では,Sato et al. (in prep.) の手法を改良して日本国内で発生した地殻内地震に適用し,様々なスケールの断層面の客観的検出を試みた.
Sato et al. (in prep.) の解析は次の手順で行われる.まず前処理として,個々のイベントに対して法線ベクトルを求める.具体的には,着目しているイベントの周囲から,予め設定した数の最近傍震源を選び,震源位置の主成分分析を行い,得られた最小固有値に対応する固有ベクトルを抽出する.この固有ベクトルを,各イベントの法線ベクトルと定義する.次に,得られた法線ベクトルに対して,コサイン距離を用いた凝集型クラスタリングを行い,法線ベクトルの向きが近いイベントのクラスタを作成する.そして,個々のクラスタに対して,震源位置によるクラスタリングをHDBSCAN (Campello et al., 2013) を用いて行い,距離的に近い小クラスタを作る.この小クラスタに主成分分析を実施して面を作成し,断層面の候補とする.最後に,推定した面を既存の断層モデルやメカニズム解と比較し,検出条件に合う面を断層面として抽出する.
本研究では,Sato et al.の手法のうち,クラスタリングや面検出条件等を改良した.また,気象庁一元化震源カタログからMj 1.0以上のイベントを抽出し,HypoDD (Waldhauser & Ellsworth, 2000) による走時情報のみを用いた相対震源再決定を行った.対象として,本震–余震型の内陸大地震が発生した地域の地震活動と,顕著な群発地震活動が発生する地域に着目した.内陸大地震の例では,2000年鳥取県西部地震(Mw 6.8)や新潟県中越地震(Mw 6.8)などの地震活動カタログに適用した.鳥取県西部地震では,北北西–南南東の主断層と複数の共役断層が知られているが(e.g., Fukuyama et al., 2003; Kato et al., 2021),当手法でもこれらの断層面を検出できた.また,群発地震にも面構造が見受けられる場合があるため,和歌山県北部や能登半島の群発地震活動(e.g., Nakajima, 2023; Amezawa et al., 2023)に対しても当手法を適用した.推定された面構造と地震活動の空間関係について議論する.
なお,本研究は,文部科学省の情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト)JPJ010217の助成を受けたものである.また,気象庁一元化震源カタログを使用した.
断層面の三次元形状を客観的に推定する手法として,教師無し機械学習による震源クラスタリングを用いる手法が提案されている.Ouillon et al. (2008) は,k-means法による震源クラスタリングによって,一枚の初期断層面から細分化した断層面の位置とパラメータ,およびその枚数を動的に決定するアルゴリズムを開発した.逆にKamer et al. (2020) は,“ボトムアップ”式の凝集型クラスタリングによって,初期の小規模構造から大きな構造を生成する手法を提案した.Truttmann et al. (2023) は,震源決定誤差を用いた震源のモンテカルロ・サンプルに対して,重心からの近傍点位置を主成分分析にかけて断層面を推定するアルゴリズムを考案した.これらの手法はそれぞれ,大断層面から小さいスケールの断層面まで推定しているものの,震源位置に対してのみクラスタリングを実施しているため,局所構造が存在する場合それらを適切に区分できない可能性があった.
そこでSato et al. (in prep.) は,仮想断層面の法線ベクトルと震源位置による二段階クラスタリング法を提案した.この手法では,予め全てのイベントが何らかの断層面上で発生すると仮定し,その法線ベクトルのクラスタリングを行うことで,複雑な断層面の大局的な面構造を保持したまま断層面を細分化し,断層面の局所構造を把握できる.本研究では,Sato et al. (in prep.) の手法を改良して日本国内で発生した地殻内地震に適用し,様々なスケールの断層面の客観的検出を試みた.
Sato et al. (in prep.) の解析は次の手順で行われる.まず前処理として,個々のイベントに対して法線ベクトルを求める.具体的には,着目しているイベントの周囲から,予め設定した数の最近傍震源を選び,震源位置の主成分分析を行い,得られた最小固有値に対応する固有ベクトルを抽出する.この固有ベクトルを,各イベントの法線ベクトルと定義する.次に,得られた法線ベクトルに対して,コサイン距離を用いた凝集型クラスタリングを行い,法線ベクトルの向きが近いイベントのクラスタを作成する.そして,個々のクラスタに対して,震源位置によるクラスタリングをHDBSCAN (Campello et al., 2013) を用いて行い,距離的に近い小クラスタを作る.この小クラスタに主成分分析を実施して面を作成し,断層面の候補とする.最後に,推定した面を既存の断層モデルやメカニズム解と比較し,検出条件に合う面を断層面として抽出する.
本研究では,Sato et al.の手法のうち,クラスタリングや面検出条件等を改良した.また,気象庁一元化震源カタログからMj 1.0以上のイベントを抽出し,HypoDD (Waldhauser & Ellsworth, 2000) による走時情報のみを用いた相対震源再決定を行った.対象として,本震–余震型の内陸大地震が発生した地域の地震活動と,顕著な群発地震活動が発生する地域に着目した.内陸大地震の例では,2000年鳥取県西部地震(Mw 6.8)や新潟県中越地震(Mw 6.8)などの地震活動カタログに適用した.鳥取県西部地震では,北北西–南南東の主断層と複数の共役断層が知られているが(e.g., Fukuyama et al., 2003; Kato et al., 2021),当手法でもこれらの断層面を検出できた.また,群発地震にも面構造が見受けられる場合があるため,和歌山県北部や能登半島の群発地震活動(e.g., Nakajima, 2023; Amezawa et al., 2023)に対しても当手法を適用した.推定された面構造と地震活動の空間関係について議論する.
なお,本研究は,文部科学省の情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト)JPJ010217の助成を受けたものである.また,気象庁一元化震源カタログを使用した.