[S21P-12] Machine-learning model of GNSS displacement rate estimation using seismic waveforms in western Shikoku
1. はじめに
南海トラフのプレート境界では、固着域と深部安定すべり域の遷移領域においてスロー地震が起きている。スロー地震には、測地学的帯域で観測されるSSEと、地震学的帯域で観測されるtremorやLFE等が知られており、巨大地震との関連が指摘されている(Kato and Obara, 2016)。近年、継続時間が数日程度の短期的SSE(S-SSE)が、GNSSデータを用いて検出されるようになったものの(Nishimura et al., 2013, Okada et al., 2022)、傾斜計やひずみ計に比べてGNSSデータは感度が低いためS-SSEの検出が難しく、特に小さな規模のSSEは見逃している可能性がある。一方で、SSEとtremorの同期現象は、カスカディア沈み込み帯で発見され(Rogers and Dragert, 2003)、その後西南日本でも見つかった(Obara and Hirose, 2006)。Rouet-Leduc et al. (2019)は、カスカディア沈み込み帯の連続地震波形記録に機械学習を適用することで、GNSS観測点の変位速度を推定できることを示した。本研究では、西南日本の連続波形記録を用いて、機械学習により南海トラフ沿いで発生するSSEをより高精度に検出することを目指す。ここでは、その第一歩として、四国西部の連続波形記録を用いて、機械学習により四国西部のGNSS観測点の変位速度を推定する。
2. 機械学習による連続波形記録の特徴量に基づくGNSS変位速度の推定
ここでの目的は、四国西部の連続波形記録の統計的特徴量を用いて機械学習を行い、地表のGNSSの変位速度を推定できるかどうかを調べることである。
連続波形記録は、四国西部の複数のHi-net観測点のデータを用いる。1日ごとに切り出し、平均の除去とデトレンドを行う。5-6 Hz、6-7 Hz、・・・ 14-15 Hzというように1Hz刻みでバンドパスフィルターをかけたデータを作成する。各帯域のデータに対し特徴量として、データの範囲、RMS、モーメント、パーセンタイル(百分位数)を計算する。特徴量は10日間移動平均をとり、さらにそれぞれの特徴量の時間変化を計算して、これらも特徴量として追加する。
測地データは、四国のHi-net観測点の近くにあるGEONET観測点を用いる。Okada et al. (2022)の方法で、機器メンテナンスによる人為的変化・大地震・噴火等によるオフセットを補正し、91日間移動平均でデトレンドし、共通誤差(Common Mode Error)を取り除く。このデータから観測点の変位速度を最小二乗法による線形回帰により求め、10日間移動平均をとる。
地震データの特徴量を学習データ、GNSS変位速度を教師データとして機械学習を行い、四国西部の連続波形記録の特徴量から、SSEにともなうGNSSの変位速度を推定するモデルを構築する。
3. 今後の展望
複数のGNSS観測データについても学習を行い、観測点ごとに変位速度推定モデルを構築する。Nishimura et al. (2013)やOkada et al. (2022)で検出されたS-SSEが検出できるか、さらに既存の手法では検出できないS-SSEが機械学習で検出できるか調べる。連続波形記録を用いた機械学習によるS-SSE検出手法を確立し、将来的には南海トラフ以外の地域にも適用することを目指す。
南海トラフのプレート境界では、固着域と深部安定すべり域の遷移領域においてスロー地震が起きている。スロー地震には、測地学的帯域で観測されるSSEと、地震学的帯域で観測されるtremorやLFE等が知られており、巨大地震との関連が指摘されている(Kato and Obara, 2016)。近年、継続時間が数日程度の短期的SSE(S-SSE)が、GNSSデータを用いて検出されるようになったものの(Nishimura et al., 2013, Okada et al., 2022)、傾斜計やひずみ計に比べてGNSSデータは感度が低いためS-SSEの検出が難しく、特に小さな規模のSSEは見逃している可能性がある。一方で、SSEとtremorの同期現象は、カスカディア沈み込み帯で発見され(Rogers and Dragert, 2003)、その後西南日本でも見つかった(Obara and Hirose, 2006)。Rouet-Leduc et al. (2019)は、カスカディア沈み込み帯の連続地震波形記録に機械学習を適用することで、GNSS観測点の変位速度を推定できることを示した。本研究では、西南日本の連続波形記録を用いて、機械学習により南海トラフ沿いで発生するSSEをより高精度に検出することを目指す。ここでは、その第一歩として、四国西部の連続波形記録を用いて、機械学習により四国西部のGNSS観測点の変位速度を推定する。
2. 機械学習による連続波形記録の特徴量に基づくGNSS変位速度の推定
ここでの目的は、四国西部の連続波形記録の統計的特徴量を用いて機械学習を行い、地表のGNSSの変位速度を推定できるかどうかを調べることである。
連続波形記録は、四国西部の複数のHi-net観測点のデータを用いる。1日ごとに切り出し、平均の除去とデトレンドを行う。5-6 Hz、6-7 Hz、・・・ 14-15 Hzというように1Hz刻みでバンドパスフィルターをかけたデータを作成する。各帯域のデータに対し特徴量として、データの範囲、RMS、モーメント、パーセンタイル(百分位数)を計算する。特徴量は10日間移動平均をとり、さらにそれぞれの特徴量の時間変化を計算して、これらも特徴量として追加する。
測地データは、四国のHi-net観測点の近くにあるGEONET観測点を用いる。Okada et al. (2022)の方法で、機器メンテナンスによる人為的変化・大地震・噴火等によるオフセットを補正し、91日間移動平均でデトレンドし、共通誤差(Common Mode Error)を取り除く。このデータから観測点の変位速度を最小二乗法による線形回帰により求め、10日間移動平均をとる。
地震データの特徴量を学習データ、GNSS変位速度を教師データとして機械学習を行い、四国西部の連続波形記録の特徴量から、SSEにともなうGNSSの変位速度を推定するモデルを構築する。
3. 今後の展望
複数のGNSS観測データについても学習を行い、観測点ごとに変位速度推定モデルを構築する。Nishimura et al. (2013)やOkada et al. (2022)で検出されたS-SSEが検出できるか、さらに既存の手法では検出できないS-SSEが機械学習で検出できるか調べる。連続波形記録を用いた機械学習によるS-SSE検出手法を確立し、将来的には南海トラフ以外の地域にも適用することを目指す。