日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

特別セッション » S21. 情報科学との融合による地震研究の加速

[S21P] PM-P

2023年11月1日(水) 17:00 〜 18:30 P3会場 (F205・6側フォワイエ) (アネックスホール)

[S21P-13] シンプルな数値モデルとPythonライブラリ「PyMC」によるGNSS-Aの測位精度評価

*中村 優斗1、石川 直史1、横田 裕輔2、渡邉 俊一1、永江 航也1 (1. 海上保安庁海洋情報部、2. 東京大学生産技術研究所)

GNSS-音響測距結合方式(GNSS-A)はGNSSと海中音響測距を海上プラットフォームで結合することで海底の絶対位置をセンチメートル単位で測定する技術であり,陸域GNSSでカバーできない海底の地殻変動を捉えることができる.GNSSの誤差要因として,電波の大気遅延やマルチパス等が知られているが,GNSS-AはGNSSの誤差に加えて海中音速場の擾乱による音響測距への影響や,音響機器の特性に起因する測距誤差など,音響測距部分の様々な誤差要因が測位解に影響している.

GNSS-Aの音響測距部分の誤差を低減するため,近年は水槽実験によるソナーの機器特性由来の誤差の調査(永江ほか2023,地震学会)といったハードウェアの評価が進められている.その一方で,数値シミュレーションを用いてGNSS-A疑似データを作ることにより,海中音速場等の誤差要因の影響を評価する試みが行われてきた. Nakamura et al. (2021, FES) ではSnellの法則に基づいた音線計算アルゴリズムを用いて作成した疑似GNSS-Aデータから,海上プラットフォームが航行する測線の形状・面積や,海底に設置した音響基準局のアレイの面積がGNSS-Aの測位解の及ぼす影響について評価し,現在の海上保安庁のGNSS-A観測における測線配置の妥当性について議論した.また,音波の三次元的な屈折を考慮し,PythonのEikonal方程式ライブラリ「PyKonal」(White et al. 2020, SRL)を用いたGNSS-A数値シミュレーターを開発しており,これまでに海中音速場の水平傾斜層に由来する測位誤差について検討を行ってきた(中村ほか2022,地震学会など).

本研究では,音線の屈折による影響を考慮しないシンプルなGNSS-A数値モデルを用いて,GNSS-Aの様々な誤差要因について改めて検討する.作成した疑似データはマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)を取り扱うPythonライブラリ「PyMC」を用いて構築したモデルにより解析した.得られた測位解の事後分布を基に,GNSS-Aの測位解の精度について議論する.