11:15 〜 11:30
[S22-06] 2023年5月5日に石川県能登地方で発生したM6.5の地震時における断層すべり分布のInSAR解析に基づく推定
能登半島北東部において、2020年末頃より地震活動が活発化している。同時期からGNSSにより継続的な地殻変動も観測されており、地震活動活発化や地殻変動の原因およびその後の地震活動の推移について注目されている。このような状況の中、2023年5月5日に気象庁マグニチュード(M)6.5の地震が能登半島北東部の海岸線付近を震源として発生し、最大震度6強を記録した。この地震による地殻変動がGNSSおよびInSARにより検出されており、国土地理院の速報ではALOS-2によって珠洲市北部にて最大隆起約20cm、西向き変位が最大約10cm検出されている。本研究ではこれまでの地震活動活発化や継続的地殻変動とM6.5の地震との関係を明らかにすべく、InSAR解析を用いてM6.5の地震時に生じた断層すべりを推定したので、その結果について報告する。
InSAR解析において、本研究では継続的地殻変動に対してはSentinel-1データを、Mw6.2地震時の地殻変動に対してはALOS-2データを用いた。解析ソフトにはSentinel-1にはISCE ver.2、ALOS-2にはRINC ver.0.45を用いている。継続的地殻変動に対してはGNSSベースの中性大気補正を適用した後にLiCSBASによる時系列解析を行い、2.5次元解析によって準東西および準上下変位に変換した。M6.5地震に対してはGNSS精密軌道歴データが得られないことから大気補正手法を変更し、気象庁MSMモデルによる中性大気補正を適用、またALOS-2はL-band SARで電離層の影響が大きいことからSplit Spectrum Methodによる補正を適用している。Sentinel-1時系列解析により、2020年末から2023年4月頃にかけて、年間1~2cm/year程度の視線方向変位が能登半島北東部の陸域で検出された。2.5次元解析からは変位は主に隆起パターンを示しており、Bayesian Inversionによるモデリングの結果は、矩形断層のすべりや開口よりも球状圧力源の膨張の方がInSAR観測変位をよく説明できた。ALOS-2による地震時地殻変動の検出結果からは、国土地理院の報告と同様の変位を検出できている。なおInSARでは検出困難な変位の南北成分を検出すべくMultiple Aperture Interferometry解析も行なったものの、南北変位については有意なシグナルは検出できなかった。
M6.5地震による断層すべりモデリングにおいて、断層面の幾何情報については、2023/05/12公表の地震調査研究推進本部地震調査委員会の評価資料にある震源再決定分布を元に珠洲沖断層北部の伏在断層を仮定した。ALOS-2で得られた地殻変動分布を元に、Bayesian Inversionによるすべり分布推定を行なった。モデリングの結果、逆断層型で深さ約6kmに最大すべり量約144cmのすべりが推定された。すべりの大部分は深さ10km以浅に集中しており、地震波解析による震源の深さが約12kmであったことから、このM6.5地震は破壊開始後は浅部に向かって破壊が進行していたことが示唆される。今回InSARを用いて推定されたモーメントマグニチュードは6.38となり、気象庁の推定によるCMT解のMw6.2に対し大きい値となった。
本研究はJSPS科研費JP23K17482Aの助成を受けたものです。
InSAR解析において、本研究では継続的地殻変動に対してはSentinel-1データを、Mw6.2地震時の地殻変動に対してはALOS-2データを用いた。解析ソフトにはSentinel-1にはISCE ver.2、ALOS-2にはRINC ver.0.45を用いている。継続的地殻変動に対してはGNSSベースの中性大気補正を適用した後にLiCSBASによる時系列解析を行い、2.5次元解析によって準東西および準上下変位に変換した。M6.5地震に対してはGNSS精密軌道歴データが得られないことから大気補正手法を変更し、気象庁MSMモデルによる中性大気補正を適用、またALOS-2はL-band SARで電離層の影響が大きいことからSplit Spectrum Methodによる補正を適用している。Sentinel-1時系列解析により、2020年末から2023年4月頃にかけて、年間1~2cm/year程度の視線方向変位が能登半島北東部の陸域で検出された。2.5次元解析からは変位は主に隆起パターンを示しており、Bayesian Inversionによるモデリングの結果は、矩形断層のすべりや開口よりも球状圧力源の膨張の方がInSAR観測変位をよく説明できた。ALOS-2による地震時地殻変動の検出結果からは、国土地理院の報告と同様の変位を検出できている。なおInSARでは検出困難な変位の南北成分を検出すべくMultiple Aperture Interferometry解析も行なったものの、南北変位については有意なシグナルは検出できなかった。
M6.5地震による断層すべりモデリングにおいて、断層面の幾何情報については、2023/05/12公表の地震調査研究推進本部地震調査委員会の評価資料にある震源再決定分布を元に珠洲沖断層北部の伏在断層を仮定した。ALOS-2で得られた地殻変動分布を元に、Bayesian Inversionによるすべり分布推定を行なった。モデリングの結果、逆断層型で深さ約6kmに最大すべり量約144cmのすべりが推定された。すべりの大部分は深さ10km以浅に集中しており、地震波解析による震源の深さが約12kmであったことから、このM6.5地震は破壊開始後は浅部に向かって破壊が進行していたことが示唆される。今回InSARを用いて推定されたモーメントマグニチュードは6.38となり、気象庁の推定によるCMT解のMw6.2に対し大きい値となった。
本研究はJSPS科研費JP23K17482Aの助成を受けたものです。