12:00 PM - 12:15 PM
[S22-09] Source Processes of the May 2023 Off Noto Peninsula Earthquake and These Strong Ground Motions
【はじめに】
2023年5月5日14時42分に石川県の能登半島沖でMj6.5の地震が発生した.この地震では最大震度6強の強震動を観測した.また,同日の21:58には同じ領域でMj5.9の地震(最大余震)が発生し,この地震でも最大震度5強を観測している.これらの地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で,地殻内で発生した地震である(気象庁,地震調査委員会,2023).能登地方では2020年12月から活発な地震活動継続しており,5月の地震についても一連の地震活動との関連から注目される.
また,震源域の多くは海域にあるものの一部は陸域にかかっており,震源近傍での強震記録も取得されている.さらに,本震と最大余震では,地震規模の違いがあるにもかかわらず,短周期成分での地震動レベルが同程度である地点も見られ,震源での短周期地震動の生成を考える上でも興味深い.そこで,我々はこれらの地震の発生メカニズムや強震動生成要因を考えるために,近地強震波形を用いた震源過程解析を行った.
【震源過程解析】
解析の際の断層面の設定に当たっては,気象庁一元化震源による本震,余震の情報を参考にした.断層面の基準は本震,最大余震の一元化震源情報を用い,余震分布やF-netによるメカニズム解を参考にして仮の断層面を設定した上で予備的解析を行い,観測波形と合成波形との残差や得られたすべり分布などを考慮して面を設定した.暫定解として,本震は走向:51°,傾斜:55°の長さ15 km,幅14 kmの矩形断層とし,最大余震は走向:54°,傾斜:47°の長さ7 km,幅5 kmの矩形断層としている.なお,小断層サイズは1 km×1 km とした.
震源域が能登半島北端の沖合にあるため,解析に用いる観測点として震源を取り囲むような配置を取ることが難しい.そのため,能登半島にあるKiK-net,K-NETの観測点をできるだけ多く解析に用いることとした.さらに,観測点配置も考慮して,富山県~新潟県南部の観測点も使用したが,震央距離が大きくまた平野部に位置する観測点も含まれるため,観測点の吟味が必要かもしれない.暫定解では16観測点の波形を使用している.
観測された加速度波形に,KiK-net観測点(地中記録)には0.05~0.8 Hz,K-NET観測点には0.05~0.5 Hzをフラットレベルとするバンドパスフィルタをかけた上で積分した速度波形を解析に用いた.また,試算として,0.3 Hz程度を境として,低周波数側の波形と高周波数側の波形に分離した上でそれらを同時にインバージョンに用いる解析も行った.この目的は,低周波数波形で震源の大局的なすべりを再現した上で,高周波数波形でより詳細な震源像が得られることを期待したものである.
Green関数の計算はKohketsu(1985)のreflectivity法により行った.計算に必要な1次元速度構造モデルは,JIVSM(Koketsu et al., 2012)による各観測点直下の層構成を初期モデルとした上で,震源域で発生した小地震の波形を用いてチューニングを行い使用した.
インバージョンはマルチタイムウィンドウ法(Yoshida et al., 1996; Hikima and Koketsu, 2005)により行った.Green関数のライズタイムは0.5 sとし,各小断層のタイムウィンドウは6ないし4個のライズタイムで表現した.
【解析結果】
暫定的な解析結果(Fig.1)では,本震,最大余震ともに南東に傾斜するほぼ並行する断層面となっている.本震の地震モーメントは2.7×1018 Nm (Mw 6.2),最大余震の地震モーメントはM0=3.9×1017 Nm (Mw 5.7)と求まり,これらはF-netによる値とほぼ同じである.本震では,震源の北側浅部に最大すべり約1.4 mの大すべり域が求まった.最大余震は震源付近に約0.7 mの最大すべりが推定された.
波形記録を用いたインバージョンでは高周波数成分の生成に寄与する震源像を直接推定することは難しいが,今回推定されたすべりの時空間分布を考慮して,本震・最大余震の強震動生成要因についても検討する予定である.
謝辞:本検討ではKiK-netおよびF-netメカニズム解,JMA一元化データを使用させて頂きました.
2023年5月5日14時42分に石川県の能登半島沖でMj6.5の地震が発生した.この地震では最大震度6強の強震動を観測した.また,同日の21:58には同じ領域でMj5.9の地震(最大余震)が発生し,この地震でも最大震度5強を観測している.これらの地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で,地殻内で発生した地震である(気象庁,地震調査委員会,2023).能登地方では2020年12月から活発な地震活動継続しており,5月の地震についても一連の地震活動との関連から注目される.
また,震源域の多くは海域にあるものの一部は陸域にかかっており,震源近傍での強震記録も取得されている.さらに,本震と最大余震では,地震規模の違いがあるにもかかわらず,短周期成分での地震動レベルが同程度である地点も見られ,震源での短周期地震動の生成を考える上でも興味深い.そこで,我々はこれらの地震の発生メカニズムや強震動生成要因を考えるために,近地強震波形を用いた震源過程解析を行った.
【震源過程解析】
解析の際の断層面の設定に当たっては,気象庁一元化震源による本震,余震の情報を参考にした.断層面の基準は本震,最大余震の一元化震源情報を用い,余震分布やF-netによるメカニズム解を参考にして仮の断層面を設定した上で予備的解析を行い,観測波形と合成波形との残差や得られたすべり分布などを考慮して面を設定した.暫定解として,本震は走向:51°,傾斜:55°の長さ15 km,幅14 kmの矩形断層とし,最大余震は走向:54°,傾斜:47°の長さ7 km,幅5 kmの矩形断層としている.なお,小断層サイズは1 km×1 km とした.
震源域が能登半島北端の沖合にあるため,解析に用いる観測点として震源を取り囲むような配置を取ることが難しい.そのため,能登半島にあるKiK-net,K-NETの観測点をできるだけ多く解析に用いることとした.さらに,観測点配置も考慮して,富山県~新潟県南部の観測点も使用したが,震央距離が大きくまた平野部に位置する観測点も含まれるため,観測点の吟味が必要かもしれない.暫定解では16観測点の波形を使用している.
観測された加速度波形に,KiK-net観測点(地中記録)には0.05~0.8 Hz,K-NET観測点には0.05~0.5 Hzをフラットレベルとするバンドパスフィルタをかけた上で積分した速度波形を解析に用いた.また,試算として,0.3 Hz程度を境として,低周波数側の波形と高周波数側の波形に分離した上でそれらを同時にインバージョンに用いる解析も行った.この目的は,低周波数波形で震源の大局的なすべりを再現した上で,高周波数波形でより詳細な震源像が得られることを期待したものである.
Green関数の計算はKohketsu(1985)のreflectivity法により行った.計算に必要な1次元速度構造モデルは,JIVSM(Koketsu et al., 2012)による各観測点直下の層構成を初期モデルとした上で,震源域で発生した小地震の波形を用いてチューニングを行い使用した.
インバージョンはマルチタイムウィンドウ法(Yoshida et al., 1996; Hikima and Koketsu, 2005)により行った.Green関数のライズタイムは0.5 sとし,各小断層のタイムウィンドウは6ないし4個のライズタイムで表現した.
【解析結果】
暫定的な解析結果(Fig.1)では,本震,最大余震ともに南東に傾斜するほぼ並行する断層面となっている.本震の地震モーメントは2.7×1018 Nm (Mw 6.2),最大余震の地震モーメントはM0=3.9×1017 Nm (Mw 5.7)と求まり,これらはF-netによる値とほぼ同じである.本震では,震源の北側浅部に最大すべり約1.4 mの大すべり域が求まった.最大余震は震源付近に約0.7 mの最大すべりが推定された.
波形記録を用いたインバージョンでは高周波数成分の生成に寄与する震源像を直接推定することは難しいが,今回推定されたすべりの時空間分布を考慮して,本震・最大余震の強震動生成要因についても検討する予定である.
謝辞:本検討ではKiK-netおよびF-netメカニズム解,JMA一元化データを使用させて頂きました.