[S22P-03] Driving processes behind hypocenter migration associated with earthquake swarms in the northeastern Noto Peninsula, Japan
群発地震は明瞭な本震をもたず, 時空間的にまとまって発生する地震活動である. 震源マイグレーション (地震活動域の時空間発展) は群発地震のもつ特徴の一つである. 群発地震活動域の最外縁部 (以降, swarm front) では, 原点となる震源からswarm front までの距離の2乗が時間に比例する震源マイグレーションが観測されており, それは間隙流体圧の拡散で説明されてきた (Shapiro et al., 1997). 震源マイグレーションの速さに着目すると, swarm front では約0.1 km/day, 群発地震活動域の内部 (以降, swarm interior) では 約10 km/day という著しい違いが報告されている (e.g., De Barros et al., 2020). そして, swarm interior で観測される震源マイグレーションを説明するには間隙流体圧の拡散だけでなく, スロースリップなどの他の駆動要因を考慮する必要があると指摘されている (e.g., Dublanchet & De Barros, 2020). 群発地震の駆動要因を理解するためにはswarm front とswarm interior の両方で震源マイグレーションの特徴を調べることが重要であるが, 後者における検討は十分に行われていない. そこで本研究では, 能登半島北東部で起きた群発地震を対象に震源マイグレーションの系統的抽出を行い, その時空間的な特徴とその背後にある物理過程を検討した.
2018年以降, 能登半島北東部では群発地震活動が継続している. 群発地震の震源分布は,活動域ごとに南部・西部・北部・北東部のクラスタ (それぞれ, S, W, N, NEクラスタ) に大別される. 2018年に Sクラスタで始まった群発地震活動は2020年12月に活発化し, W, N, NEクラスタの順で活動域が広がった. Swarm front において, Sクラスタを除くすべてのクラスタで, 拡散係数が約 0.1 m2/s の震源マイグレーションが報告されている (Amezawa et al., 2023). 一方で, Sクラスタでは地震活動が間欠的に発生しており, 震源マイグレーションの特徴は系統的に調べられていない.
本研究では, 2018年5月から2022年6月にかけて発生したマグニチュード 0.0以上の20,398個の地震について Double-Difference 法 (Waldhauser & Ellsworth, 2000) を用いて震源再決定された震源分布 (Amezawa et al., 2023) を使用した.
震源マイグレーションを以下の2段階に分けて客観的に抽出した. はじめに, 時空間ハフ変換 (Sagae et al., 2023, JGR) を用いて震央マイグレーション (2-D マイグレーション) を抽出した (Sagae et al., 2023, JpGU). 次に, 2-D マイグレーションに属する地震について深さと時間の線形回帰を行った. そして, 2-Dマイグレーションに深さの時間変化の情報を加えることで震源マイグレーションを抽出した.
解析の結果, 震源マイグレーションの移動距離 (Lmi), マイグレーション速度 (Vmi), そして継続時間 (T) との間に2つの異なるスケーリング則が成り立つことが分かった. 1つ目は震源マイグレーションが拡散的な成長を示す場合であり, Lmi ∝ T0.5, Vmi ∝ T-0.5 の関係が成り立つ. 2つ目は震源マイグレーションの移動距離が一定だが, 様々な速度を示す場合であり, Lmi ~ const, Vmi ∝ T-1 の関係が成り立つ. 前者の関係はSクラスタの15 km 以深で, 後者はSクラスタの15 km 以浅で観測された. また他のクラスタでは, 両方の関係が観測された.
Sクラスタの15 km 以深ではリング状の震源分布をしており, その分布に沿って上方方向へ向かう震源マイグレーションが間欠的に起きていることが分かった. その拡散係数は10 m2/s を超える値を示すことから, リング状の震源分布に沿って急激かつ間欠的な間隙流体圧の時空間変化が起きたことが示唆される.
Nクラスタでは拡散係数 0.1 m2/s の震源マイグレーションが観測されるとともに, Lmi が約1 km でVmi が1 – 10 km/day の震源マイグレーションも観測された. Lmi がほぼ一定となることは群発地震活動域のクラスタサイズに対応すると考えられ, そのサイズが飽和した状態では, スロースリップに伴う応力変化といった間隙流体圧の拡散以外の駆動要因が震源マイグレーションの背後に存在する可能性が示唆される.
謝辞:本研究はJSPS科研費 JP21H05205 の助成を受けたものです. 記して感謝申し上げます.
2018年以降, 能登半島北東部では群発地震活動が継続している. 群発地震の震源分布は,活動域ごとに南部・西部・北部・北東部のクラスタ (それぞれ, S, W, N, NEクラスタ) に大別される. 2018年に Sクラスタで始まった群発地震活動は2020年12月に活発化し, W, N, NEクラスタの順で活動域が広がった. Swarm front において, Sクラスタを除くすべてのクラスタで, 拡散係数が約 0.1 m2/s の震源マイグレーションが報告されている (Amezawa et al., 2023). 一方で, Sクラスタでは地震活動が間欠的に発生しており, 震源マイグレーションの特徴は系統的に調べられていない.
本研究では, 2018年5月から2022年6月にかけて発生したマグニチュード 0.0以上の20,398個の地震について Double-Difference 法 (Waldhauser & Ellsworth, 2000) を用いて震源再決定された震源分布 (Amezawa et al., 2023) を使用した.
震源マイグレーションを以下の2段階に分けて客観的に抽出した. はじめに, 時空間ハフ変換 (Sagae et al., 2023, JGR) を用いて震央マイグレーション (2-D マイグレーション) を抽出した (Sagae et al., 2023, JpGU). 次に, 2-D マイグレーションに属する地震について深さと時間の線形回帰を行った. そして, 2-Dマイグレーションに深さの時間変化の情報を加えることで震源マイグレーションを抽出した.
解析の結果, 震源マイグレーションの移動距離 (Lmi), マイグレーション速度 (Vmi), そして継続時間 (T) との間に2つの異なるスケーリング則が成り立つことが分かった. 1つ目は震源マイグレーションが拡散的な成長を示す場合であり, Lmi ∝ T0.5, Vmi ∝ T-0.5 の関係が成り立つ. 2つ目は震源マイグレーションの移動距離が一定だが, 様々な速度を示す場合であり, Lmi ~ const, Vmi ∝ T-1 の関係が成り立つ. 前者の関係はSクラスタの15 km 以深で, 後者はSクラスタの15 km 以浅で観測された. また他のクラスタでは, 両方の関係が観測された.
Sクラスタの15 km 以深ではリング状の震源分布をしており, その分布に沿って上方方向へ向かう震源マイグレーションが間欠的に起きていることが分かった. その拡散係数は10 m2/s を超える値を示すことから, リング状の震源分布に沿って急激かつ間欠的な間隙流体圧の時空間変化が起きたことが示唆される.
Nクラスタでは拡散係数 0.1 m2/s の震源マイグレーションが観測されるとともに, Lmi が約1 km でVmi が1 – 10 km/day の震源マイグレーションも観測された. Lmi がほぼ一定となることは群発地震活動域のクラスタサイズに対応すると考えられ, そのサイズが飽和した状態では, スロースリップに伴う応力変化といった間隙流体圧の拡散以外の駆動要因が震源マイグレーションの背後に存在する可能性が示唆される.
謝辞:本研究はJSPS科研費 JP21H05205 の助成を受けたものです. 記して感謝申し上げます.