The 2023 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (Sep. 16th)

Special session » S22. Earthquake swarms and M6.5 earthquake in/around the northeastern Noto Peninsula

[S22P] PM-P

Tue. Oct 31, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P4 (F205 and 6 side foyer) (Hall Annex)

[S22P-05] Stress drop of the earthquake swarm in the northeastern Noto Peninsula

*Mitsuteru Fukuoka1, Yoshihiro Hiramatsu1, Takuji Yamada2 (1. Kanazawa Univ. , 2. Ibaraki Univ. )

はじめに
石川県能登半島の群発地震は2018年頃から地震回数が増加傾向となり、2020年12月頃から地震活動が活発化した。2023年5月5日にはMJMA6.5の地震が発生した。この群発地震の成因として、地下の流体の存在と地震活動や地殻変動への流体の関与が指摘されている(e.g., Nakajima, 2022; Amezawa et al., 2023; Nishimura et al., 2023; 吉村ほか, 2023)。群発地震における応力降下量を解析した研究では、群発地震発生初期の応力降下量が小さいこと(Yoshida et al., 2019)や群発地震時の応力降下量が通常時の地震の応力降下量より小さいこと(Yamada et al., 2015)が報告されており、その原因として流体の関与が挙げられている。本研究では、珠洲市周辺で発生した群発地震の応力降下量の時空間的な変動を調べ、この群発地震活動の特徴を応力降下量の観点から明らかにすることを目的とする。

データと解析手法
本研究の解析期間は2018年1月1日〜2022年11月30日である。震源データはDD法を用いて震源再決定されたデータを用いた(Nishimura et al., 2023)。波形データは気象庁、防災科学技術研究所Hi-net、東京大学、京都大学の地震観測点の速度型地震計で記録されたものであり、サンプリング周波数は100 Hzである。上記の期間内に能登半島北東部で発生した90地震(3.0≦MJMA≦5.4)を解析対象とした。 本研究ではYamada et al. (2021)の手法を改良し、以下の手順で解析を行った。まず、観測波形に含まれる震源の情報以外の影響を除去するため、解析対象地震の震源近傍(対象地震から1km未満、マグニチュード差が0.5以上)で発生した複数の地震の波形を経験的グリーン関数(EGF)として選定した。次に、P波では上下成分、S波では水平2成分の波形のフーリエ変換により速度スペクトルを計算し、解析対象地震とEGF地震の速度スペクトルの比を求めた。その際、解の安定性を確保するため、3つの時間窓についてスペクトル比を計算している(Imanishi and Ellsworth, 2006)。具体的には、P波では2.56秒の長さの時間窓を0.16秒ずつずらしたもの、S波では長さ5.12秒間の窓を0.64秒ずつずらした3時間窓を用いている。さらに、3つの時間窓から計算されたスペクトル比とω2モデルに基づく理論スペクトル比との残差の二乗和を最小にする放射パターン係数と地震モーメントの積、およびコーナー周波数をグリッドサーチを用いて推定した。最後に、解析対象地震の地震モーメントの値として、F-netのCMT解で求められている地震についてはその値を使用し、それ以外はMJMAがMwと等しいと仮定してMJMAから地震モーメントの値を推定(Hanks and Kanamori, 1979)した上で、推定されたコーナー周波数から応力降下量を計算した(Madariaga, 1976)。各解析対象地震について、応力降下量が推定された全観測点の対数平均をとり、その地震の応力降下量および推定誤差を求めた。

結果と考察
5観測点以上で適切にコーナー周波数が推定された地震数は、P波の解析では82地震、S波では90地震であり、求められた応力降下量の値は、P波、S波の解析でそれぞれ13MPa(0.6〜94MPa)、19MPa (1.1〜94MPa)であった。本研究の結果は、地震モーメントとコーナー周波数のスケーリング則(Mo ∝ fC-3)を満たす。また、応力降下量の空間分布は不均質であり、北、東クラスターの傾斜方向断面での応力降下量分布は、複数の断面において浅部端と深部端で大きい傾向が見られた。断層の浅部端と深部端は剪断強度の高い領域に相当するため、応力降下量が大きい地震が発生する一方で、断層中央部では断層内部への流体の貫入による間隙水圧の上昇によって剪断強度が低下し、地震時の応力降下量が小さくなった可能性が考えられる(Yamada et al., 2015)。 各クラスターでの活動初期にはM3以上の地震の発生数が少なく、Yoshida et al. (2019)のような活動初期に応力降下量が小さくなるような時間的変動は確認できなかった。

謝辞
本研究の解析にあたっては、気象庁、防災科学技術研究所Hi-netおよびF-net、東京大学地震研究所、京都大学防災研究所のデータを使用しました。また、本研究の実施にあたっては、科学研究費補助金(特別研究促進費22K19949)「能登半島北東部において継続する地震活動に関する総合調査」の一部を使用しました。記して感謝申し上げます。