日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

特別セッション » S22. 能登半島北東部の群発地震とM6.5の地震

[S22P] PM-P

2023年10月31日(火) 17:00 〜 18:30 P4会場 (F205・6側フォワイエ) (アネックスホール)

[S22P-10] 2023年能登地方を震源とする地震による木造建築の地震被害調査
その2 寺院建築物の外観目視調査に基づく被害

*澤田 悠斗1、荒川拓磨 拓磨1、芝口 ほのか1、須田 達1、佐藤 弘美1、村田 晶2 (1. 金沢工業大学、2. 金沢大学)

2023年5月5日に石川県能登半島沖を震源として発生した地震において、被害が顕著であった珠洲市正院地区を中心に建築物の被害調査を実施した。その1に引き続き、本報では社寺建築および同敷地内の建築物と工作物を対象に、外観目視調査に基づいた被害状況を報告する。
調査期間は5月24~25日および5月31日の3日間とし、日本建築学会北陸支部災害部会によって実施された。調査メンバーは金沢工業大学と金沢大学のそれぞれ教員と学生を中心に総計13人で構成した。調査方法は被害状況を把握するために調査シート 1) に基づいて建物の外観目視による被害調査と被害状況の写真記録を行った。本調査に先だって5月5日に初動調査を実施しており、概観した被害状況から調査範囲を定めて、範囲内の寺院および神社建築物あわせて50件、161棟を対象に建築物の位置を確認しながら作成した調査シートにより建物概要および被害状況を記録した。主な調査項目は、周辺の地形状況、構造、構法、建物用途等の種類、屋根や基礎の仕様、階数など建物の構造特性に関する項目と周辺地盤、門扉、屋根、壁、基礎、腐朽劣化などの被害程度に関する項目とし、各被害を総合して被害程度 1) を倒壊、大破、中破、小破、軽微、無被害の6段階で判定した。
調査の結果、社寺建築物における本殿および本堂は無被害40%と小破32%となり、その他、数棟で大きな被害も受けているが倒壊した建築物はない。敷地内の本殿本堂以外の伝統木造建築物においても無被害56%であった。一方で鐘楼や手水舎のような、ほとんど壁が無く、柱4本で屋根を支える構造の建築物は無被害41%で最も多いものの、倒壊11%、大破4%と大きな被害程度となった。また鳥居および灯籠においては倒壊で最も大きく34%であり、特に石造による鳥居の倒壊は顕著であった。

謝辞 本調査にあたり、建物所有者の皆さまには被災直後にもかかわらずご協力いただき感謝申し上げます。関西大学西川英佑氏には調査に同行頂くと共にその後のデータ集計にご協力いただきました。ここに謝意を示します。

参考文献
1) 須田達、他:2011 年東北地方太平洋沖地震による木造建物の被害調査(その1)~(その3)、日本地震工学会・大会-2011梗概集、pp.68-73