日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

B会場

特別セッション » S23. 大正関東地震から100年:関東地方における地震研究の展開

[S23] AM-2

2023年10月31日(火) 11:00 〜 12:15 B会場 (F201)

座長:室谷 智子(国立科学博物館)、山下 幹也(産業技術総合研究所)

12:00 〜 12:15

[S23-09] 関東大震災をどう伝え、どう残すか -デジタルコンテンツの活用-

*室谷 智子1 (1. 独立行政法人 国立科学博物館)

1923年9月1日に発生した地震(大正関東地震)によって関東地方に甚大な被害を及ぼした関東大震災から、今年は100年という節目の年となった。国立科学博物館(東京・上野公園、以下科博)では、2023年9月1日から11月26日までの約3か月間、関東大震災100年企画展「震災からのあゆみ -未来へつなげる科学技術―」を開催することとした。本展示では、企画展示室、地球館オープンスペース、日本館中央ホール(※10月11日から)の3か所を会場とし、大正関東地震とその被害、関東大震災からの復興、この100年間の地震防災・減災研究、今私たちが災害に備えること、過去から未来への災害の継承について紹介する。この100年の間に私たちがどう自然を理解して自然災害から生活を守るために科学技術を発展させ、地震学および関連分野や防災・減災の研究の進歩を身近な生活に活かしてきたか、また、関東大震災を始めとする災害を人々の記憶に残るような展示方法を検討し、災害を我が事として考えるきっかけとなるような展示を目指した。

しかしながら、関東大震災に関する資料や調査・研究成果は膨大で、本展示では一部しか紹介できない。本展のテーマは「未来へつなげる科学技術」であり、実際に展示できない部分を、デジタルツインを活用するなどデジタルやオンラインのコンテンツも作成し、展示を充実することとした。科博は、東京帝国大学地震学教室や科博職員が撮影した関東大震災の被害写真を、多く所蔵している。それらの写真を地図上で現在の場所と重ねることで、実際に大災害が関東地方で起きたこと、100年前と現在の違いからこの間にどう街が変わっていったのかを、考えるきっかけになる。しかし当時の写真はモノクロで、震災を知らない私たちから見れば、遠い昔の出来事で他人事に思えてしまう。今回、人工知能(AI)や当時の資料をもとに人の手によって補正をしたカラー写真を展示する。モノクロ写真では、なかなか伝わらない火災の状況や人々の表情などがより鮮明となり、身近な出来事に感じることができる。その他にも最新の科学技術を使って、これまでにない見せ方で歴史資料を紹介する展示もあり(中央ホールにて10月11日より展示)、歴史的資料が長く残って来たからこそ、今実現できる展示となった。
 本発表では、実際の展示の様子や、デジタルコンテンツについて紹介する。

 本展示は、360度VR撮影を行い、企画展終了後も当館ホームページ上でVR展示を見ることができる。VR展示では、実際に展示することができなかった情報を追加していくことを検討している。展示を見に来られない遠方の方だけでなく、一度見た方や、今後の学習活動などに活用してもらえることを期待する。

 最後に、本展示には、多くの皆様のご協力をいただきました。ここに記して、感謝申し上げます。