The 2023 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Sep. 16th)

Special session » S23. 100 years after the Great Kanto earthquake: development of earthquake research in the Kanto region

[S23P] PM-P

Tue. Oct 31, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P8 (F201 and 3 side foyer) (Hall Annex)

[S23P-04] Study on the seismic intensity of earthquakes beneath the Kanto region: Classification of earthquakes with an anomalous seismic intensity

*Motoko ISHISE1, Ryoichi Nakamura2, Shiina Takahiro3 (1. Yamagata Univ., 2. Naka Earthquake Research, 3. AIST)

■はじめに
 一般に,地震時の揺れは震源直上で最も強く,そこから遠ざかるにつれ弱くなるような同心円状の震度分布が期待される.しかし,太平洋スラブ内の深発地震では,震央から離れた北海道から関東地方の前弧側の地域の震度が震央に近い日本海岸の地域に比べて大きくなることが知られていおり,そのような震度分布を異常震域と呼ぶ(例えば,Utsu, 1966:Furumura & Kennett, 2005).非同心円状の震度分布は,関東地方の直下で発生する地震についても報告されている(Nakanishi & Horie, 1980; 中村・他,2007).中村・他 (投稿中)は,そのような直下型地震に対する異常震域に深さ50 km程度以浅の減衰構造が強く影響していることを示唆した.しかしながら,深発地震の場合に比べて,異常震域の震度分布のパターンやそれをもたらす地震についての詳細な検討は進んでおらず,震度分布のパターンや地下構造との関係についてもよく分かっていない .そこで我々は,関東地方下で発生する地震の震度分布の特徴,地下構造,および地震活動の関連性についての検討に着手した.震源と震度分布の特徴の関係を明らかにすることは,震度分布に相当する情報のみが残されている過去の被害地震(安政江戸地震など)の震源推定への活用が期待され,近い将来において発生が危惧されている首都直下地震の被害軽減につながると考えている.本発表では,2000年以降の有感地震の震度データ(気象庁震度データベース検索)を用いて震源地ごとの震度分布の特徴を目視にて整理し,その特徴と減衰構造との関連性の予備的な検討結果を報告する.例として千葉県北西部を震源とする地震の震度分布の特徴,および減衰構造との関連性について示す.

■千葉県北西部の地震の震度分布の特徴
 千葉県北西部を震源とする有感地震の震央は,①茨城―千葉の県境付近((a)深さ40〜50km,(b)60〜70km)②東京湾北東岸付近(東経140度以東の深さ60〜70km),③東京湾北部から内陸にかけての地域((a)深さ60〜70km,(b)100km以深)に分布している.各々の震度分布には次のような特徴が見られる:① (a)深さ40〜50kmの地震は県境の西端付近に集中しており,PHSスラブ上面の地震と考えられる.これらの震度分布には,震源の南東に位置する千葉県での震度が,震央から等距離にある他の地域と比べて小さくなる傾向がある.(b) 深さ60〜70kmの地震は県境の中央部付近に集中しており,発震機構や震源位置からPACスラブ上面の地震と考えられる.これらの地震については,千葉〜茨城一帯の震度が,震央距離が等距離の他の地域と比べて小さくなる傾向がある.また,サンプルは少ないが,深さ60km付近で発生する地震の震度は,震源よりも南側の地域(房総半島,埼玉県,東京都)で小さくなる傾向が見られる. ②PHSスラブ内部,太平洋スラブ上面・内部の地震が該当する.震度分布の特徴は,(a)震央付近で最大震度となり,東京湾西岸地域,茨城県および千葉県の順に震度が小さくなる,(b)震央付近の震度は大きく,東京湾西岸の北緯35.5度付近において周辺よりも震度が小さくなる(明瞭でないこともある),の2パターンが観測される.震源位置による震度分布のパターンの違いは明らかではない.③(a)震央付近で最大震度となり,東京湾西岸地域,茨城県および千葉県の順に震度が小さくなる(②aと同様)事例と,震央付近で最大震度となり,東京湾西岸地域で震度が大きく,茨城県で震度が小さくなる事例,がある.震源位置および発震機構から,前者はPHSスラブ内部の地震が主で,後者は太平洋スラブ上面の地震の特徴と考えられる.(b)太平洋スラブ上面の地震は,震央距離が等距離の他の地域と比べて千葉県と茨城県で震度が小さくなる特徴が見られ,より深い太平洋スラブ内部の地震については,震央よりも北の地域において震度が大きくなる傾向が見られた.

■減衰構造と千葉県北西部の地震の震度分布の関係
 表層地盤に基づく関東地域の地盤増幅率には顕著な地域性が見られ,これが地域的な震度に与える影響は大きいと考えられる.しかしながら,今回検討した震度分布には,氷層地盤から期待されるよりも広域的な変化が顕著に見られる.このことは,減衰構造が異関東地方で発生する地震の震度分布に強く影響していることを改めて示唆している.関東地域の深さ20〜50kmには,千葉県―茨城県県境付近で東西に伸びる高減衰域,房総半島の中央部下の高減衰域,東京湾下に広がる低減衰域の存在が知られている(Nakamura et al., 2006;Nakajima, 2014).このうち,高減衰域は,上述の震度が小さくなる地域と震源地との間に位置しており,震度が小さくなる原因が減衰構造と関係していることが示唆される.加えて,詳細な減衰構造(中村・他,投稿中)と同地域の震源位置を対応させたところ,震源の多くは高減衰域と低減衰域の境界付近に位置することが示された.

■今後の方針
 今回は目視で震度分布の分類を行なった.今後は,計測震度値を用い,パターン認識などを活用することでより客観的に分類・分析を行う.