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[S01-01] 地震変位場の近地項の距離減衰に関する解析的考察:線震源・円形震源への拡張
近年、2016年熊本地震、2023年トルコ・カフラマンマラシュ地震、2024年能登半島地震など、断層ごく近傍で地震記録や測地記録が稠密に観測される事例が増えてきた。そのため、Aki and Richards (1980, 2002) における地震波の近地項・中間項・遠地項の寄与が改めて着目されている。鈴木・他 (2024, JpGU) では、ダブルカップル点震源から放射される地震波変位場の近地項の距離減衰に関する解析的考察を行った。ダブルカップル点震源から放射される地震波の変位場は、モーメントテンソルとグリーンテンソルの空間微分の畳み込みによって表される (Aki & Richards (1980, 2002))。近地における地震波の特性についての既往研究は様々あるが、永久変位およびr→0としたときの結果(e.g. Wu & Ben-Menahem, 1985)を除いて、変位および速度の震源距離rの依存性、すなわち距離減衰性については十分に解明されていない。そこで、複数の代表的なmoment rate関数(デルタ関数、Box-car関数、二等辺三角形の関数、smoother ramp関数など)を用いて、変位と速度の近地項の距離減衰の解析解を導出した。その結果、変位の近地項は、震源時間関数に依らず 震源距離に対してr-2で減衰することを証明した。また、速度の近地項の距離減衰は、震源時間関数の形状に 依って減衰率が切り替わる距離が一意に定まり、この境界点より近距離ではr-2、遠距離ではr-3に移行することを明らかにした。最後に、この解析結果と数値積分を用いて近地項を計算した結果との整合性を検証した。また、簡単な震源時間関数を用いて、最大速度の減衰率に関する実験を行った。
本研究では、震源のモデルに線震源を仮定し、moment rate関数にBox-car関数を用いて、近地項、中間項、遠地項と、これらの和を成分ごとに解析的に計算し、変位の距離減衰率を調べた。その結果、線震源のすべりの方向と垂直の方向成分について、特定の観測点位置で中間項S波成分のみ現れることで、遠地でも距離減衰率がr-2となることや、近地項、中間項、遠地項の総和の波形に永久変位の波形が強く残ることで、遠地でもω依存性がω-1となるような観測点の位置が存在することがわかった。
また、Cara & Bour (1995)では、震源にstopping phaseを考慮しない円形震源を仮定して変位場の解析解を導出したが、観測点位置に制約を設けており、任意の観測点位置における結果に対応していない。そのため本研究では、震源のモデルに円形震源をCara & Bour (1995)と同様の条件で仮定し、数値積分を用いて任意の観測点位置について、震源近傍から遠地までの変位場を調べた。その結果、線震源において中間項S波成分のみ現れた観測点位置では、他の項も見られたことで、特定の観測点位置で中間項S波成分のみ現れる結果は、線震源モデル特有のものと考えられる。しかし別に、特定の観測点位置で、遠地でもω依存性がω-1となるような観測点の位置が存在することがわかった。
近年の断層近傍の強震波形を分析すると、特定の成分において、ω依存性がω-1となるような観測点の位置が存在することがわかっている。本研究では、この原因について、理論および数値計算から得られる予察と、観測事実との整合性について議論する。
本研究では、震源のモデルに線震源を仮定し、moment rate関数にBox-car関数を用いて、近地項、中間項、遠地項と、これらの和を成分ごとに解析的に計算し、変位の距離減衰率を調べた。その結果、線震源のすべりの方向と垂直の方向成分について、特定の観測点位置で中間項S波成分のみ現れることで、遠地でも距離減衰率がr-2となることや、近地項、中間項、遠地項の総和の波形に永久変位の波形が強く残ることで、遠地でもω依存性がω-1となるような観測点の位置が存在することがわかった。
また、Cara & Bour (1995)では、震源にstopping phaseを考慮しない円形震源を仮定して変位場の解析解を導出したが、観測点位置に制約を設けており、任意の観測点位置における結果に対応していない。そのため本研究では、震源のモデルに円形震源をCara & Bour (1995)と同様の条件で仮定し、数値積分を用いて任意の観測点位置について、震源近傍から遠地までの変位場を調べた。その結果、線震源において中間項S波成分のみ現れた観測点位置では、他の項も見られたことで、特定の観測点位置で中間項S波成分のみ現れる結果は、線震源モデル特有のものと考えられる。しかし別に、特定の観測点位置で、遠地でもω依存性がω-1となるような観測点の位置が存在することがわかった。
近年の断層近傍の強震波形を分析すると、特定の成分において、ω依存性がω-1となるような観測点の位置が存在することがわかっている。本研究では、この原因について、理論および数値計算から得られる予察と、観測事実との整合性について議論する。