9:30 AM - 9:45 AM
[S01-03] Numerical simulation of an Lg wave beneath bay topography
Lg波は地表とモホ面の間を多重反射しながら伝播する地殻内トラップS波である.Lg波は卓越周波数0.2~5Hz,群速度2.8km/s~3.5km/sの範囲にエネルギーを持つ.また地殻・上部マントルの不均質性に敏感であるという特徴を持つ(Kennett, 1989, GJI).Furumura et al. (2014, PEPS)は,日本海を伝播するLg波が,地殻の薄化と海水の影響により除去されることを明らかにした.また日本のLg波伝播特性については,解像度数十キロスケールの広域を対象とした研究が主に実施されてきた(例えばFurumura and Kennett 2001,BSSA).しかしながら湾などのそれよりも小スケールな地形,構造におけるLg波のふるまいは未だ解明されていない.ここでLg波に顕著な影響を与えることが期待される湾として駿河湾を紹介する.駿河湾は,静岡県に位置する日本一深い湾である.またプレート境界が湾内に入り込んでいるため,溝状に地形を有し地殻厚,堆積層厚変化に富んだ湾でもある(図 a, b).Yasumoto et al. (2023, AGU)では,地域的なLg波伝播特性の解明を目的として駿河湾における記録の解析を行った.この研究では,駿河湾西方遠方から到来するLg波が駿河湾を横切る際に振幅が顕著に減少するという結果が得られた.彼らは原因として,Lg波の伝播に海水の存在,駿河湾直下の地殻構造変化などが影響している可能性を挙げている.しかしながら駿河湾に海底地震計が存在しないことや構造の複雑性から原因を解析的に解き明かすことは困難である.そこで本研究では数値シミュレーションを用いて,本現象の発生要因を調査することとした. 2次元有限差分法のP-SV成分で駿河湾西方遠方から到来するLg波についてのシミュレーションを実施した.数値計算プログラムとしては,地震波伝播をモデル化するためのオープンソース統合並列シミュレーションコードOpenSWPC(Maeda et al., 2017, EPS)を使用した.シミュレーションに使用した地震構造モデルはJIVSM(Koketsu et al. 2012, WCEE)であり,1Hzよりも低い周波数帯の波を主に放射するような震源を設定した.計算結果としてはYasumoto et al. (2023, AGU)と同様に,駿河湾をLg波が横切る際の振幅が減少した(図 c)ことに加えて,湾西岸側でLg波の振幅が増幅する現象が確認された.この振幅増幅は,湾西岸側の堆積層が厚いことが原因の可能性が考えられ(図b),湾地形がもたらす効果を明らかにするうえで精査が必要であることが分かった.そこで湾を西から横切る際のLg波の振幅減少に堆積層厚変化以外の要素がどの程度寄与しているのか数値シミュレーションを用いて調査する.