[S03P-04] 東北地方太平洋沖地震後の地震波減衰の時間変化(その2)
東北地方太平洋沖地震後の地表変位を説明するためには,アフタースリップと粘弾性緩和,そして間隙弾性反発が必要であると考えられている.一方,それぞれの地表変位に対する寄与はトレードオフの関係にあるため,地表変位観測のみでは上記3つの大きさを分離することは難しいという問題がある.本研究ではそのようなトレードオフに対し,地震波減衰の時間変化から観測的制約を与えることを目的とする.
主に2011-2023年に東北地方太平洋沖地震の震源域で発生したM3.0-5.0の地震が解析対象であり,古い順に全地震数の1/3を選択し,1つ目のデータセットとした.まず,データセットの中で震源間距離≦5 kmである地震ペアを選択し,同一観測点における P 波初動のスペクトル比を計算した.次に,2つの地震の平均走時で割り,震源距離の影響を取り除いた.最後に,スペクトル比の分母の地震が分子よりも必ず古くなるような全ての地震ペアをスタックすることで観測スペクトル比を計算し,それに理論スペクトル比をフィッティングした.もし2つの地震間で減衰が変化していなければスペクトル比の傾きはゼロになるのに対し,時間変化があると正(減衰が小さくなる場合)または負(減衰が大きくなる場合)の傾きを持つ.このように,本研究ではスペクトル比の傾きから減衰の時間変化を推定した.以上の操作を,データセットの地震を古い順に10個ずつ入れ替える毎に行い,減衰の時間変化を追跡した.
得られた結果は,本震後に減衰が指数関数的に減少したことを示している.いくつかの領域に分けて同様の解析を行ったが,本震の震源を含むデータセットの結果が,最も初動の減衰変化量が大きかった.この現象の緩和時間を求めるためにフィッティングをしたところ,単一の緩和時間では説明できず,少なくとも2つの緩和時間(約3ヶ月,数年以上)が必要であることが判明した.バーガーズモデルを用いて表現される粘弾性モデルでは,緩和時間が大きく異なる(主に数か月と数年以上)緩和現象が同時に進行する.さらに,間隙弾性反発は通常,数十日以内に収束する現象である.従って,本解析結果は粘弾性緩和による構造の時間変化を捉えた可能性がある.
主に2011-2023年に東北地方太平洋沖地震の震源域で発生したM3.0-5.0の地震が解析対象であり,古い順に全地震数の1/3を選択し,1つ目のデータセットとした.まず,データセットの中で震源間距離≦5 kmである地震ペアを選択し,同一観測点における P 波初動のスペクトル比を計算した.次に,2つの地震の平均走時で割り,震源距離の影響を取り除いた.最後に,スペクトル比の分母の地震が分子よりも必ず古くなるような全ての地震ペアをスタックすることで観測スペクトル比を計算し,それに理論スペクトル比をフィッティングした.もし2つの地震間で減衰が変化していなければスペクトル比の傾きはゼロになるのに対し,時間変化があると正(減衰が小さくなる場合)または負(減衰が大きくなる場合)の傾きを持つ.このように,本研究ではスペクトル比の傾きから減衰の時間変化を推定した.以上の操作を,データセットの地震を古い順に10個ずつ入れ替える毎に行い,減衰の時間変化を追跡した.
得られた結果は,本震後に減衰が指数関数的に減少したことを示している.いくつかの領域に分けて同様の解析を行ったが,本震の震源を含むデータセットの結果が,最も初動の減衰変化量が大きかった.この現象の緩和時間を求めるためにフィッティングをしたところ,単一の緩和時間では説明できず,少なくとも2つの緩和時間(約3ヶ月,数年以上)が必要であることが判明した.バーガーズモデルを用いて表現される粘弾性モデルでは,緩和時間が大きく異なる(主に数か月と数年以上)緩和現象が同時に進行する.さらに,間隙弾性反発は通常,数十日以内に収束する現象である.従って,本解析結果は粘弾性緩和による構造の時間変化を捉えた可能性がある.