The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room C

Regular session » S04. Tectonics

[S04] AM-1

Mon. Oct 21, 2024 9:00 AM - 10:15 AM Room C (Medium-sized Conference room 302 (3F))

chairperson:Masataka Kinoshita(ERI, UTokyo), Genti Toyokuni(Tohoku University)

9:00 AM - 9:15 AM

[S04-01] Local heat flow variations on the outer rise of the Japan Trench: Implications for heterogeneous structure of the oceanic crust

*Makoto YAMANO1,2, Masataka KINOSHITA3 (1. AORI, Univ. of Tokyo, 2. JAMSTEC, 3. ERI, Univ. of Tokyo)

日本海溝海側のアウターライズ上では、沈み込む太平洋プレートの年齢に対して異常に高い熱流量が広範囲で観測されている(Yamano et al., 2014)。高熱流量は海溝軸から150 km付近まで及んでいるが、この範囲での値は一様ではなく、海底年齢に応じた50 mW/m2程度から100 mW/m2を超える値まで、大きな変動を示す。この地域では、海洋地殻〜マントル最上部の地震波速度構造にも異常が見られ、沈み込みに伴う太平洋プレートの屈曲によって亀裂が生じ、水が入り込んだことを示すものと考えられている(Fujie et al., 2018)。熱流量と速度構造の異常の範囲がほぼ合致することから、海溝海側で海洋地殻が破砕されて浸透率が増加し、流体循環が発達して地殻深部から熱を効率的に汲み上げて高熱流量を生じる、というモデルが提案されている(Kawada et al., 2014)。

上記のように、このアウターライズ高熱流量帯での観測値には大きなばらつきが見られ、短い間隔での測定が行われた地域では、熱流量が数kmのスケールで変動することが判明している(山野・川田, 2017)。特に詳細な熱流量分布が得られているのは、北緯39.0度付近の海溝に直交する測線(東西方向)である。海溝軸からの距離60~80 km付近(正断層が発達していない領域)において、数百m間隔での測定により、3~5 kmのスケールで大きな増減(60~110 mW/m2)を繰り返すという特徴が明らかになっている。このような短波長の変動を生じる原因は、変動のスケールから考えて、海洋地殻内にある。海洋地殻にはもともと不均質性があり、プレート屈曲による破砕も不均質に進行すると考えられる。そのため、破砕の及ぶ深さや浸透率が場所によって異なり、流体循環により汲み上げられる熱の量にも差があり、海底での熱流量の変動を生じていると推定される。

上に述べた変動は海溝に直交する方向のものであるが、海底地形に表れた断層の分布や走向にも見られるように、海洋地殻の構造や破砕過程は海溝に平行な方向にも不均質であると考えられる。これに対応して熱流量がどのように変化するかを調べるため、南北方向の2本の測線に沿って、数百m間隔の高密度での測定を行った。この2本の測線は、上記の東西方向測線(北緯39.0度付近)と、熱流量の山近傍と谷近傍で交わっている。得られたデータから、両測線ともに、東西測線と同様に数kmのスケールで熱流量が変動することが明らかになった。変動の振幅は、東西測線の熱流量の山を通る測線では東西測線と同程度であり、谷を通る測線ではこれより小さい。このような熱流量分布は、日本海溝アウターライズにおける海洋地殻の破砕とそれによる流体循環の発達は非常に不均質で、海溝に平行な方向にも大きく変化することを示唆している。