11:15 AM - 11:30 AM
[S05-01] The first Seismic Exploration using the optical fiber DAS in the geothermal borehole at Kijiyama geothermal field in Akita, Japan
1. はじめに2018年からNEDOの研究開発の一環として,地熱域の地下構造を調べるとともに将来の地熱開発に最適な場所を示す目的で,光ファイバーをセンサーとする分布型振動計測(DAS: Distributed Acoustic Sensing) (Hartog, 2017)と分布型温度計測(Distributed Temperature Sensing)を用い国内5か所(メディポリス,大沼,森,澄川,滝上)の地熱発電所周辺において地熱構造調査を行ってきた.今回は,2022年8月~9月秋田県木地山地区において東北自然エネルギー(株)が所有する地熱坑井内に挿入した光ファイバーシステムを用いた地熱地域の物理探査を実施した.2. 木地山での調査の概要今回調査した木地山地区の地質と比抵坑内などの結果は佐藤他(2011),岡部他(2012)にまとめられており,地表から深さ500 m程度までには砂岩・シルト・凝灰岩が分布し,その下にデイサイト質溶結凝灰岩があり,深さ1,000 mより深部には安山岩質火山礫凝灰岩が分布するとしている.本調査ではKJ-5地熱坑井を用い,光ファイバーを坑底に近い深さ2,000 mまで挿入した.坑内井の北側では12か所の震源による起震を行った.地表には地震計26台を設置した.KJ-5坑井に挿入された光ファイバーを用い温度と地震波振動をDTSおよびDASにより計測した.中型震源の波形を480回重み付きでスタックした.IVI社製MiniVibによってKJ-5の伸長方向に振動する水平加振も行いS波を発生させた.3. 得られた結果KJ-5坑内の温度プロファイルを求めた.坑底2,000 mでは288℃と高温であった.坑口の北側に位置する12か所で震源に対するKJ-5坑内の光ファイバーによるDAS記録と地表地震計による地震波形記録を得た.坑口付近での起震(SP-2)のDAS記録と地質との対比しP波平均速度をもとめた.ここでのDAS波形には深さ1,000 m付近にVp走時の折れ曲がりがあり,これは地層境界と考えられる.皆瀬川層と泥湯層の境界とであろう.今回は水平加振機によるS波をDASによって記録した.1,200 mまでS波の到達がわかり、VpとVsの比VP/VSは約1.75と求まった.測線に沿ったKJ-5のDAS記録中のP波初動,および地上地震計のP波初動記録を用いA-A’測線に沿ったVpの深さ分布をP波初動走時トモグラフィにより求めた.地表から深さ1.3 km付近まではVpは3.5 km/s~4.0 km/sである.Vp~3.5 km/s層は北側で厚い.4. 議論とまとめKJ-5の坑底付近の温度は288℃であり,1,000 m付近で温度勾配の変化が見られた.その深さは坑口での起振に対するDAS記録中でVp速度勾配の変化する皆瀬川層と泥湯層の境界にも相当する.KJ-5の坑跡を含む断面A-A’に沿ったVpの深さ分布を求めた結果,北側は南側にくらべより遅いVp (3 km/s程度)を持つ層が厚い.深さ1 km までのVpの構造は地質構造と調和的であると考えられる.また東北自然エネルギー(株)の保有する坑内井内の地質構造ともほぼ調和的である.水平加振により求まったS波とP波によるVp/Vsを求めたところ約1.75であった.この値は通常の岩石の持つVp/Vsと同じであることから,1,200 mまでの深さではS波の水平振動方位に直交する断裂は著しくないと考えられる. 謝辞本研究はNEDO「地熱発電導入拡大研究開発・超臨界地熱資源技術開発・光ファイバーDASによる超臨界地熱資源探査技術開発」(JPNP21001)として実施した.謝意を表する.また,本調査にご協力いただいた東北自然エネルギー(株) (株)WELMA,(株)阪神コンサルタンツに感謝する.