日本地震学会2024年度秋季大会

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A会場

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08] AM-2

2024年10月23日(水) 10:45 〜 12:15 A会場 (4階国際会議室)

座長:津田 健一(清水建設技術研究所)、有吉 慶介(海洋研究開発機構)

11:45 〜 12:00

[S08-18] 豊後水道スロースリップの有効法線応力の絶対量の推定:その2

*笹川 陽二郎1、佐藤 利典1 (1. 千葉大学)

1.はじめに  
 スロースリップ(SSE)は、地震波を出さずにプレート境界等を10日~数年かけて数十cmゆっくりすべる現象である。SSEはGNSS観測以降発見され、プレート境界でのエネルギー蓄積・解放の新たな1つの過程として位置づけられる。これを調べることはプレート境界のテクトニクス等を知る上で重要である。 速度と状態に依存した摩擦則を用いた理論解析により、速度弱化に伴う準静的なすべり挙動が示されている。Kobayashi and Sato(GRL, 2021,https://doi.org/10.1029/2021GL095690)はGNSSのデータから房総半島沖で発生した6回のSSEの時空間すべり分布を推定し、剪断応力変化とすべり速度の関係をグラフに示した。すると、その軌跡のほとんどは理論的に安定な軌跡と類似していた。これは、房総沖のSSEは準静的な現象であり、すべり加速時の軌跡の傾きはSSEを引き起こしたプレートの摩擦係数(a, b)と有効法線応力(σn)の積( (a-b)σn)で表されることが示唆された。笹川、佐藤(地震学会秋季大会、2023)では、この方法を2018年の豊後水道で発生したSSEに適用し、房総沖SSEと同様の結果を得た。笹川、佐藤(JpGU, 2024)とSasagawa and Sato (AOGS, 2024)では、2010年の豊後水道SSEに対してこの方法を適用して有効法線応力の絶対量を推定した。本研究では、2003年に発生した豊後水道SSEに対してもこの方法を適用して有効法線応力の絶対量を推定し、複数のイベント間での比較を行う。

2.解析方法
 用いたデータは国土地理院による日々の座標値(F5解)である。SSEによる変動を抽出するために、SSEとは無関係な線形トレンドや季節変動等を推定し、除去する。線形トレンドや季節変動等を除去したデータをフィッティングによってなめらかな曲線で繋ぎ、1ヶ月毎の変動に分割する。次に、1ヶ月毎の変動データからABICを用いたインバージョン解析によって1ヶ月毎のすべり分布を推定する。そしてUSGS(United States Geological Survey)のソフトウェアCoulomb3.3を用いて、プレート境界面を長方形の微小パッチに分割してすべり分布に伴う剪断応力変化をそれぞれのパッチで計算する。求めた剪断応力変化とすべり速度の関係をグラフに表し、加速時の傾きから有効法線応力の絶対量を推定する。

3.結果
 剪断応力変化とすべり速度の関係を示したグラフから有効法線応力はそれぞれ2003年SSEでは10-20MPa、2010年SSEでは30-40MPa、2018年SSEでは20-30MPaであることがわかった。どの年のイベントもその深さにおける静岩圧よりも非常に小さい値であり、SSE発生領域のプレート境界面に非常に高い圧力の間隙水の存在が示唆される。

謝辞
 解析にあたり、国土地理院の日々の座標値(F5解)を使いました。応力の計算では、米国地質調査所のCoulomb3.3を使いました。ここに記して感謝します。本研究は科研費(23K03541)の補助を受けました。