2:00 PM - 2:15 PM
[S08-22] Prediction for a stochastic rupture propagation model along a 2-D fault plane
断層の破壊過程の複雑さと多様さを記述するには、確率的モデルが有用と考えられる。しかし、これまでの震源過程や地震活動の解析から、少なくとも以下の経験則が知られる:
(1). k−2-モデル: 最終滑り分布の空間方向 Fourier 振幅スペクトルの高波数成分が、空間波数 k の−2乗で減衰する。
(2). ω−2-モデル: 震源時間関数の時間方向 Fourier 振幅スペクトルの高周波成分が、角周波数 ω の−2乗で減衰する。
(3). 自己相似則: 地震モーメントの成長が、破壊開始からの時間の3乗に比例する。
(4). GR 則: モーメント・マグニチュードが M であるイベントの発生頻度が、10−bM に比例し、特に b〜1 である。
震源物理学の理解に重要なことは、着目する経験則ごとの個別モデルではなく、これら複数の経験則を同時に満たすモデルを考えることであろう。
点震源モデル、すなわち波数を k→0 とした場合については、 Bessel 過程という確率微分方程式に基づくモデルが、上記経験則(2)(3)(4)を満たすことが示された(Hirano 2022 Sci.Rep.). これを空間的に拡張することで動的破壊の仔細をモデル化し、また経験則(1)を満たすべく、まずは1次元直線断層の場合に、平野 (2024 JpGU)は
∂tD = V,
∂tV = ΔD + d + √V W + δ
という確率波動方程式の解の挙動を数値的に検証した。ここで、D, V は各々滑りと滑り速度の時空間分布、d は Bessel 過程に現れる定数、 W は時空間白色雑音、δ は時空間における Dirac の δ 関数である。結果、この解は自発的に停止し、経験則(1)を満たすが、(2)を満たさず、むしろ高周波成分が ω−1 のエンベロープを持つことが分かった。また、(3)および(4)については未検証であった。
上記モデルの改良を目指すにあたり。まず ω−2 的なエンベロープは空間2次元モデルであれば実現される可能性がある。断層面上の1直線に沿って積分した結果が ω−1 的であれば、そのようなランダムなソースを2次元的に積分すれば、時間方向にも滑らかさが高じると期待されるためである。従って2次元平面断層上での分布を考える必要が生じるが、これにGR則(4)の検証を加えるには、膨大な数の数値シミュレーションが必要で、計算コストが高いと見込まれる。そこで予察として、 GR則を満たすような確率波動方程式の構造を考える。
GR則を満たす確率的表現として、「拡大する亀裂の面積が A に達しているとき、その直後に拡大が停止する確率は、 A に反比例する」というものがある (Scholz 1968 BSSA)。本発表ではこの表現を、新しいアプローチによっても求めるとともに、確率微分方程式に取り込むにあたっての考え方を紹介する。
(1). k−2-モデル: 最終滑り分布の空間方向 Fourier 振幅スペクトルの高波数成分が、空間波数 k の−2乗で減衰する。
(2). ω−2-モデル: 震源時間関数の時間方向 Fourier 振幅スペクトルの高周波成分が、角周波数 ω の−2乗で減衰する。
(3). 自己相似則: 地震モーメントの成長が、破壊開始からの時間の3乗に比例する。
(4). GR 則: モーメント・マグニチュードが M であるイベントの発生頻度が、10−bM に比例し、特に b〜1 である。
震源物理学の理解に重要なことは、着目する経験則ごとの個別モデルではなく、これら複数の経験則を同時に満たすモデルを考えることであろう。
点震源モデル、すなわち波数を k→0 とした場合については、 Bessel 過程という確率微分方程式に基づくモデルが、上記経験則(2)(3)(4)を満たすことが示された(Hirano 2022 Sci.Rep.). これを空間的に拡張することで動的破壊の仔細をモデル化し、また経験則(1)を満たすべく、まずは1次元直線断層の場合に、平野 (2024 JpGU)は
∂tD = V,
∂tV = ΔD + d + √V W + δ
という確率波動方程式の解の挙動を数値的に検証した。ここで、D, V は各々滑りと滑り速度の時空間分布、d は Bessel 過程に現れる定数、 W は時空間白色雑音、δ は時空間における Dirac の δ 関数である。結果、この解は自発的に停止し、経験則(1)を満たすが、(2)を満たさず、むしろ高周波成分が ω−1 のエンベロープを持つことが分かった。また、(3)および(4)については未検証であった。
上記モデルの改良を目指すにあたり。まず ω−2 的なエンベロープは空間2次元モデルであれば実現される可能性がある。断層面上の1直線に沿って積分した結果が ω−1 的であれば、そのようなランダムなソースを2次元的に積分すれば、時間方向にも滑らかさが高じると期待されるためである。従って2次元平面断層上での分布を考える必要が生じるが、これにGR則(4)の検証を加えるには、膨大な数の数値シミュレーションが必要で、計算コストが高いと見込まれる。そこで予察として、 GR則を満たすような確率波動方程式の構造を考える。
GR則を満たす確率的表現として、「拡大する亀裂の面積が A に達しているとき、その直後に拡大が停止する確率は、 A に反比例する」というものがある (Scholz 1968 BSSA)。本発表ではこの表現を、新しいアプローチによっても求めるとともに、確率微分方程式に取り込むにあたっての考え方を紹介する。