日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

A会場

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08] PM-2

2024年10月23日(水) 15:15 〜 16:45 A会場 (4階国際会議室)

座長:直井 誠(北海道大学)、久保田 達矢(防災科学技術研究所)

15:45 〜 16:00

[S08-28] 短期的スロースリップにおけるひずみ変化と微動活動の相関

*勝間田 明男1、宮岡 一樹2、露木 貴裕3、板場 智史4、田中 昌之3、伊藤 武男6、高森 昭光5、新谷 昌人5 (1. 富山大学、2. 気象庁、3. 気象研究所、4. 産総研、5. 東大地震研究所、6. 名古屋大学)

ボアホールひずみ計およびレーザーひずみ計のデータをスタッキング処理した時系列とテクトニック微動の震源(Imanishi et al., 2011)の積算数は類似性の高い変化を示す(Katsumata et al., 2024)。ひずみ変化と積算微動震源がどの程度の時間幅まで相関を示すか調査した.ひずみと積算微動回数のそれぞれのトレンドを除去して移動相関係数を計算した.相関係数を計算する時間幅を15分,30分,1時間,2時間などに変化させた.なお,Imanishi et al.(2011) の微動震源は最短1分間隔で決定されている.15分の時間幅で相関係数を計算しても相関係数が1.0に近い値となる時間帯が多く出現した(図(a)).これは,微動とひずみ変化が同一の現象の異なった観測結果であることを示唆するものである.

そこで、微動の変位振幅の積分ががひずみ計から推定されるプレート間すべり量に相当するか調査した。微動の変位d(t)を以下のように近似できるとした。
d(t)=(dM0/dt)(R/4πrρsβs3) gl (ρβ/ρs βs)0.5exp(-πft/Q)
ここでRは放射特性,rは震源と観測点間の距離,ρsは震源における密度,βsは震源におけるS波速度,ρは表層における密度,βは表層におけるS波速度,glは地表面における増幅係数,expの部分はQ値による減衰を表す.2019年2月7日5時30分〜6時30分(JST)までの1時間のF-net旭観測点のNS成分の変位振幅(図(b))の積分を計算し,仮にR=0.7,gl=2.0,Q=200として,上式に基づき地震モーメントに変換すると,2×1015Nm(Mw4.1相当)となった.なお,F-net旭の元データは、積分して変位相当の波形とし、1Hzの高域通過フィルターを施した上で、ヒルベルト変換を用いてinstantaneous amplitudeに変換している。図(b)の枠上の赤丸は微動の検出時刻を表している.この期間のひずみデータ(図(c))に基づくプレート間すべりの地震モーメントは2.5×1016Nm(Mw4.9相当)であった.

地震波形からの地震モーメント推定値とひずみデータに基づく地震モーメント推定値の間には約10倍の差はあり、直接、"∫(テクトニック微動)dt=プレート間すべり"と結論するには差が大きいが、否定できるほどには差が大きくはない。5:00ころには,微動活動は認められる(図(b))が,ひずみ(図(c))には変化が認められない.この点は"∫(テクトニック微動)dt≠プレート間すべり"を示唆している.

謝辞
本研究には防災科学技術研究所のF-net観測点のデータを利用させて頂いた。