日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08P] PM-P

2024年10月22日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S08P-04] 2018年北海道胆振東部地震震源域の摩擦特性:⼩地震の応⼒降下量による推定

*根本 菜々子1、山田 卓司2 (1. 茨城大学大学院理工学研究科、2. 茨城大学学術研究院基礎自然科学野)

1.研究背景・目的
2018年9月6日午前3時7分、北海道で気象庁マグニチュード(M)6.7の大規模な地震が発生し、「2018年北海道胆振東部地震」と名付けられた。以後、この地震を本震と表記する。Katsumata et al. (2019)は、本震及び本震後2日間に発生した余震の震源再決定を行い、明瞭なプレート境界で発生した地震ではないにもかかわらず、本震の震源が40.5km と非常に深いことを確認した。同地域では千島孤と東北日本孤の衝突が複雑な地下構造を形成しており、Kita et al. (2012)は地下速度構造の解析結果から、1970年日高地震や1982年浦河沖地震のような同地域の過去の大地震は速度構造境界で発生していることを指摘している。本研究では、Yamada et al. (2021)と同様の手法を用いて、本震周辺で発生した小地震の応力降下量を解析し、本震の震源断層の摩擦特性に関する空間的な考察を目指す。

2.研究手法
本研究では、防災科学技術研究所のHi-netで観測された51地震(4.0 <= M <= 5.0)の応力降下量を解析した。本震前には本震震源域周辺でM4.0以上の地震が発生していないため、本研究で解析した地震はすべて本震後に発生した地震である。解析手法の手順は以下のとおりである。はじめに、解析対象地震の近傍に震源があるM3.5の地震波形を経験的グリーン関数(EGF波形)として用い、解析対象地震及びEGF波形のスペクトルをそれぞれ算出した。続いて、解析対象地震のスペクトルをEGF波形のスペクトルでデコンボリューションし、震源特性の比を抽出した。次に、Boatwright (1978)のオメガ二乗モデルを用いて各観測点のスペクトル比からコーナー周波数を推定し、これらのlog平均を解析対象地震のコーナー周波数とした。その後、Madariaga (1976)の円形断層を仮定し、コーナー周波数から最終的な応力降下量を推定した。

3.結果・考察
図1に解析結果を示す。応力降下量の空間不均質性が得られたが、明瞭な深さ依存性は見られなかった。解析結果を詳細に検討すると、42.65°N付近の深さ35km以深の領域において、応力降下量が大きい地震が集中している。この領域は本震の破壊開始点近傍にあたり、Katsumata et al. (2019)が主張するステップオーバーセグメントに相当している。以上の結果は、剪断強度の高い断層で本震の破壊が開始したことにより、北部・南部に破壊が進展し結果的に大地震となったことを示唆しているのかもしれない。また、時間変化に着目すると(図2)、本震から約1週間は、それ以降の期間で発生した地震よりも応力降下量が小さい地震も発生していた。この時間変化の結果は、本震により一時的に剪断強度が低下したためなのか、本震直後の地震(余震)が剪断強度の低い領域で発生していたことを示すのか、現段階では区別できない。しかし、これらの地震と本震時の断層すべり(たとえば、Asano and Iwata, 2019)の相対位置関係を調べることにより、その考察が可能となる。今後は上記の解析等を通じて、断層面上の摩擦特性の空間分布を含めたより詳細な力学的背景に迫りたいと考えている。