The 2024 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Oct. 22nd)

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08P] PM-P

Tue. Oct 22, 2024 5:15 PM - 6:45 PM Room P (Main Hall (2F))

[S08P-06] Study of source inversion method for earthquake with long duration

*Ryo Yamaguchi1, Yuji Yagi1, Ryo Okuwaki1 (1. University of Tsukuba)

沈み込み帯で発生する巨大地震や津波地震では、プレート境界浅部で大きな地震性滑りが起きることで、津波が励起されると考えられている。プレート境界浅部で地震性滑りが発生する理由については、プレート境界浅部における低い剛性や間隙流体の加圧などの仮説 が提案され、いまだ議論が続いている。地震時の津波の発生過程を理解するためには、巨大地震や津波地震におけるプレート境界浅部での複雑な破壊過程を明らかにする必要がある。

一般に、グリーン関数の不確実性は時間に伴って増大する。そのため、巨大地震や津波地震のような継続時間が長い地震を解析する場合、安定な震源過程モデルをインバージョンによって得ることは難しい。また、長い破壊継続時間を持つ地震は、通常の地震よりも複雑な断層形状を有する可能性がある。したがって、巨大地震や津波地震を安定に解析するためには、グリーン関数の誤差の増大に対応することができ、かつ、複雑な形状をもつ断層の破壊を推定できる手法が好ましい。また、グリーン関数は深さ方向に高い解像度を持っているため、沈み込むプレート境界面の形状を考慮せずにモデル面を設定すると、グリーン関数の位置による誤差を無視できなくなる。モデル面の形状をプレート境界の形状に近づけることで、グリーン関数の誤差を軽減し、安定な解を得られる可能性がある。

本研究では、2021年サウスサンドウィッチ諸島(SSI)地震にポテンシー密度テンソルインバージョン(PDTI)を適用し、破壊継続時間が長い地震における震源過程の推定について、要素震源の継続時間やモデル面の形状を変えたことによる影響を検証する。

SSI地震は、英国領サウスサンドウィッチ諸島沖合のサウスサンドウィッチ沈み込み帯で発生した。この領域では、南アメリカプレートがサンドウィッチプレートへ東南東方向に70–78 mm/yrで沈み込んでおり、海溝軸は東に凸に湾曲している。米国地質調査所(USGS)が報告した本震発生後3日間の余震は、海溝軸に沿うように南北約400 kmの範囲に分布している。USGSは、4分間にMW 7.5、MW 8.1、mb 6.5の3つのイベントを報告している。一方、Global Centroid Moment Tensorプロジェクトは継続時間300秒をもつMW 8.3の低角逆断層型イベントを1つ報告している。

本研究の解析には、SAGEよりダウンロードした 47 観測点における遠地実体波 P 波の鉛直成分を使⽤した。これらの波形は、地震計特性を取り除いた後に 1.2 秒間隔でリサンプルした。グリーン関数の計算では、CRUST-1.0モデルを⽤いて震源域の速度構造を設定した。USGS余震分布を参考に、⾮矩形のモデル⾯を設定した。要素震源の深さ設定による影響を調べるために、走向195°・傾斜10°の平面モデルと、Slab2モデルを参考にした非平面モデルの2つを用いて比較した。どちらの場合も全体の破壊継続時間は200秒に設定した。各要素震源の破壊開始時間を規定する仮想的な破壊伝播速度は2.0 km/sとした。各要素震源の継続時間は、132秒と200秒の2通りで解析を実施した。

非平面モデルを設定し、要素震源の継続時間を200秒にした解析結果について述べる。モーメントテンソル解は23.2 %のNDC成分を含む低角逆断層型を示し、地震モーメントは4.9×1021 N m (MW 8.4) となる。ポテンシー密度分布は、震源から南に約160 kmの範囲に広がり、震源から南南東約130 km地点にピークを持つ。震源付近で開始した破壊は、海溝軸に直交するスリップベクトルを持つ低角逆断層型のメカニズムで、15–25秒まで海溝軸に向かって東方向に伝播する。25–65秒で、破壊は海溝軸の近傍を南方向へ伝播する。スリップベクトルは湾曲した海溝軸に直交するように時計回りに回転する。65–165秒で、破壊は南緯59°付近で停滞する。165秒以降も停滞は続くが、ポテンシーレート密度は小さくなり、横ずれ型のメカニズムが支配的になる。平面モデルの場合では、ポテンシー密度分布のピークは北側に移動し、震源から東約20 km地点に位置する。また、非平面モデルで65秒以降に見られていた停滞は弱まり、破壊が震源方向と南方向に伝播する。非平面モデルにおいて要素震源の継続時間を132秒に設定すると、25–65秒に南方向への破壊伝播とスリップベクトルの回転が見られるが、155–200秒に南緯59–60°の領域で見られる横ずれ型のメカニズムが顕著になる。このように、モデルの設定によって、得られる結果が変化する。

本発表では、PDTIによって得られた2021年SSI地震の震源過程モデルに基づいて、モデル面の形状による解の変化や、要素震源について設定する継続時間が解に及ぼす影響とその原因について議論する。