The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room A

Regular session » S09. Statistical seismology and underlying physical processes

[S09] AM-1

Mon. Oct 21, 2024 9:00 AM - 10:15 AM Room A (International Conference Hall (4F))

chairperson:Tomotake UENO(NIED), Shinako Noguchi(Association for the Development of Earthquake Prediction (ADEP))

9:30 AM - 9:45 AM

[S09-03] Stress field near the fault edges of the 2017 Southern Nagano Prefecture earthquake (Mj5.6)

*Yoshihisa IIO1,2, Shinya Kato4, Kazuhide Tomisaka3, Masayo Sawada3, Issei Doi3, Shunta Noda5 (1. NPO Abuyama, 2. Tohoku Univ., 3. DPRI, Kyto Univ., 4. ERI, Univ. Tokyo, 5. RTRI)

1. はじめに
 2017年6月25日7時2分の長野県南部の地震(Mj5.6)は、1984年長野県西部地震(Mj6.8)の余震域の北東端付近、深さ1~5kmで発生した逆断層型の地震である。断層の上端付近では、Vp/Vsの小さい顕著な低速度異常域が推定されていた(Doi et al.,2013)。 
 この地域では、1995年より10kHzサンプリングの地震観測が行われており(Iio et al., 1999)、2008年には満点地震計が追加された。満点観測網は、上記の低速度異常域を詳細に調べるために配置されたが、はからずも、Mj5.6を直上で待ち受ける体制となった。昨年秋の学会において、得られた大量の高精度の地震メカニズム解から断層周辺の応力場を推定し、余震域の北側、断層の北端付近で横ずれ型の余震が多い理由として、摩擦係数が小さい可能性を指摘した。今回は、上下の端付近の地震前の応力場について議論する。

2. 結果 
 最初に、M5.6の断層面を出来るだけ正確に推定した。稠密観測網によるメカニズム解の節面と平行な面の中で、余震の震源との距離の二乗和が最小となる面を求めた。次に、その面上において、矩形を仮定して断層面の大きさ、位置と向きを、下記の3通りの方法で推定した。i) 断層端に余震が集中するように手動で推定、ii) 断層端から余震の震源までの距離の和が最小となるように推定、iii) 断層直交方向も含めて断層面内の余震数と断層端の位置の関係を折れ線でfitした折れ曲がり点から推定。これらの方法で推定した断層面と断層端が、応力逆解析における解析領域の端になるように、各解析領域を設定して、応力場を推定した。M5.6の発生後、いずれの結果においても、断層の上下の端付近において、最大主応力の傾斜角が水平から回転することが見いだされた。一方、断層面内付近においてはそのような回転は見られず、安定した方位分布が見られた。
 M5.6のすべり分布と初期応力を仮定して地震後の応力場の再現を試みた。その結果、断層の上下の端付近において地震前に差応力が非常に小さくないと、上記の主応力の回転を再現できないことが分かった。また、地震前には、断層付近において、このような主応力の回転は見られなかった。断層の上端付近においては、上記のように、顕著な低速度異常域が推定されていたが、M5.6の発生前に、断層の上下の端付近において、応力緩和が発生していた可能性が考えられる。あるいは、この断層の上下の延長部が存在した場合には、その部分の断層強度が小さかった可能性も考えられる。

謝辞:高精度地震観測は、防災科研の特別研究「直下型地震のダイナミクス」により開始され、地震及び火山噴火予知のための観測研究計画、災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画や科研費(課題番号19204043)のプロジェクトで維持されてきた。10kHz観測では産総研のボアホール地震計データを、2008年8月以降には、防災科研、名古屋大学、気象庁による定常地震観測点のデータも使わせていただいている。観測においては、長野県王滝村・木曽町、木曽森林管理署、長野県林務課、名古屋市市民休暇村ほか、地元の方々に大変お世話になった。