日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

A会場

一般セッション » S09. 地震活動とその物理

[S09] AM-2

2024年10月21日(月) 10:30 〜 11:45 A会場 (4階国際会議室)

座長:汐見 勝彦(防災科学技術研究所)、齊藤 竜彦(防災科学技術研究所)

11:00 〜 11:15

[S09-08] 2021・2022年福島県沖スラブ内地震の余震活動の時空間変化

*大澤 亮1、日野 亮太1、吉田 圭佑1 (1. 東北大学)

2021年2月13日、福島県沖の太平洋スラブで大地震(M7.3)が発生し、東北地方の広い範囲で強い揺れによる被害が発生した。その2021年の地震から約1年後の2022年3月16日には、2021年の地震の北側で再び大きなスラブ内地震(M7.4)が発生し、福島県と宮城県で再び大きな被害が発生した。これらの地震は、2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)の破壊領域の南縁に沿って発生し、東北地方全域に大きな地震後変形をもたらした。
本研究は、これら2つの地震の破壊領域周辺のスラブ内地震活動をより包括的に明らかにすることを目的とする。そのために、東北地方太平洋沖地震以前から最近までの長期にわたる地震の時空間分布を解析し、隣接して連続する2つの巨大なスラブ内地震の相互作用を検討する。また、巨大地震がスラブ内の地震活動に及ぼす影響についても議論する。
対象とする地震は気象庁一元化カタログに掲載されているM2以上の地震で、2003年3月から2023年6月までのものである。震源は波形相関を用いたDouble-difference法 (Waldhauser & Ellsworth, 2000) によって再決定した。再決定した震源に対して、DBSCAN (Ester et al. 1996) を用いてクラスター分析を行い、面的な形状を形成する震源の密集したクラスターを同定した。その際に、1回目の本震後から2022年の2回目の本震前の地震を「2021年地震の余震」、2回目の本震後の地震を「2022年地震の余震」と定義し、この2つのデータセットを個別に用いてクラスター分析を行い、それぞれの余震活動から面的なクラスターを抽出した。
「2021年地震の余震」を対象とした分析から4つの面的クラスターが、「2022年地震の余震」から2つの面的クラスターが定義された。これらのクラスタのそれぞれを近似する平面を定義して、これらを複数の断層面とみなすことにより、断層上での地震活動の特徴を調べた。クラスタ分析の対象とした期間外の地震も含めて、断層ごとに、それぞれに沿って発生した地震のカタログを作成した。その結果、2022年M7.4の本震震源(破壊の開始点)を含む断層沿いの地震は、2021年M7.3の地震が発生した直後から活動を始めていたことがわかった。2022年の地震発生までの期間での活動は、断層面上でも2021年の本震の破壊域に近い南側領域に限られ、2022年の本震震源近傍の狭い範囲での活動が持続していたことが特徴である。2021年M7.3震源断層上でも、本震発生直前のおよそ1ヶ月前から地震が複数回発生していた。しかし、2022年M7.4地震の発生前に見られたような、破壊の開始点周辺での集中的な前駆的活動を確認することはできなかった。
この領域のスラブ内では、2011年の東北沖地震発生直後から地震活動は活発化したが、本研究で抽出された2021・2022年の地震に伴って活動した断層に沿った震源の集中は、2021年M7.3地震の発生以前には見出されなかった。